本屋探訪記:CDショップが仕掛ける音楽書専門店と読書用品ブランドのコラボ店「BIBLIOPHILIC & bookunion 新宿

BOOKSHOP LOVER=本屋好きがお届けする詳細な本屋レポ。本屋が好きならここに行け! 今回は、東京・新宿の「BIBLIOPHILIC & bookunion 新宿」を紹介。

» 2013年12月06日 12時00分 公開
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 今回の本屋探訪記は、音楽+本のコラボショップである「BIBLIOPHILIC & bookunion 新宿」。空犬通信さんの記事を見たら無性に行きたくなったので、思い立ったが吉日と翌日には足を向けた(以下は2011年12月の記録だ)。

 ここは「本のある生活」をコンセプトに読書用品を販売している「BIBLIORHILIC」の旗艦店と、中古レコードショップである「disk union」が展開する音楽書専門店「book union」のコラボショップで、品ぞろえは音楽本を中心に映画関連書や“本の本”、店員セレクトの読書用CD、BIBLIOPHILICの読書用品という本好きにはたまらないお店なのだ。

 そして、何より注意すべきポイントは古本と新刊本が混ざって置かれていること。古本はビニール掛けされているので分かりやすいが、同じ本の古本と新刊本が隣り合って置かれていたりと良い意味でカオスな棚なのである。ここに行かないわけにはいかないだろう!

 ということで、店内の様子と感想をいつものように書いていく。

まとめ

  1. 品ぞろえ:音楽関連書(楽譜、写真集、音楽雑誌、音楽家の自著など)、映画関連書(映画雑誌、俳優の自著、映画論など)、本の本(出版業界本、読書論、本屋紹介本、写真集など)、店員セレクトの読書用CD、読書用品(ブックカバー、文房具、本棚など)。古本と新刊本が混在。本好きにはたまらないセレクト
  2. 雰囲気:お洒落。木を基調とした内装
  3. 立地:新宿駅西口すぐの紀伊国屋新宿店となりのビル3階。あえて紀伊国屋の隣というセンスがたまらん! disk unionの隣に作っただけという可能性も高いが(笑)

内装について

 エレベーターで3階に上ると目の前にdisk union。その左にあるのが「BIBLIOPHILIC & bookunion 新宿」だ。看板の猫が可愛らしい。中に入ってみると木を基調とした落ち着いた雰囲気の店内。ほぼ正方形の形をした店内の広さは10畳くらい。BGMはジャズだ。

レイアウト

 店内のレイアウトを概観しよう。

 入ってすぐ目の前に平積み台。左手はカウンター。カウンターの奥の壁(左辺)では雑貨が売られ、正面の辺と右辺の壁はすべて備え付けの本棚だ。そのほか入ってすぐ右手に2メートル級のカラーボックスタイプの本棚が壁に沿って2本あり、平積み台の奥には腰くらいの高さの棚が平行に1本。その奥に胸くらいの高さの棚が垂直に2本。カウンター前にもカウンターに対して垂直に頭を越すくらいの高さの棚が2本ある。

平積み台

 さて、店内を回ってみよう。まずは、目の前の平積み台からだ。

 一番目立つ場所にあるこの展示場所では「中古パンフレットフェア」が行われており、僕は知らないようなタイトルがたくさん。マニアにはたまらないのだろうか。そういったたたずまいのパンフレットが並べられている。

 そのほか雑誌『レコードコレクターズ』や雑誌『ロッキング・オン』、ザ・ビートルズの冊子が年代ごとで10冊くらいずつセットで売られていたり(1996年1月から12月号)、裏に回ると『ジャズ・パースペクティブ』や『ブルータス』と『ペン』といった雑誌の音楽特集の号があったり、さらに『マイケルジャクソン特集』が組まれていたりする。「この店は音楽書の店ですよ!」と意思表示しているかのような台である。

平積み台奥の棚

 平積み台を後にすると奥には腰くらいの3段の本棚。一番見やすい棚の上は平積みとなっている。ここの手前側は「本の本」コーナーだ。

 本屋の本、出版の本、紙の本、装丁の本、絵本の本、本棚の本、本の歴史、古書の本、速読などの読み方本など何でもそろっている。ここまで本の本が充実している本屋は少ないだろう。

 具体的には『シェイクスピア&カンパニー書店の優しき日々』や『本へのとびら』『装丁道場』『猫の本棚』『堀内誠一 旅と絵本とデザイン』『本はどのように消えていくか』『本棚の歴史』『古書発掘』『リーディングハックス』などだ。たまらんにも程がある! しかし、積読解消期間中につきどうにか購入をしないで済んだ。偉いぞ!自分!

