電子書店の中の人 3回目――FeBe(フィービー)の中の人あの書店のスタッフに直撃

いつもお世話になっている電子書店。電子書籍を購入しているこの端末の向こうにだってスタッフがいる。なかなか見えてこない「電子書店の中の人」にインタビューした。

» 2013年10月17日 14時00分 公開
[渡辺まりか,eBook USER]

 電子書店、または電子書籍ストア――実際に使っているかは脇に置くとしても、わたしたちはここ数年でその存在を少しずつ認知するようになった。

 とはいえ、書店と言えば、リアルの書店(実書店)を思い浮かべる方の方が圧倒的多数だろう。馴染みの書店にふらっと立ち寄り、馴染みとなった書店員に探している書籍の所在を尋ねたり、お勧めの書籍を尋ねたり……リアルの書店は日常の一部のようにそこに存在している。

 いつかは電子書店もそうしたものとして、今より身近なものになっていくだろう。しかし、わたしたちは電子書店のことをまだよく知らない。ただ、はっきりしているのは、そこにはリアルの書店と同様、「人」が介在しているということだ。この連載は、“電子書店の中の人”にフォーカスし、どんな人が電子書店の運営に携わっているのかを紹介しながら、その電子書店の“雰囲気”を感じてもらうためのものだ。

 第3回目は、聴いて楽しむ書籍、“オーディオブック”の配信サービスFeBe(フィービー)などを運営する「オトバンク」広報担当の中川真実さんに聞いた。

読んだものを聞く――忘れていたその体験を

「オトバンク」広報担当・中川真実さん 「オトバンク」広報担当・中川真実さん

―― 約1万作品の耳で楽しむ書籍配信のサービスを運営している「オトバンク」ですが、その中でどのような立場で働いていますか。

オトバンク中川真実さん(以下中川) オーディオブックの配信サービスFeBe(フィービー)を中心に広報を担当しています。プレスリリースやソーシャルメディアでの投稿を通じてオーディオブックの情報を発信したり、メディアの方からの取材依頼をいただいた際の対応などをしています。

―― まさに今、そのお仕事中、ということですね(笑)。入社して戸惑ったことはありますか。

中川 大勢の人の前に出るのがとても苦手な性格なので、声優さんが出るイベントで司会をすることになったときにはとても戸惑いました。

―― 突然そのような役を任されたら、戸惑ってしまいますよね。ところで、最近、これがイチオシという書籍はありますか。

中川 最近聴いたオーディオブックだと、テレビドラマ『半沢直樹』の続きに当たる『ロスジェネの逆襲』が面白かったです。音だけなのでより想像力が膨らんで、ドラマともまた違う面白さを感じていただけるかと思います。

 また、本ではないのですが、弊社では新聞の音声配信も行っており、『聴く日経』という番組はイチオシです。日本経済新聞のダイジェストを毎日20分で聴けるのですが、電車の中などでさっと聴けるので、学生さんにもビジネスパーソンの方にもオススメです。

―― なるほど。『ロスジェネの逆襲』はFeBeでもベストセラー入りしていますよね。耳で読むとまた違った楽しみがありそうですね。『聴く日経』を挙げていただきましたが、社会人になってから興味を持つようになった分野はありますか。

中川 社会人になるまで、ビジネスについての知識があまりにもなかったのですが、仕事を始めてからは、ビジネス書にも触れるようになりました。もっと早くから知っておけば良かった……と感じることばかりで、できるだけ日々の仕事に活用したいと思っています。

―― ビジネス書は学生時代、あまり興味を持てない分野かもしれないですよね。そんな中川さんですが、お聞きしたところによると、小さいころから本が好き、とのことでした。子供のころに読んだ本で最も印象に残っているものはありますか。

中川 はい、『赤毛のアン』シリーズが好きでした。小学生のときに祖父母に買ってもらって以来、今でも本棚に並んでいます。登場人物がみな情緒豊かで、アンと一緒に嬉しい気持ちになったり、悲しい気持ちになったり、悩んだりと、心が旅をしているような気分を味わえました。

―― 『赤毛のアン』ですか! 実はわたしも大好きな本でした。アンが空想する世界を自分でも想像するのが楽しかったように覚えています。お忙しい毎日を過ごしていると思いますが、今ではどんなタイミングで読書を楽しんでいますか。

中川 移動中の電車の中で、読書を楽しむことが多いですね。オーディオブックに出会ってからは、散歩やランニングをしながらも「ながら聴き」の読書をしています。2時間くらい一人で歩いても、オーディオブックを聴いていればあっという間なので、良いダイエットにもなるかなと信じています(笑)。

―― 「ながら聴き」できるオーディオブックならではの新しい効果ですね(笑)。耳で楽しむオーディオブックとはまた少し違うと思うのですが、電子書籍、または電子書籍端末やアプリで気に入っているところはありますか。

中川 わたしは物を捨てるのが得意ではないので、保存の場所を取らず、端末一つあればどこにでも持ち運べる電子書籍は本当に画期的だと思っています。読みたいと思った瞬間に、その場で買えるのも便利で、良い時代になったと思います。

読書のバリアフリー化を実現したい

―― 気になったらその場ですぐ買えるのは本当に便利ですよね。中川さんが今後、今の仕事で挑戦してみたいと思うことはありますか。

中川 子どものころは、布団の中や親の膝の上での「読み聞かせ」って普通のことだったのではないかなと思います。でも、大人になると読み聞かせてくれる人が誰もいなくなり、いつしか「読んだものを聞く」ということがなくなってしまう方が多いのではないでしょうか。オーディオブックが当たり前のものとなり、誰もが知っている状態にできれば、より多くの方に、本を聴いて楽しむワクワク感や、便利さを改めて知っていただけると思っています。

 オーディオブックが時間を効率的に使いつつ仕事や日々の生活にも生かせ、より豊かな毎日を送ることにつながれば嬉しいです。そのために、病院などの医療機関や図書館、教育機関などとも、オーディオブックを導入していただけるような取り組みをしていきたいと考えています。

 また、欧米ではオーディオブックが書店だけではなく家電量販店、ドラッグストアなどにも置かれているくらい普及しているという話を聞いたので、そうした事例ももっと調査して、日本でもいつでもどこでも誰もがオーディオブックで本が聴ける、“読書のバリアフリー化”を実現していきたいです。

―― 耳から本を聴けると、想像力が膨らんで、よりワクワク感を得られ、記憶力も高まりそうですね。オーディオブックの魅力も教えていただくことができました。今日はありがとうございました。

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