少年は何を想い、兵士となったのか――翠星のガルガンティア『少年と巨人』レビュー

絶賛放送中のアニメ「翠星のガルガンティア」。主人公の前日譚である小説版ガルガンティア『少年と巨人』を紹介します。

» 2013年06月17日 17時10分 公開
[ラノコミどっとこむ]
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 TOKYOMXほかにて絶賛放送中のアニメ「翠星のガルガンティア」。遠い未来の世界において、宇宙に進出した人類は“人類銀河同盟”という組織を結成し、ヒディアーズと呼ばれる宇宙生物との戦争を繰り広げていた――。

 そんな人類銀河同盟の中で、戦うことしか知らずに生まれ育った少年・レド。この少年・レドが、宇宙の果てにある地球の“ガルガンティア船団”に不時着したことから始まった物語は、ガルガンティアの人々とレドの心温かな交流を丁寧に描き、やがて人間として大きく成長したレドが、世界の真実を知っていく……というストーリー展開で話題となっています。

少年は何を想い、兵士となったのか――翠星のガルガンティア『少年と巨人』レビュー!

 現在、序盤で見せた微笑ましい異文化交流物語から、世界の真実、核心に迫る話へと、怒涛の展開を見せている本作品。そんなガルガンの主人公・レドがガルガンティアにやってくる以前、人類銀河同盟での生活を描いた前日譚が、今回ご紹介する小説、翠星のガルガンティア『少年と巨人(ニトロプラス)』です。

 物語は、レドの人類銀河同盟での選抜試験から始まります。選抜試験を終えたレドは、幼年学校へと進学し、そこでミリイカ、ストック、ロンド、ドール、ライディといったクラスメートや、ジェンドというカウンセラーに出会い、さまざまな経験をし、やがて兵士として成長していきます。

 個人的に注目して頂きたいのが、クラスメートのミリイカとロンドというキャラクター。ミリイカはクラスメートの中で唯一の女の子。レドとともにクラス委員として日夜努力する彼女は、ハリーポッターでいうハーマイオニーのような真面目で気が強い優等生キャラクターです。

 そんな彼女とレドとの交流では、どこか甘酸っぱく、ほろ苦い関係を漂わせます。しかし物語の中盤、ミリイカは、彼女自身大きく変化せざるを得ない出来事を経験します。そこからの彼女の変化に注目です。

 そしてもう一人、ロンドというキャラクター。この小説をまだ読んだことがなく、アニメのみチェックしている方でも、彼の姿を見れば、あっ! と気づかれると思います。ロンドは、明確には語られてはいませんが、アニメ本編内でことあるごとにレドが思い出し、涙する相手、その人です。

 このロンドという少年、アニメ本編では数カットしか登場していない存在ですが、小説ではとても重要な人物として登場してきます。

 非力な者は同盟には必要ない、不適格者として淘汰されてしまう人類銀河同盟でのおきてから、病弱で淘汰されてしまっただけの存在なのかと思われるロンドですが、この小説では、そんなロンドのイメージを大きく変えるような描かれ方をしています。

 ロンドとの出会いや交流が、幼いレドにどういった影響を与えたのか。そして、ロンドはどういった運命を辿っていったのか。その真相はぜひ、小説本編で確認してください。

 悩みながらも徐々に兵士として完成していくレドと、人類銀河同盟という存在。小説を読んだ後に改めてアニメ本編を見てみると、それぞれの印象がだいぶ変わってきます。

 小説を読む前、アニメしか見ていない状態でのこの物語の印象は、“生粋の戦士として育った少年が、ガルガンティアといういままで自分が過ごしてきた世界とはまったく異なる環境で、戦士から人間として成長していく話”であったのが、“レドという少年が生まれながらに持っていた純粋な心を取り戻していく話”のようにも思えてきます。

 ただ、これは今現在のアニメの進行話数を見た段階での印象です。アニメ本編の物語が終わりを迎えたとき、小説で描かれた話はまた違った印象を与えることでしょう。

 それがバッドエンドでも、ハッピーエンドだったとしても。この小説を片手に、物語の行く末を見守っていきたいところです。

(評:ラノコミどっとこむ編集部/やまだ)

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