 「本の本」コーナーの裏は「ミュージックフォーリーディング」のコーナーだ。POPから引用すると「読書のための音楽。…ディスクユニオン各ジャンル担当が独断と偏見で選び抜いた読書BGMコーナーです」。まさにコラボ店ならではの企画である。

 品ぞろえはというとCDが棚の上に平で置かれ、棚の中には『レコードコレクターズ』や『ストレンジデイズバック』などの音楽雑誌。しかも、横にはこう書いてある「バックナンバーお探しの場合はスタッフまで」。

「本の本」「ミュージックフォーリーディング」棚奥の3つの棚

 この奥には入り口に対して垂直に並べられた3段の棚が2列。両方とも読書用品だ。「BIBLIOPHILIC」のコーナーとも言える。オリジナルブックスタンドやブックダーツ、ブックマーク、ツバメノート、つながるノート、赤青ペンケース、ペンは剣よりも強し鉛筆、quaint designの書類入れなどが置かれていた。

カウンター前の2つの棚

 振り返るとカウンター前の2つの棚がある。手前側の棚から説明すると、2段構成で棚の上にはオリジナルブックカバーと紙和のブックカバーが置かれ、棚の中には音楽の大判本が並べられている。写真集がメインでレットツェッペリンやビートルズの写真集、『カルトロックポスター集』などである。

 この棚の裏には同じく棚の上にブックカバーがあるのだが中は何と資材置き場となっている。なぜこんな見えやすい場所にするのか疑問だ。せめて引き出しにするなり何なりできただろうに。これは唯一残念な点だった。

 振り返ると奥の棚(カウンターから見て左の棚)で、ここは段が変則的になっており面白い棚になっている。オリジナルエコバッグや本型小物入れ、肩掛け型ブックカバー、紙和のバッグなど。店舗の左辺に向かうほどより読書関連用品の色合いが強くなるようだ。

 この変則棚の裏も同じように変則的な構成となっている。品ぞろえはラミネートフィルムや補修テープ、グラシン紙、オリジナルクラシックペイパーカバー(グラシン紙)、リーディングデスク、マガジンラック、ブックホルダー、ルーペ、ブックストッパー、リーディンググラスなどだ。

壁の棚

 ここからは壁に面した棚について。先ほどの棚を見ながら振り返ると店舗の左辺に突き当たる。ここも読書用品でアクリルボックス本棚(文庫サイズ)、ペイパーコレクター、英雑誌がある。

 入り口から一番遠い店舗の角にはオーディオ専門棚が1つ置いてある。10畳ほどとはいえ、ここしかオーディオ本がないことを考えるとやはりオーディオはかなりニッチな趣味なのだろうか。正直興味はないが、音楽書の店での扱いがこうなのは少しさびしい気がする。ちなみに内容は『ジャズオーディオ放蕩生活』『オーディオの作法』などである。

 店舗正面の辺と右辺はほぼ一面が本棚で膝くらいの高さに平積み用に台がせり出した形となっている。棚の形は先ほどの変則棚と同じように段が変則的でランダムな高さになっている。見ていて面白い約5段棚だ(“約”というのはランダムであるため)。

 オーディオ棚側からジャンルを述べていくとクラシック1列、ジャズ・フュージョン5列、ソウル・ブルース1列、クラブミュージック1列、ワールドミュージック2列、映画2列となっている。

 品ぞろえは挙げだすときりがないので平積みのみ挙げていくと『猫丸しりいず』『拍手のルール』『ボクの音楽武者修行』『日本フリージャズ史』『あるてす』『ラップのことば』『パラダイスガラージの時代』『リアルキューバ音楽』、『荒木飛呂彦の奇妙なホラー映画論』などだ。

