インタビュー
» 2013年07月29日 08時00分 UPDATE

藤田和日郎、若木民喜のスペシャルメッセージも:「新世紀少年サンデーコミックグランプリ」は少年サンデーに何をもたらすか (1/2)

少年サンデーを代表する次の作品はここから生まれてくるのかもしれない。ニコニコ静画で実施された“連載”を募集する新人賞「新世紀少年サンデーコミックグランプリ」について、少年サンデー編集部、そして、漫画家の藤田和日郎さん、若木民喜さんに聞いた。

[西尾泰三,ITmedia]

 今から24年ほど前の1989年、「コミックグランプリ」と呼ばれる新人賞が開催されたことを覚えている読者はどれくらいいるだろう。主催は小学館週刊少年サンデー編集部、よって、正式名称は「少年サンデーコミックグランプリ」だが、むしろ、そこから少年サンデーの人気作品となった『帯をギュッとね!』『うしおととら』を挙げた方が、通りがいいかもしれない。

新世紀少年サンデーコミックグランプリ 新世紀少年サンデーコミックグランプリ

 そんなコミックグランプリが2013年、復活を果たした。“新世紀”の名を新たに冠し、「新世紀少年サンデーコミックグランプリ」となったこの賞は、ドワンゴが運営するニコニコ静画の中で実施された。ゲスト審査員には、うしおととらで同グランプリを受賞した藤田和日郎さん、『神のみぞ知るセカイ』などの作品で知られる若木民喜さんが名を連ね、現在は最終選考発表が迫っている。

 復活したコミックグランプリには小学館の、あるいはマンガを取り巻くさまざまな興味深い動きが収束している。そこで今回は、週刊少年サンデー編集部の梅原慧太さんと、同編集部副編集長の則松康郎さんに同グランプリについて、また、少年サンデー編集部で取り組むさまざまな動きについてその意図を聞いた。さらに文中では、藤田さん、若木さんにも新世紀少年サンデーコミックグランプリについて貴重なコメントをいただくことができた。

週刊少年サンデー編集部の梅原慧太さん 週刊少年サンデー編集部の梅原慧太さん

―― 今回、ニコニコ静画で実施された「新世紀少年サンデーコミックグランプリ」についてうかがえればと思います。少年サンデーコミックグランプリは20数年前に実施されていた記憶がありますが、“新世紀”の名を冠した今回の新人賞実施までの経緯をお聞かせください。

梅原 「クラブサンデーぷらす」(以下クラサンぷらす)をドワンゴさんと一緒にやらせていただいていて、その中でイベント的なことをやりませんか、とお声掛けいただいたのが契機ですね。せっかくなので何か変わったことを、と考えていたところ、通常新人賞で募集する「読切」ではなく、「連載」を募集していたコミックグランプリのことを思い出し、実現に至りました。

則松 読切で“物語力”を鍛えることも非常に大事だとは思いますが、最終的には連載で成功することが大事になってくるので、最初からその辺りの力を見せてほしいな、っていう狙いもありますね。

―― 1989年に第1回が実施されたコミックグランプリの受賞作は河合克敏さんの『帯をギュッとね!』で、翌年の第2回のグランプリ受賞作が藤田和日郎先生の『うしおととら』でした。ここまではWebなどでも確認できましたが、それ以降はどうなっていたんですか?

帯をギュッとね! 帯をギュッとね!
うしおととら うしおととら

梅原 3回目までの開催だったようです。なので今回は、“復刻”という言い方をさせていただいています。

―― これは必ず1作品が選出されるんでしょうか。該当作品なしもあり得ますか?

則松 該当なしは考えていません。必ず1作品は、クラブサンデーか増刊(週刊少年サンデーS)で連載予定です。

アシスタントのデビュー率が非常に高い二人の審査員

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―― 今回、ゲスト審査員として藤田さんと『神のみぞ知るセカイ』などの作品で知られる若木民喜さんが名を連ねています。そもそもお二方はどういう経緯で参加されているんでしょう。

梅原 僕らがお声掛けさせていただいたんですが、藤田先生は、第2回の受賞者であるということ。若木先生に関しては、ネームの公開をお願いしたのがきっかけですね。

則松 実はお二方とも、アシスタントや元アシスタントのデビュー率が非常に高いんです。藤田先生の弟子は、『烈火の炎』などで知られる安西信行さんや、『ムシブギョー』の福田宏さんなど、若木先生はクラブサンデーで『市場クロガネは稼ぎたい』を描かれている梧桐柾木さんやサンデーS連載の『PLUG-プラグ-』(完結)のこじまたけしさん、『名無しは一体誰でしょう?』の山田鐘人さん(原作)など。週刊少年サンデーの連載を目指している人たちの中にはそうした方がたくさんいるので、そうした育成の能力をぜひ審査という形で発揮してほしいと依頼させていただいたんです。

―― こちらは今、最終選考をされているところなんですよね。

梅原 そうですね。今審査員の先生方に読んでいただきながら、1次選考通過した方を先生方のレビューとかも含めて見せて少しずつ発表していって、最後に1位を発表する流れで考えています。

―― 応募はどれくらいあったんでしょうか。

梅原 59件です。短い募集期間にもかかわらず予想より多かったです。ニコニコ静画さんで実施した同様の取り組みの中でも過去最高と聞いています。

―― 少年サンデーでは毎月募集しているまんがカレッジや、半年に一回募集されている新人コミック大賞などもありますが、今回の新世紀コミックグランプリも手ごたえはあると。

梅原&則松 数に関してはすごくいいですね。

―― “数に”と限定したのは、満足しきれない部分や課題があるということですか?

