電子書店の中の人 5回目――Reader Storeの中の人あの書店のスタッフに直撃

いつもお世話になっている電子書店。電子書籍を購入しているこの端末の向こうにだってスタッフがいる。なかなか見えてこない「電子書店の中の人」にインタビューした。

» 2013年10月31日 12時00分 公開
[渡辺まりか,eBook USER]

 電子書店、または電子書籍ストア――わたしたちはここ数年でその存在を少しずつ認知するようになった。

 とはいえ、書店と言えば、リアルの書店(実書店)を思い浮かべる方の方が圧倒的多数だ。いつかは電子書店もそうしたものとして、今より身近なものになっていくだろう。しかし、わたしたちは電子書店のことをまだよく知らない。

 はっきりしているのは、そこにはリアルの書店と同様、「人」が介在しているということだ。この連載は、“電子書店の中の人”にフォーカスし、どんな人が電子書店の運営に携わっているのかを紹介しながら、その電子書店の“雰囲気”を感じてもらうためのものだ。

 第5回目は、Reader Storeの中の人・飯沼萌子さんに聞いた。

自分にマッチした電子書籍と出会う楽しみを読者に提供したい

―― Reader Storeと言えば、先月、大々的にストアリニューアルを行ったり、新端末「PRS-T3S」を発売したりと話題が豊富ですよね。飯沼さんは、この話題の書店の中でどのような立場で働いていますか。

ソニーマーケティング デジタルリーディングビジネス部リーダーストア課・飯沼萌子さん

ソニーマーケティング デジタルリーディングビジネス部リーダーストア課・飯沼萌子さん(以下飯沼) Reader Storeのプロモーション・編成担当をしています。

 具体的には、毎週入荷する新刊から特集企画を立案したり、どの本を展開してキャンペーンを実施するかなど、その週の“店の顔作り”を考えています。

―― 顔作りですか。毎週となると、かなり大変な作業になりますね。

飯沼 そうですね。それに、端末ごとにお客さまが購入する本の傾向が違うので、スマートフォン向け、タブレット向け、PC向けなど各ストアの顔を作るようにしているので、楽な作業、とは言えないですね。それでも、Reader Storeにアクセスしてくださったお客さまが喜ぶ顔を想像しながら作業しています。

―― 端末ごとに並べられている書籍が違うんですね。今度から、意識して見るようにします。今の部署に配属されたのはサービス立ち上げの2カ月前、ということですが、戸惑いなどはありましたか?

飯沼 自分にとってはじめてのWebビジネスで、かつ新規ビジネスの立ち上げだったため、お客さまのWeb上での行動パターンや反応などをどう考えたらいいのか最初は戸惑いました。また、Webビジネスならではのスピード感は経験したことのないものでしたが、自分次第で何でもできるという意味では今や一番楽しい部分になっています。

―― ところで、飯沼さんが子どものころに読んだ本で最も印象に残っている本はありますか。

飯沼 ミヒャエル・エンデの『モモ』です。母親から渡された本だったのですが、初めて読んだときは難しかった覚えがあります。時間が盗まれると人の心には余裕がなくなり、他人に優しくすることができなくなるんだというのがとても印象的で、怒っている大人を見るとみんな時間がないんだなーと純粋に思ってました。

 特にそれは自分が大人になった今、その意味がよく分かりました(笑)。大人こそ読むべき本かもしれませんね。

―― その話、身につまされます(笑)。社会人になってから興味を持つようになった本などはありますか?

飯沼 コミックです……。実は幼いときにコミックを読む習慣がほとんどなかったんです。この仕事に就いてから、いろんな人から面白いコミックをお勧めされて読んでみたら完全にハマりました。コミックというと子どもが読むイメージが正直強かったのですが、大人が読むからこそ懐かしくも感じたり、深く共感したり、ときには救われたりするコミックもあることを知りました。

―― 大人になってから、というのは興味深いですね。コミックでも書籍でも、ジャンルを問わず、飯沼さんイチオシの書籍はありますか。

飯沼 書籍でずっとお気に入りなのは『わたしを離さないで』『アルケミスト』です。コミックで最近ハマったのは『路地恋花』ですね。京都にある職人や芸術家が集まる長屋を舞台に繰り広げられる恋のオムニバス作品なんですが、きっかけはジャケット買い(表紙買い)でした。ストーリーに出てくる全員が主人公で、それぞれが自分たちの人生を一生懸命に生きている。その姿に、心がぎゅっと痛くなったり、元気づけられたり、涙したり……。男性も女性も読んだら心が温まるようなストーリーがきっと見つかるはずなので、ぜひ読んでほしい1冊です。

 書籍でもコミックでも読んだ後に、内容がじわーっと心にとどまって考えさせられる本が好きです。

―― さすが、大人の楽しみ方、という感じです。お忙しいとは思いますが、どんなタイミングで読書を楽しんでいますか。

飯沼 移動中は合間に読めるようにXperia Tablet ZかReaderを持ち歩いていますが、じっくり読書するのはほとんど寝る前ですね。寝る前に疲れた仕事モードからスリープモードへ切り替えるときはコミックや雑誌を読みます。だいたい気づくと読みながら寝てますが(笑)。

―― 良い感じに眠りを誘う効果もありそうですね(笑)。かかわっていらっしゃる電子書籍、または電子書籍端末やアプリで気に入っているところはありますか。

飯沼 電子書籍にしてからバッグが軽くなったことです。今まで平気でハードカバーの本を持ち歩いたりしていて、バッグからはみ出したりしてることも多かったのですが、電子書籍にしてからはかなりスッキリしました。また、ページ数の多い女性誌を通勤中片手で読めるのは感激でした。今まで重くてかさばるので買ってこなかったのが今や毎月愛読してしまっています。これは特に女性には嬉しいポイントです!

―― ハードカバーと比べると、確かに軽いですよね。確か今、Readerでは雑誌を読めないので、Xperia Tablet Zでの読書、ということになると思いますが、さすがに片手でずっと持っているのは重くないですか?

飯沼 そうでもないんですよ。(Xperia Tablet Zを記者に手渡す)

―― あ! 予想以上に軽いですね。実は、先ほど「読みながら寝てる」と聞いたとき、「あのタブレットが顔の上に落ちてきたら、かなりの衝撃だろうな」と想像していたのですが、これなら落ちてきても心配ないですね。

飯沼 寝るときに無意識に脇に置いているようで、いまのところ顔の上に落としたことはありませんけどね(笑)。

―― 安心しました(笑)。最後の質問になりましたが、飯沼さんが今後、仕事内で挑戦してみたいと思うことはありますか。

飯沼 女性顧客の獲得です。まだまだ電子書籍業界では男性のお客さまが多いですよね。でも、女性誌の例を取ってみても分かるように、電子書籍は女性にこそ便利に使ってもらえるものだと思うのです。ぜひとも本好きの女性たちに読書の幅を広げるツールとして電子書籍を知ってもらいたいですね。そのために、今後積極的に女性に向けて魅力的な施策などを考えていきたいと思っています。

―― 女性の読む雑誌は大きくて重いものが多いですから、ぜひとも端末の中に入れて、スマートに読んでもらいたいものですよね。今日はどうもありがとうございました。


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