新聞社がThe Guardian Digital Archiveから学べること

新聞のデジタルアーカイブをわたしたちが活用できる日はいつごろやってくるのだろうか。

» 2013年11月22日 16時35分 公開
[Michael Kozlowski,Good e-Reader Blog]
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 例えばあなたがナポレオン戦争の戦地での生活がどのようなものだったか、あるいはテニスの第1回全英オープンに関する当時の新聞記事を探そうとしたとき、それが非常に難しいことはイメージできるだろう。

 1791年以来、世界中のニュースを集めてドキュメント化しているThe GuardianとObserver。このうち、The Guardianは2012年末に電子アーカイブを再立ち上げし、120万ページのプリントレプリカ、1300万の記事、7000枚の写真を提供している。すべての新聞社が歴史に残るようなコンテンツを持つわけではないが、アーカイブ化したバックナンバーを販売するのは新聞社にとってよいビジネスになる。

 新聞業界でどの企業が電子アーカイブを提供しているかを示す統計は存在しないが、大手新聞社はほぼ全社が何らかの課金モデルとともに電子アーカイブを提供し、一定の収入をもたらしている。Alliance of Audited Mediaによると米国の新聞の20%が電子化されているという。

 厳しい経済環境下にある新聞業界全体では、電子化してどのように売り上げを立てるかの議論が盛んだ。ペイウォールの導入を検討している企業もあれば、専用アプリでの提供を維持しているところもある。そうした中、The Guardianは1つの興味深いケーススタディといえるだろう。

 The GuardianはProQuest Historical Newspaperを利用して電子アーカイブを配信している。The New York TimesやThe Globe and Mail、The Times of India、The Jerusalem Postなど大手新聞社も採用するこのサービスは、PDFファイルをアップロードし、購読方法や課金方法を設定するだけでアーカイブが提供できるというもの。The Guardianは24時間当たり7.95ポンドのパスや月額49.95ポンドの購読など階層化されたアクセスレベルを設定している。

 The New York TimesもProQuestを利用しているが、課金モデルはまったく異なる。同社のアーカイブされた新聞には広告・写真・図・イラストは掲載されておらず、利用者がそれらを手に入れるには別途支払いが必要となる。1923〜1986年の記事はそれぞれ3.95ドル、1923年1月1日以前、あるいは1986年12月31日以降に刊行された記事は無料だが、ペイウォールに基づく月々の閲覧回数にカウントされる。現在のThe New York Timesの購読者は月に100記事まで閲覧できる。

 ProQuestのほかにもオンラインで利用できるアーカイブWebサイトは幾つか存在する。1億3000万ページの新聞をアーカイブするNewspaperarchive.comや、巨大家系図サイトAncestry.comの子会社、Newspapers.comは3400万ページの新聞をアーカイブしている。ニューヨーク在住で個人的に新聞の電子アーカイブに取り組む熱心な人物も存在し、500万ページをアーカイブするWebサイトを自身で開発した。彼のストーリーはこちらで読むことができる

 現在、全世界で刊行されている全国紙の数は419誌といわれ、地方紙や日刊・週刊ベースで作成されている特別版を含めると2万2000誌ほどが存在する。一部の新聞社は自社Webサイトやサードパーティのサービスを利用して配信を行っているが、電子アーカイブ向けの決定的なモデルはまだ存在しないように思われる。企業内部ではほとんど議論されないテーマだからなのか、われわれがインタビューしたほとんどの新聞社は、われわれがアーカイブ戦略に関心を持っていることに驚きを感じているようだった。

 プリント版の売り上げが減少している世界では、堅実なアーカイブソリューションへの投資はすべての新聞社が考慮すべきことだ。スキャンに掛かる投資コストはわずかなもので、販売をアウトソーシングしても新聞社の間接費はかなり低額に抑えられる。

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