体が入れ替わってしまった男の子と女の子。思春期になった彼らは何を感じるのでしょうか。ほろ苦い青春まっただ中の二人を描く『思春期ビターチェンジ』を紹介します。
青春はいつだってちょっとほろ苦い。大人になってから思い出す、思春期のあのころはなぜあんなにも眩しくて、甘酸っぱくて、そしてほんの少しほろ苦いのだろう。
何の取りとめもない、いたって平凡なはずの思春期を過ごしたわたしでさえそうなのだから、この2人にとって、それはそれは凄まじいものだったに違いない。
木村佑太(きむら ゆうた)
大塚結依(おおつか ゆい)
現在思春期真っただ中の中学生。一見何の変哲もない平凡な中学生に見える彼らだが、たった一カ所だけ、普通の中学生とは異なるところがある。実は彼ら、互いの身体が入れ替わっている。それももう3年も。
この物語、『思春期ビターチェンジ』(ポラリスCOMICS)は、そんな2人の男女に起きた、現在進行形の青春交換劇を描いた作品だ。
小学四年生のある日、突然、互いの心と身体が入れ替わってしまった木村佑太と大塚結依。元に戻れぬまま月火は流れ、いつしか中学生になった彼らに待ち受けていたのは、思春期。やがて2人は小学生の時には感じることのなかった男と女の決定的な違いをだんだん感じてくるようになる。
思春期の男女の身体の入れ替わり。そんな設定だけ聞けば、なんだか思春期男女のドタバタ青春コメディなのかと思われるかもしれない。その一面があることは確かだ。しかしそれ以上に本作品で特徴的なのは、思春期という非常に難しいお年ごろの男女の心の機微を、非常に丁寧に描いている点だろう。
ユウタとユイ。物語は小学生の彼らから現在に至るまで、その心の成長を繊細に描いている。家族のこと、友達のこと、異性のこと。互いの身体が入れ替わったことで、初めて見ることができた景色。
きっと入れ替わりを経験しなければ、気付くことができなかったものがある。自分とは違う身体になり、期せずしてすべてをさらけ出すことになったことで、いままで見えなかったものがはじめて見えてくる。そして、いままで見えていたはずのものも違った形を見せるようになる。
私たちこれからどんどん成長していくんだ
それはもう変えられない ケンカなんてしてる場合じゃないってわかった
だから私も立派に成長していつか戻った時
ユウタが喜ぶような姿になるから 二人で頑張っていこう
彼らは何も青春を失ったわけではない。ただ、交換しているだけ。いつか彼らがお互いの身体に戻った時、その時に見える世界は、いったいどんなものだろうか。今はまだほろ苦い青春真っただ中にいる彼ら。だが、きっと逞しく成長していく。
だって、思春期は成長期なのだから。
(評:ラノコミどっとこむ編集部/やまだ)
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