インタビュー
» 2013年06月11日 13時15分 公開

「取材をすると書くときに邪念が入る」――近藤史恵さんインタビュー (2/3)

[新刊JP]
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「『キアズマ』は『サクリファイス』の別の形での表現

近藤史恵さん 近藤史恵さん

―― それぞれに傷を持ち、葛藤している登場人物たちが、同じ部活で同じ競技に打ち込むことで衝突したり離れたりする様子は非常に読みごたえがありました。近藤さんはこの作品でどのようなことを描きたかったのでしょうか。

近藤 『サクリファイス』のころから考えていることではあるのですが、“自分が勝たなくても、エースが勝てばいい”というロードレースの考え方は、レースに出ていない人がレースに出ている仲間に“あなたが勝てばいい”という風に気持ちを繋いでいくことにもなります。そうやって互いの気持ちが交差して、つながっていくというのは『サクリファイス』からずっと書いていたことで、『キアズマ』で書いたことはそれの違う形での表現だと思っています。

 レースでは力尽きて完走できない選手もいますが、だからといって負けたわけではなく、その選手が働いた結果を受け継いでエースが勝っていくんです。ロードレースで起きるそういうことを人生に置き換えてみたらどうなるのかな、というのはこの作品を書く時に考えました。

―― 最初はエースだった櫻井が、どんどん正樹に追いつかれてしまう、というようなことは実社会でもありますよね。

近藤 ええ、作家の世界でもそういうのはありますしね(笑)。

 才能を持って生まれたのにモチベーションが低い人もいますし、モチベーションは高いのに才能がない人もいます。“天才VS努力家”っていうのはいろんな物語で使われていますし、永遠のテーマだと思うのですが、このお話ではそういう構図にはしたくなかったんです。

 主人公の正樹はどちらかというと才能があるタイプですが、だからって何も葛藤がないわけではありません。彼のように競技に対する気持ちがついていかないというのは、それはそれでしんどいことだと思いますし。エースの櫻井の方も素質があって、最初はすごく輝いているように見えますが、正樹にどんどん追いつかれていきます。才能とモチベーションを違う形で持っている二人っていうのを対照的に書きたいと思っていました。

―― 主人公の正樹ですが、才能がありながらもあまりスマートなタイプではないのが魅力的でした。

近藤 そうですね。なるべく類型的ではない登場人物を作ろうと思っていたので、正樹のように体格のいい主人公にしました。体格がいいとどうしても自転車を始めたら絞らないといけなくなるので、そういう面白さもあるかなと。

―― やはりロードレースは大きいと不利なんですか?

近藤 体が大きいとスプリントやタイムトライアルでは有利なんですけど、山登りなどでは筋肉の量が多い分負荷がかかってしまうんです。体が大きいとダメというわけじゃないんですけど、体重はできるだけ減らすというのがセオリーですね。

 ただ、スプリントは筋肉量がある方が有利なので、大柄で筋肉質な人が得意です。戦える場所がその人の適性によって違うのもロードレースの面白さです。

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