出版業界で先週起こった出来事をまとめてお届けする週刊連載。ブックフェアなどが開催された7月第1週は、さまざまな発表が相次いでいます。
7月5日、文化審議会著作権分科会の第5回出版関連小委員会が開かれ、中山提言を中心に議論。同氏が提言している「当事者の特約により、特定の版面に対象を限定した上、その複写利用などにも拡張可」は、日本漫画家協会や日本美術著作連合、日本写真著作権協会などの各団体のほか、多くの委員が反対。
提言者のひとりの金子敏哉委員は「著作者のオプションを拡大するもので、不利な面はない」と強調した。企業内複製の条項は除外の方向へ。
7月4日、日本文学振興会が発表した。選考会は7月17日、東京・築地の新喜楽で行われる。候補作は次の通り。
いとうせいこう『想像ラジオ』(河出書房新社)
戌井昭人「すっぽん心中」(新潮1月号)
鶴川健吉「すなまわり」(文學界6月号)
藤野可織「爪と目」(新潮4月号)
山下澄人「砂漠ダンス」(文藝夏号)
伊東潤『巨鯨の海』(光文社)
恩田陸『夜の底は柔らかな幻』(文藝春秋)
桜木紫乃『ホテルローヤル』(集英社)
原田マハ『ジヴェルニーの食卓』(集英社)
湊かなえ『望郷』(文藝春秋)
宮内悠介『ヨハネスブルグの天使たち』(早川書房)
日本出版インフラセンター(JPO)と出版文化産業振興財団(JPIC)が実施する「フューチャー・ブックストア・フォーラム」の第3期が7月2日、始動した。
(1)「電子書籍販売環境整備分科会」と、(2)「魅力的な書店作り環境整備分科会」を設置。(1)では、書店店頭での電子書籍・端末の販売、電子書店とリアル書店のシナジー効果の検証などを行っていく。(2)は、責任販売制の検討がメイン。弾力的運用による書店の粗利向上と返品削減の可能性を模索する。
当日は相賀昌宏(小学館)、野間省伸(講談社)、角川歴彦(KADOKAWA)、平林彰(日販)、藤井武彦(トーハン)、高井昌史(紀伊國屋書店)、工藤恭孝(ジュンク堂書店)の各社長ほか、印刷会社、業界団体のトップ、来賓として経産省の佐合達矢氏など34人が出席した。会長は引き続き肥田美代子氏(JPIC理事長)。
7月3日、第40回書店未来研で野間省伸社長が発表。書店の労力・経費削減などで側面支援する。出荷時の体裁はコードをシール対応、スリップレス。「KCコミックス」から順次導入し、2〜3年後に全シリーズに拡大する。
また、上半期の売上高について、雑誌が「週刊現代」や「ディズニーファン」など、書籍が『海賊とよばれた男』など、コミックスが「進撃の巨人」などが好調で前年並みを確保と報告した。
7月1日からの「新潮文庫の100冊」フェアに合わせ、新タイプの読書推進・販売促進キャンペーンを始動。 作家や音楽家、俳優、大学教授ら推薦者108人の「心に残った一行」を載せた冊子を書店店頭に設置したほか、 推薦者の「ワタシの一行」と感想文で構成するキャンペーン帯でフェア感を演出、大型ポスターも作製した。
推薦者の“生の声”を触媒として、読者に新たな「文庫の読み方」を提案し、店頭販促にもつなげる。
キャッチコピーは「あなたの一行に出会おう」。
同日、記者会見で新潮社の佐藤隆信社長は「愛されてきたYonda君もデビューから15年。毎年同じことの繰り返しで、 読者もメーカー側の仕かけに反応してくれなくなった。年間を通じた読書運動として育て、日本中が読書好きになると 確信している」と話した。
同ネット書店を運営するHONは7月1日から、ネットプロテクションズの未回収リスク保証型の「NP後払い」を導入し、支払や配送サービスを強化する。HONではこれまで、クレジットカード、代引ならびに前払い決済を採用していたが、前払い決済では、入金確認するまで発送できなかった。
しかし、ネットプロテクションズで、利用者が購入した商品代金を立て替えてHONに支払い、購入者への請求業務、入金確認を代行して行うことから、利用者は商品受取後に、コンビニエンスストアなどでの後払いが可能になった。4月からテスト稼働していたが、利用者の評判も良く本稼働に移った。
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