電子書籍、出版のシーズンコンセプトを変える

ほかのコンテンツ産業と同じく、出版にも季節を考慮したシーズンコンセプトが存在する。電子書籍の登場でそれらはあいまいになってるが、ほとんどの出版社はシーズンカタログに強いこだわりを見せている。

» 2013年08月05日 16時00分 公開
[Mercy Pilkington,Good e-Reader Blog]

 エンターテインメント業界のほかの分野と同じように、書籍にもシーズンコンセプトが存在する。テレビ番組はシーズンごとに撮影され放映される――年内のほかのタイミングには再放送が行われる――し、映画業界もアクション映画を夏、ファミリーものをホリデーシーズンといった具合に、ヒット作をリリースするシーズンを長らく固定していた。

 Publisher’s Weeklyに掲載された記事は、従来の出版における思考プロセスの一部とシーズンコンセプトの歴史的起源を説明している。ほかのエンターテインメント産業とは異なり、これらのシーズンコンセプトの一部は印刷した書籍を輸送船で世界中の書店に物理的に出荷していたことに起源を持つ。

 しかし、電子書籍は巨大船で運送されないのに、相変わらず新リリースがシーズンごとにまとまっているのはなぜなのだろうか。

 確かに、紙の書籍はいまだにさまざまな小売業者向けに出荷される必要があるが、大規模出版の初期に比較するとリードタイムは短くなり、運送費も安くなっている。これも『先例にならう』ことの一例なのだろうか。

 Amazonが抱える出版社、Amazon Publishingは自主出版著者が毎月著作権料を受け取っているとして、業界の慣習通り四半期ごとに著作権料を支払うのではなく、毎月の支払いを開始すると発表したことで、従来の出版のあり方を劇的に変えた。自主出版すれば毎月著作権料を受け取れるのに、従来の著者に年に4回しか支払いしないのはなぜだろうか。

 しかし、書籍の電子化はある程度、この毎月の著作権料支払いに影響している。Publisher's Weeklyの記事で、出版社がシーズンコンセプトにこだわるさまざまな理由を挙げているが、『先例にならうこと』は意思決定プロセスに影響していないとしている。

 シーズンコンセプトはあいまいになっているが、ほとんどの出版社は、多くの書籍が現在電子化されているにもかかわらず、シーズンカタログにこだわっている。「シーズンカタログに強くこだわるのは、ノスタルジックな理由からというだけではありません」とNortonのドレーク・マクフィーリー社長。「われわれが抱える書籍リスト全体を提示し、それぞれがどのように組み合わさっているか受け取った方が理解できることがいまだにわれわれにとっては非常に重要です。シーズンカタログは多くの重要な点でわれわれのアイディンティティとなっており、業界関係者も同じように感じていると思います」。

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