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» 2013年10月22日 12時55分 UPDATE

“3人”に聞けば真実が分かる?

マーケティングで注目を集めている「N3」とは。「N3」を利用して成功に至ったスターバックスの事例を紹介する。

[新刊JP]
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 今やマーケティングの大きな武器となった「ビッグデータ」。大多数の情報がリアルタイムで蓄積されるので、今、人々が何を求めて行動しているのかが一目で分かるものだ。

 しかし、ビッグデータに頼らずともマーケティングは可能だ。今、注目されている新しい手法が「N3」である。「N3」とは“3人”という意味で、この方法を使って市場の声を収拾すれば、意思決定や経営判断を究極的に速めることもできるというのだ。

fhfig691.jpg “3人”に聞けば真実が分かる?

 『マーケティングは「3人」に聞きなさい!』(小川政信/著、生産性出版/刊)は、この「N3」を使ったマーケティングのやり方や有用性について記した一冊。この本の中で、まず事例として取り上げられているのがスターバックス(以下「スタバ」)。ここではそのスタバの例を取り上げながら「N3」について説明しよう。

 スタバといえば全席禁煙のコーヒーチェーン。今では全席禁煙の喫茶店も増えてきたものの、スタバが日本に参入した1990年半ば当時は革新的な出来事だった。

 実はスタバにとって日本は、北米以外で初めて海外進出した場所。そのため、まずは日本有数の総合商社をパートナーとして迎えることにした。しかし、スタバ本社の日本進出における基本的な考え方に対して、その総合商社は修正を加え、以下の2点を提案してきたのだ。

  1. 禁煙ポリシーを日本市場に適用しない
  2. 日本では歩きながらコーヒーを飲む習慣がなく、ドトールの影響でプライシングも低めに誘導される可能性があるので、陶器のコップを使う

 この提案にスタバ本社は困惑した。そこで今度は、世界有数のコンサルティングファームに依頼し、日本進出について「GO」か「NO-GO」かを問いかけたのだ。

 そこでコンサルティングファームが出した答えは「NO-GO」だった。日本人は街中でコーヒーを飲まないし、喫煙の自由を奪うこともできない。コーヒーの飲み歩きと禁煙、今では当たり前だが、当時はそういう時代だったのだ。

 しかし、皆さんも知っているようにスタバは日本でも成功を収め、わたしたちの生活の中に密着している。それはどうしてなのだろうか。

 こうした重要な経営判断をする際には、2点見るべきところがあるという。(1)日本人の顧客としての反応、(2)投資が収益をもたらしそうか否か。かなりざっくりした見分け方だがここに着目すればおのずと判断ができるようになるのだ。

 そこで「N3」の登場だ。3人に被験者として協力してもらい、まずは「あなたが立ち寄りたいコーヒーショップとして大切な要素」をヒアリングした。すると、3人とも重要度の差はあっても、コーヒーの味や価格を重要視しているには違いなく、一方、喫煙・禁煙はそこまで重要ではないが「一応気にする」という声が挙がった。

 しかし、ここで重要なのは「顧客は知らずにうそをつく」ということだ。著者の小川氏は「実はわたしたち人間は誰も、本当のところどういう理由でどういう購買行動を取っているのか、頭や表層意識では理解できていない」といい、ヒアリングで語られたことは、実は潜在意識とは違うことを言っている可能性を指摘する。

 そこで行なったのが、2つの購買候補があった場合に、価格を含めて考えて「こちらが良い」と選択させるという調査方法。製品コンセプト、ブランド、価格などさまざまな要素を勘案して、作成した架空の製品を多数作り、被験者にランダムに示しながら「どちらをより選考するか」だけを尋ねていく。この方法で“ちょっと深い”深層心理を探っていくのだ。

 その結果、コーヒーに支払う価格は180円だろうが380円だろうが、200円の差についてはさほど敏感に反応しないということが分かった。これは、先のアンケートとはまったく違うデータだ。また、旨そうなコーヒーということに反応する人もいるが、そうでない人も多く、むしろ「禁煙であるかどうか」や「広め・リラックス感」の方が重要視されることが分かった。

 つまり、コーヒーが平均よりも高くても、「禁煙であるかどうか」であればお金を払うと判断する人がいるということだ。

 ここから組み立てることができる仮説は、ほかのコーヒーショップのような150円から180円の低価格帯でなくてもよく、広さとリラックス感を兼ねそろえた空間を提供し、禁煙に特化した過半数の人の潜在意識の期待に応え、コーヒー自体はプレミアム価格で提供するという店舗像である。

 このように「N3」マーケティングによって市場の立体感をつかむことができる。もちろんそれが完全に正しい市場の像であるかというと、実際にはブレがあるだろう。しかし、ビッグデータを使ったり、マーケティングに長い時間を注がなくても、スピード感のある経営判断を可能にできるのだ。

 実はこの「N3」、第一線で活躍する経営者たちにも注目を浴びており、「N3は、スピードと複雑性が増しているからこそ、変えてはいけないものの一つだと強く思う」(NTTデータユニバーシティ代表取締役社長・家田武文氏)などのコメントが本書に寄せられている。

 「N3」はいかに自分たちが思い込みでマーケティングをしていたかを見直す良い薬ともいえる。経営の肝は意思決定ともいえるが、ビッグデータなどを使う前に、まずは「N3」で市場の立体感をつかむと、判断に迷わなくなるかもしれない。

(新刊JP編集部)

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