―― ギリギリのところを攻めたいというのがテーマ設定としてあったかと思います。
横山 何回か踏み越えたような気はしますね(笑)
國澤 私と横山さんは「ここはギリギリ大丈夫」という感覚なんですが、書店さんと作品の話をするときに、「いや、とっくに越えてますよ」と言われたり(笑)。
最初に決めたラインは、「個人攻撃はしない」「どのネタもネットで調べれば誰でも分かる情報の範囲でやる」の2つです。私たちしか知らないような、公開しちゃまずいような情報ではやらない、としています。
横山 知ってること全部書いたらまさに発禁(笑)。基本的には漫画家さんの味方というか、立場で作品を作ってます。
―― 出版社、書店からの反応はどうですか?
國澤 いわゆる抗議的なものを直接受けたことはないですね。
横山 好意的な意見の方がはるかに多いですよね。一迅ちゃんをネタにしたら、Twitterで一迅社の社長さんがそれをリツイートしていただいたりとか。あとは漫サンちゃん、というか実業ちゃんのネタを出したら、公式アカウントでも言及いただいたりして。
國澤 少なくとも怒ってる人の声はあまり聞こえてこないですね。面白がってる人の方が、出版社も漫画家さんも書店さんも多いんじゃないかな。ただそれでも、聞こえてこないからよいというものでもないので、単行本を出す際には編集長よりもっと上の人間から、「一回ゲラをチェックさせろ」と言われましたね。ほとんど直しが入らないんで逆にびっくりしましたが(笑)
―― まだ本作には登場していない出版社で気になるところはありますか?
横山 気になっているのは、徳間書店。徳間ちゃんなんですけど、いまだにどう料理してよいか分からないまま2巻に入っちゃった感じです。いつか出そうかと思ってるんですけど、やっぱり歴史ある出版社ですから。
―― ゼノンとリュウが……いやその話は脇に置いておいて、今後、出版社以外の擬人化キャラが登場するようなこともあるんでしょうか。
横山 今のところスクエミちゃんがらみでゲーム会社の子の名前だけ電話口で登場したことがありますが、あくまでおまけ的な存在ですね。単行本の特典用として、各書店さんの擬人化キャラを出そう、という話もありますが、これもやっぱりおまけ的な感じで。本編ではないかな。
國澤 特典などで出すにしても、出版社の擬人化したキャラクターがいる中学、高校が舞台なので、ほかの中学・高校などとの絡みといった形かなと。
―― ところで、愛着があるキャラを一人挙げるとしたら?
横山 小学ちゃんじゃないかな。
―― ふたばちゃんじゃないんですね(笑)
横山 ふたばちゃんもはじめは無個性だったんですが、親族がエロ系だとか、本人も一回エロ方面に行ったりとか、そういういろいろな要素が後から追加されて、いいキャラになってきたなと思うんです。でもやっぱり一番人気があるのは小学ちゃんかな。嫁さんも多分、好きだよね、小学ちゃん。
加藤 うん。結構。意地悪な感じが(笑)。
―― 双葉社はマンガ出版社としては個性が薄いとほかのインタビューで聞いたことがありますが、ふたばちゃんの個性が出てくると双葉社のカラーにもなりそうですね。
横山 それはどうですかね。結局、属性としてエロとギャンブルが追加されただけですから(笑)。
國澤 逆に、ふたばちゃんを主人公にできたのは、ほかの出版社さんよりキャラがないから、視点としてのキャラクターが成立するというのはありますね。
横山 そうですね、つっこみ側として。
國澤 ほかの子たちが主人公だったら成立は難しかったと思います。秋田ちゃんが主人公だとほかのキャラクターと混ざるのがちょっと難しかったとか。それこそ、ふたばちゃんのベースが無個性キャラというのは、実際に対する皮肉で戒めなので。だから、双葉社といえばこのマンガ、というのが見えてきて、ふたばちゃんのキャラクターがそのことで付加されるようなことになれば理想的かもしれません。
―― こうしてお話をお聞きしていると編集者の國澤さんと二人三脚、いや三人四脚か、で作り上げられている印象がありますね。編集者と作品を作り上げていく作業についてもぜひ伺いたいなと。
横山 僕は結構頼る方なんですよね。これまでさまざまな編集者さんと会いましたが本当にいろんなタイプの方がいます。僕が一番重要視するのは、「連絡が早くて」「的確なアドバイス」をくれる方。やっぱりそういう編集者の方が仕事につながりますね。どう思う?(奥様へ)
加藤 私は……一所懸命な編集さんが好きです。片手間な感じの方とか、たくさんいますから。片手間な方はだれに対しても片手間で、一所懸命な方は誰に対しても一所懸命なんですよね。人柄じゃないかな。
―― さて、6月28日発売の単行本第1巻ですが、出張版含めWeb上で無料公開しているもの、それに描き下ろしも収録されているんですよね。Webで無料公開し、紙で収益を上げるビジネスモデルでしょうから、本当の勝負どころになりそうですね。
國澤 はい。単行本の発売にあたって加藤さんにいろいろやっていただいたので、このインタビューでも少し出てきた創作秘話と、あとがき漫画などボリュームたっぷりに仕上げています。Webで全部読んだ方も楽しめるネタはたくさんあります。
横山 セリフもちょこちょこ変わってたりするんで。序盤のキャラがちょっと違ったりというところもあったので。
―― WEBコミックアクションで掲載しているものは、単行本発売後も読めるんですか?
國澤 単行本発売に際して収録分(24話まで)は第1話以外一回外します。収録分より先、今回でいうと25話以降はそのままです。
―― いつかこの作品でネタとして扱う日が来るかもしれないような出版業界で面白いと思った動きはありますか?
横山 KADOKAWAの合併の話や、コアマガちゃんの騒動は、もうネームで書いちゃってて、達成感がありますね。
―― それでは、最後に、読者の皆さんへのメッセージで締めたいと思います。
横山 漫画好きの方は、ものすごく楽しめると思いますが、そんなに詳しくない方でも、何となく面白いって思えるように作ってあります(笑)。ぜひ一度、少しでも読んでいただけたら、うれしいなと思います。フリテンくんのキャッチコピーじゃないですけど「100%笑える人もまた異常」みたいな(笑)。それに近いかなと。
加藤 誰が見てもかわいいと親しみを感じられるようなキャラクターデザインにしてるので、それぞれのキャラクターに絵的にもファンがついてくれたらうれしいなと思います。
―― ぜひこれは人気投票してみたいですね。
横山 小学ちゃんが1位じゃないかと思いますけどね〜。小学ちゃん、芳文ちゃんが強いんじゃないかなと。
加藤 私、秋田ちゃんもみんな意外と好きだと思うよ?
横山 で、ふたばちゃんが10位くらいに入って(笑)。でも、誰だろうなぁ……画報ちゃんとか全然だめだと思いますけど……
加藤 画報ちゃんねー。何であんな……(笑)
―― おっとそこまでにしましょう(笑)。ありがとうございました。
以下の書店では加藤さん書き下ろしの購入特典が付属。本編には未登場のキャラも? 書店に急げ!
7月10日(水)19時より「阿佐ヶ谷ロフトA」にて開催されるトークイベント「ネルヤナイト」に横山さんがゲスト出演して、2013年上半期の出版業界の動向と「飯田橋のふたばちゃん」について語ります。詳細は下記URLで!
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