重なる『葵くんとシュレーディンガーの彼女たち』セカイとココロ

パラレルワールドを行き来する能力を持った主人公と二人のヒロインが活躍するSFファンタジー『葵くんとシュレーディンガーの彼女たち』を紹介します。

» 2013年10月22日 12時15分 公開
[ラノコミどっとこむ]
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 皆さんお元気ですか。今回はパラレルワールドを題材としたSFファンタジー『葵くんとシュレーディンガーの彼女たち』(電撃文庫)をご紹介します。

パラレルワールドを旅する?

 主人公の「葵」は小さいころから特異な体質を持っていた。それは夜眠ると世界が変わってしまうということ。そのため、名字も「相楽」であったり「江村」であったり、隣に住む住人が違っていたり、幼稚園で自分の組が違って怒られていたりした。

 そんな中、成長するに従って転移する世界が2つに絞られるようになってきた。隣に住む幼なじみが「篠崎真宝(しのざきまほう)」の世界と「遠藤微笑(えんどうほえむ)」の世界である。

 葵は朝起きた時に自分がどの世界にいるのかを手っ取り早く確認するため、寝る前に窓を開け、隣に住む幼なじみの部屋のカーテンで見分けるようにしていた。みずたま模様なら真宝、ストライプの柄なら微笑、という感じだ。

 そして葵は隣人が真宝の世界を「マホ界」微笑の世界を「ホエ界」と便宜上呼ぶようにしていた。

 そして葵が行き来するこの2つの世界で共通すること、それは葵が通う若葉高校の演劇部の部長が篠崎真宝で副部長が遠藤微笑であるということだった。そして、学園祭に演劇部が行う出し物の脚本ができていないということだった。

 それを見た葵はマホ界では真宝に、ホエ界では微笑にそれぞれパラレルワールドを題材にした脚本を作ってはどうかと提案する。役者が一人二役を演じることになるため、役者自身のやりがいもある上に、面白いのではないかと。

 さらにそれぞれの世界でのクラスメイトである「天馬諒一(てんまりょういち)」がSFに詳しいということで脚本創りの手助けができないかと紹介する。

 そしてマホ界、ホエ界でともにパラレルワールドを題材とした「シュレーディンガーの彼女」が創られていくのだが、それが2つの世界の運命を変えることとなっていく……。

SFファンタジーと量子力学

 当然ながらこの作品にはSFや量子力学に関することがところどころ出てきます。

 例えば「シュレーディンガーの猫」。何となくその言葉を聞いたことがある方もいるのではないかと思います。量子力学に関することらしいのですが、一般の人にはわたしと同じく聞いたことはあるけど……という方がほとんどだと思います。

 正直わたしも量子力学なんてさっぱり分かりません。ですが、作品中でちゃんと分かりやすく説明を入れてあるので「あーこんなもんなんだー」くらいにとらえることができるようになっています。

 それを抜きにしてもパラレルワールドを題材にした興味深い作品だと思います。SFファンタジーはちょっと……という人にもおススメの作品です。ぜひ一度手にとって読んでみてください。

(評:ラノコミどっとこむ編集部/せふぃ)

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