則松 今回は、ふたを開けてみると、1話だけで判断する難しさを少し感じました。この言い方が適切かはともかく、1話だけなら投げっぱなしで行くこともできるので。

梅原 そういう形が多かったかもしれませんね。1話の中にドラマがあったり、登場するキャラのことを好きになれるエピソードみたいなものが少なく、どちらかといえば、引っ張って終わるみたいな感じの作品が多くて。それは判断が難しいなと。

 もう1つ、今回のコミックグランプリはせっかくニコニコ静画さんで実施させていただくので、ニコニコっぽい雰囲気の中から商業誌にできそうなものがないかな、と思っていたんですが、意外とみんな、サンデー側に寄せて頑張って描いてくれている、合わせてきてくれてしまった印象を受けました。もう少しニコニコユーザーっぽいノリがある方に応募してもらうにはどうすればいいのかを考えたいと思いましたね。

―― ネーム応募も可だったにもかかわらず、原稿レベルの作品が多く寄せられたのは、クラサンぷらすの中にあるサンデー作品ネームセレクションで『うしおととら』や『神のみぞ知るセカイ』などのネームを公開したのが功を奏したのかもしれませんね。ネームのデータをちゃんと残していることも驚きでしたが、これは漫画家さんが個人的に持たれているんですか?

サンデー作品ネームセレクション

梅原 藤田先生の第1話は残ってなかったんですよ。で、2話の方を載せたんです。編集がFAXでもらってたりとか、コピーで持ってたりとかすることもあるんですが、原稿ではないけどそれに準ずるもの、みたいな意識があるので原本を預かってもこちらでは保管せず、返しますね。

則松 若木さんは、ネームや原稿の途中の過程だったりとかを1話ごとに保管しているみたいですね。例えば、ペンの線画を取り込んでPC上で仕上げるときには、その線画原稿が残ってたりとかはありました。

 今回のネーム公開は、チュートリアル的なものとして、投稿者の方々にとっても恐らくすごく興味深かったんじゃないかなと思いますね。公開されている今のうちにぜひ一生懸命見ておいてもらいたいです。

若木民喜さんに聞く!

若木民喜さん 若木民喜さん

インタビューの中でも名前が挙がった藤田和日郎さん、若木民喜さんに、今回の新世紀少年サンデーコミックグランプリについての雑感と、漫画家を志そうという方に向けた特別なメッセージをいただいた。まずは若木さんのメッセージから(藤田さんのメッセージは次ページ)。


今回、『神のみぞ知るセカイ』の連載第1話ネームが公開されました。ここからどういったことを学び取ってほしいという思いがありますか?

tnfigcg8.jpg 若木先生の人気作「神のみぞ知るセカイ」の連載第1話ネームより(出典:ニコニコ静画)

若木 連載の1話目、特に新人の連載の1話目というのは、「自分にできることをどれだけコンパクトに詰め込むか」という勝負だと、ボクは思います。つまり、これから「この部分を毎週楽しみにしてくれ!」というおいしい部分を紹介するのが1話目。ページ数は連載になると減っていくわけですから、そのおいしい部分というのはできるだけコンパクトでなくてはならない。こういう考えで『神のみ』の1話は作りました。誰かが1話を考えるときの、参考になればよいのですが……。

新世紀コミックグランプリのゲスト審査員として応募作品をご覧になって、全体的あるいは注目した作品についてどのような印象を持たれましたか?

七海の623! 七海の623!

若木 最初の質問との関連で、「特徴」が既にはっきりしている方は積極的に評価するようにしました。ボクが1番に推した、『七海の623!』はあやういところが多々ありつつも、目を離せない……ギュっとした瞬間を感じました。

 特徴というのは、技術とか方法論ではなく、描き手の生き様や本質が表れている部分です。逆に言うと、作者の本質に結びついてない作品というのは、どれだけ絵が巧かろうが、物語がスムーズで完成度が高かろうが、連載を続けて読者を増やしていくことはできない。そう、思います。

若木先生のアシスタントからは数多くの才能ある漫画家が生まれています。どんなことを念頭に置いて教えているのか、漫画家を目指そうとする方に向けてメッセージをお願いいたします。

若木 これも質問1、2で言ったこととつながってるのですが……、自分の仕事場に入ってる漫画家志望のスタッフには「自分が何者なのか、何者だったのか、思い出そう」と言ってます。優れた漫画を読んで勉強するのと同時に、自分と向き合う。

 よく「自分に向いてるものって何か、考えてます」とか言ってる人がいますが、本当に得意なものというのは、考えなくてもポンポンわき出るような部分のことをいうのです。ボクの場合は、自分がいつまでも話せるのは、ラブコメ話とゲーム論だったわけです。そしてそれはどんな人でも1つは持ってるものです。だから誰でも1回は連載できる、とも言っています。自分に向き合いましょう。


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