 ここまでが店舗正面の辺でここから折れ曲がり右辺になるのだが、その前に角の説明をしたい。というのもこの角が雰囲気作りに一役買っているからだ。書斎の机をテーマとしたであろう作りの台と棚になっていて、そこに文房具や本(『深夜特急』や『ボリス・ヴィアン』全集など)、空き瓶、コーヒー豆などが置かれているのだ。ダンディーな世界観。開高健や植草甚一の世界に近いのだろうか。小さいスペースだがこういう細かい演出が全体を際立たせるのだと思う。

 ここからが店舗右辺の棚である。

 ここは腰くらいの高さから上に4段の棚があり(変則ではない)、腰の高さでせり出してそこに平で本が置かれている。せり出した場所も棚になっていてそこは1段という構成だ。

 ここもジャンル別に紹介していくと、手前から入り口側に向かってノイズ・アヴァントが2列(全体の3分の1)、ロック・ポップスが最上段3分の1、ジェイポップスが残り3分の1、プログレが2段目の残り半分、ハード・ヘビーが3段目残り半分、パンクが4段目残り半分、足元に楽譜が1列全部となっている。

 品ぞろえについてはここでも平台を挙げていくと岡本太郎『今日の芸術』『レスポール読本』『ノルウェイの森』『音盤時代』『1984年』『ロックとメディア社会』『ガセネタの荒野』『音楽とことば』『十年ゴム消し』などだ。

入り口右横の小さい棚

 壁棚を見終わってこれで終わりかと思ったらそうはいかない。入り口正面の平積みフェア台に隠れて2メートル級カラーボックス型の棚が入り口すぐ右横に2本あるのだ。まず、右辺壁棚の隣、一番入り口に近い角に「文庫フェア この冬 日常に本を一冊、カバーと一緒に連れだそう。」の棚が1つ。

 『グスタフマーラー』や『考えるヒット3』『僕が愛するロック名盤240』『ピーターバラカン』『ビートルズの謎』『ブルーノート再入門』などなど読みやすいサイズの文庫や新書の音楽本が並べられている。

 ここでディスクユニオンにつながるチェーンで区切られた通路を挟んで(なぜつなげたのかは不明)、入り口すぐ右横に本棚が1本ある。内容は『スタジオボイス』や『ミュージックライフ』『ザ・ディグ』などの音楽雑誌だ(バックナンバー含む)。意外とこの入り口すぐ横の棚が一番マニアックかもしれない。

感想

 「全体として音楽と本がうまいこと出会った店」という感想を持った。『ノルウェイの森』や『1984年』が音楽本に紛れてさりげなく置かれていたり、クラシックものの少女マンガ(『のだめカンタービレ』じゃないですw)が置かれていたりする。音楽好きかつ本好きでないと出来ない棚作りであると思う。そして、何よりジャンルレスであることを特筆したい。

 マンガや文庫、新書、単行本など本の形式を飛び越えるのはもとより新刊と古本を並べていること。雑貨との融合はされていなかったのが残念だったがそれがなされていればスタンダードブックストアもびっくりの融合っぷりなのだ。

 あとは本の本の品ぞろえが良かったことが個人的に良かった。ここまでの品ぞろえでしかも古本も並列で扱っているのでこれは重宝しそうである。まあ大阪在住なのでちょくちょくは行けないが……。1000円お買い上げでオリジナルしおりを頂けるということで、読書用CDを購入してその場を後にした。ホクホク気分なのだ。

 本好き音楽好きにはぜひとも行ってみて欲しいお店! 新宿にお立ち寄りの際にはぜひ行ってみてほしい!!

著者プロフィール:wakkyhr

本屋開業を目指す本屋好きサラリーマン。ブログ「BOOKSHOP LOVER」を中心に活動。このほか、電子雑誌「トルタル」や本と本屋とつながるWebラジオ「最初のブックエンド」、本を贈る文化をつくる活動「贈本計画」に参加。「Cannes Lions 2013 Book Project」ではプロデューサーを務める。理想の本屋さんを開くべく本の世界で縦横無尽に活動中。好きな作家はクラフト・エヴィング商会。一番好きな本屋は秘密。ネット書店を近日中に開店予定。

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