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» 2013年07月22日 12時00分 UPDATE

「リアル書店へのインフラ提供が今後の大きなキー」――Kobo1年の総括とこれからの施策

楽天子会社のKoboが日本での事業開始から1年を迎え、どのような進捗状況にあるかを共有するセッションを開催。下半期の施策は「ユーザーのライフタイムに着目した育成プラン」の企画実行。

[西尾泰三,ITmedia]

 楽天は7月19日、子会社のKoboが運営する電子書店事業が日本での事業開始から1年を迎え、どのような進捗状況にあるかを共有するセッションを開催した。

イーブックジャパン事業長の舟木徹担当役員 イーブックジャパン事業長の舟木徹担当役員

 イーブックジャパン事業長の舟木徹担当役員は、日本でのビジネスを開始して1年目の感想として、「サービスを立ち上げて3カ月くらいは、さまざまな点で反省すべき点が出てきたが、その後、着実に改善していけた9カ月だった」と振り返る。そして、「まだまだ電子書籍のマーケットは本格展開していないという印象。プロダクトライフサイクル上の導入時期だと思う」と話す。

 そして、成長期へのターニングポイントとなるのは、技術がひとつの方向に収束した後であり、Koboが率先して取り組んでいるEPUB 3の普及が鍵だという見解を示し、それまでに基礎的なサービスをしっかりと作っていくのが務めだと考えていると話した。

 その後複数名から説明された進捗状況によると、koboイーブックストアの日本語コンテンツ数は7月18日時点で14万9666点。ジャンル別の販売構成では、Android/iOSアプリのリリース以後はコミックの売り上げが顕著に伸び、2012年度は全体の41.3%だったコミックの販売が直近3カ月では72.6%に達しているという。また、コンテンツの販売金額では毎月20%以上の成長を継続しているとした。

 次に、紙と電子で同時発売した場合の影響について、講談社の『進撃の巨人』とみられる作品の楽天ブックスおよびkoboイーブックストアでの売り上げデータから紹介。紙から3カ月遅れで電子版が発売された9巻と、同時発売された10巻では、電子書籍が紙書籍の効果的な販促となり、相乗効果で売り上げが伸びたと説明した。別記事「電子書籍をめぐる10の神話 〜本格的発展のためにいまやるべきこと、考えるべきこと〜」の神話3で紹介した内容を支持するものだともいえるが、こうしたデータを示すことで出版社の懸念を払しょくし、同時刊行や共同キャンペーンを促す意図もあるとみられる。

 イーブックジャパン副事業長の田中はる奈さんは、koboイーブックストアの利用者属性などを紹介。koboイーブックストアユーザーの男女比率はおおよそ7:3(正確には男性72%、女性28%)で、直近ではサンリオの人気キャラクター「ハローキティ」とコラボしたスリムケースのように女性向けアクセサリーの販売を強化したことで、女性比率が増加傾向にあるという。

 年代別利用者では40代が全体の35%でトップ、30代の31%、50代の17%がこれに続く。Koboのユーザー数は数字こそ出なかったものの、過去6カ月で約2倍になったという。グラフでは専用端末のユーザー数の推移はほぼ横ばいで、アプリのユーザーがユーザー数増に大きく貢献していることがうかがえる。専用端末については「ギフト需要などで満足度は高い」とした。

 利用者の傾向を分析し、セグメント化したところ、幾つかのセグメントに分けられるが、中でも「小説好き」「マンガ好き」のセグメントが大きく、それぞれ「専用端末で活字を読むシニア層」「アプリでたくさんマンガを読む若者」という傾向が強く出ていることを紹介。前者はクーポンなどのインセンティブキャンペーンにはあまり反応せず、デスクトップアプリまたは端末からの直接購入が7割以上、後者の月間講買冊数は前者の2倍で、アプリユーザーも多いといった特徴があるという。こうしたマンガ好きセグメントの大きさを鑑み、コミックのビューワ部分は独自開発することで、読書体験の向上に努めていることも明かされた。

tnfigkobo1.jpg 利用者分析から明らかになった2大セグメント

 2013年下半期の施策は、「ユーザーのライフタイムに着目した育成プラン」の企画実行。これを端的に言えば、楽天ブックスとの統合を進めるなどいわゆる楽天経済圏からの新規顧客獲得を促進し、CRMの活用やユーザビリティの改善などでリピート率を高めヘビーユーザーにしていくことを意味する。楽天ブックスとの統合、検索エンジンやレコメンドロジックの改善、カナダの企業のものだという新しいタイプのCRMメールの採用などが具体的な施策として紹介された。

tnfigkobo2.jpg 下半期の施策
tnfigkobo3.jpg サイトについては検索アルゴリズムの改良で、より目的に合致したコンテンツを見つけやすくする考え

 一方、量販店や書店との関係については、端末販売のマージンに加え、コンテンツの売り上げもレベニューシェアするモデルを日本でも開始し、オフラインでの販売促進施策を強化していくことを改めて説明。販売台数に応じてレベニューシェアの割合が変化するモデルであるという。

 Koboではサービス開始1周年を記念し、全作品を30%オフで提供するキャンペーンを期間限定で実施しているが、発表翌日にはAmazonが同様の施策を実施するなど、激しい戦いが続いている。舟木氏は「こうした施策は新規ユーザーを獲得するためのイニシャルコストであり、自らがまず血を流さなければならない」とし、競争は好ましいことだとしたが、競合であるAmazonと大きく水をあけられているのではないかという質問について、「紙と電子、Eコマースと電子書籍が切れていた部分が最大の原因だと思っている」と話す。

 つまり、Amazonは紙書籍のEコマースとKindleストアを自然な形で融合させているのに対し、楽天Koboはそれができていなかったということだ。だからこそ舟木氏はkoboイーブックストアと楽天ブックスとの融合を図ることでそれを改善していこうとしているわけだが、これは突き詰めて考えれば、Eコマースのユーザーをどう増やしていくかという命題にもぶつかる。これに対し、舟木氏は以下のように述べた(ただし大阪屋に関する話はなかった)。

 「書籍の取り扱い規模でいえば、(Amazonと楽天では)現時点で恐らく10倍くらいの差があるため、(電子を含めた)書籍の部分だけで勝負していくのは厳しい。それを認めた上で、Eコマースのユーザーをどう増やしていくかという観点では、リアルの書店に目を向け、彼らのECや電子のインフラとしてシステムや物流を提供していくことが1つの大きなキーになると考えている」(舟木氏)

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