電子書店の中の人 4回目――Yahoo!ブックストアの中の人あの書店のスタッフに直撃

いつもお世話になっている電子書店。電子書籍を購入しているこの端末の向こうにだってスタッフがいる。なかなか見えてこない「電子書店の中の人」にインタビューした。

» 2013年10月24日 12時00分 公開
[渡辺まりか,eBook USER]

 電子書店、または電子書籍ストア――実際に使っているかは脇に置くとしても、わたしたちはここ数年でその存在を少しずつ認知するようになった。

 とはいえ、書店と言えば、リアルの書店(実書店)を思い浮かべる方の方が圧倒的多数だろう。馴染みの書店にふらっと立ち寄り、馴染みとなった書店員に探している書籍の所在を尋ねたり、お勧めの書籍を尋ねたり……リアルの書店は日常の一部のようにそこに存在している。

 いつかは電子書店もそうしたものとして、今より身近なものになっていくだろう。しかし、わたしたちは電子書店のことをまだよく知らない。ただ、はっきりしているのは、そこにはリアルの書店と同様、「人」が介在しているということだ。この連載は、“電子書店の中の人”にフォーカスし、どんな人が電子書店の運営に携わっているのかを紹介しながら、その電子書店の“雰囲気”を感じてもらうためのものだ。

 第4回目は、Yahoo!ブックストアの鈴木亜紀代さんに聞いた。

電子書店としても日本最大を目指したい

―― 「Yahoo!ブックストア」としてオープンしたのは2011年になってからですが、その前、2003年にすでに「Yahoo!コミック」がオープンしていましたね。使い慣れたYahoo! JAPAN IDでログインできたので、わたしもずいぶんお世話になりました。名刺を拝見したところ、鈴木さんは「ヤフージャパン」ではなく「GyaO」に所属されていますよね。これにはどういう背景があるのですか。

Yahoo!ブックストア鈴木亜紀代さん(以下鈴木) ヤフーが弊社を買収し、子会社化したのはご存じだと思うのですが、弊社はもともと動画配信を中心とするサービスを提供しており、エンターテイメント性の高い会社でした。そこで、「ブックストア」も含め、エンターテイメント系のサービスはすべて弊社で担当するようになったんですよ。

―― そうなんですね。短くて分かりやすい説明をありがとうございます。ところで、鈴木さんはこの「Yahoo!ブックストア」の中ではどのような立場で働いているんですか?

鈴木 はい。ひとことでいうと、電子書店の書店員です。

Yahoo!ブックストア鈴木亜紀代さん

 Yahoo!ブックストアを訪れたお客さまが、電子書籍を探しやすいように、新刊や話題になっている本をトップページに並べたり、お客さまがいままで読んだことのない本に出会ってもらえるように、いろいろな切り口で特集ページを作成したりと、主に編成を担当しています。

―― 何が話題になっているのかアンテナを張り巡らせていなければならないので、大変そうですね。ところで、鈴木さんは子どものころに読んだ本で最も印象に残っている本はありますか。

鈴木 最も印象に残っている本は『姫ちゃんのリボン』です。主人公の姫ちゃんは、元気いっぱいのオテンバな中学生。でも女の子らしく優しい心の持ち主で、わたしにとってはあこがれの存在でした。

 実はこの作品は、自分のお小遣いではじめて買ったマンガなんです。はじめて買ったマンガだからこそ、裏表紙に名前まで書いて大事にしていました。

 大好きなあまり、友だちとキャラクターになりきって遊んだりもしていましたね(笑)。いま思うと、『姫ちゃんのリボン』にのめり込んだことがきっかけでマンガを描いたり、ごっこ遊びがきっかけで演劇部に所属したり、学生時代の人生を左右したマンガだったといっても過言ではありません。

―― 限られたお小遣いの中から買ったものって自分にとっては特別なものになりますよね。ずっと大切にしていたんだな、というのが伝わってきます。印象に残っているだけではなく、大きな影響を与えた一冊だったんですね。今はお忙しいと思いますが、どんなタイミングで読書を楽しんでいますか。

鈴木 通勤の途中や、家にいるときはもちろんのこと、旅行の移動時間にも読んでいます。これまでだと、旅行に行く前に持っていく本を数冊、時間をかけて選んでいましたが、今では前もって準備しなくても、読みたいと思ったタイミングで、気分に合わせて本を選ぶことができるので、より読書が楽しくなりました。

―― それも電子書籍ならではのメリットですね。それ以外にも電子書籍、または電子書籍端末やアプリで気に入っているところはありますか。

鈴木 電子書籍には“品切れ”という概念がありません。わたしは、読みたい! と思ったら手に入るまでとことん探す性格なので、電子書籍を使っていない時は大変でした。品切れであれば隣町、隣町と何店舗も探し回って、結局どこにもなく数日我慢したことが何度もあります。

 探し回るということはとても楽しいものですが、それ以上に、いつでもどこでもストレスフリーで買えるという点が、電子書籍を気に入っている理由の1つです。

 また、わたしは毎月40作品ほど電子書籍を購入しているんですが、もしこれだけの冊数の紙の書籍を毎月買っていたら、置き場所に困ってしまいます。電子書籍だからこそできることだなぁと思っています。

 また、Yahoo!ブックストアの場合、Yahoo!のアカウントでログインすれば、どの端末からでも購入した書籍を読めますし、アプリであれば、自分の端末にダウンロードさえしておけば、たとえ電波環境の悪いところであっても読めるので、手前味噌ながら気に入っています(笑)。

―― 自社を愛する精神、素晴らしいです(笑)。今後、仕事内で挑戦してみたいと思うことはありますか。

鈴木 Yahoo!ブックストアはコミックはもちろんのこと、文芸やビジネス書といった書籍も充実しています。今年の8月には、書籍一般専用のポータルサイトもオープンし、総合電子書店として新たな一歩を踏み出しました。

 今後「Yahoo!ブックストアにいけばどんな本もそろっている!」といってもらえるように、より在庫数を増やしていき、ポータルサイトとしてだけではなく、電子書店としても日本最大を目指したいと思います。

―― それはわたしたちユーザーにとってもありがたいことなので、ぜひぜひチャレンジしていただきたいですね。今日はどうもありがとうございました。

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