「2020年までに国内の電子書籍市場売上を1兆円規模に」――楽天Koboの事業戦略

楽天子会社のKoboが販売パートナー向け事業戦略説明会を開催。出版社と共有している目標や、今後の戦略の概要が語られた。

» 2013年05月22日 19時00分 公開
[渡辺まりか,ITmedia]

 楽天子会社で電子書籍事業を展開するKoboは5月22日、販売パートナー向け事業戦略説明会を開催した。説明会では楽天の三木谷浩史社長、Koboの マイク・サビニス CEO、マイケル・タンブリン CCO、WHSmithのフィル・マクネリー氏が壇上に立ちプレゼンを行った。

楽天 三木谷浩史社長

 冒頭、三木谷氏は4月4日に行われた出版社向け事業戦略説明会の内容を振り返り、出版社と共有している目標について説明。現段階では既刊ベストセラーの70%が電子書籍で購入できるが、この夏には80%までカバー率を高めていく考えであること、新刊本は紙と電子で同時販売を標準化すること、紙の全書籍の50%をめどに電子書籍化することなどを目標として掲げていることを紹介した。ベストセラーの電子書籍化は年内に100%達成したいという。

 また、同じく前回の説明会で宣言したように、2020年までに国内の電子書籍市場売上を1兆円規模にし、その半分のシェアを獲得したいと語った。

 加えてマルチメディア的な電子雑誌を作成したいという出版社も増えてきているので、魅力的なコンテンツ制作のサポートを強化すべく、仏アクアファダスを傘下に置き、電子書籍への移行をサポート、取り入れやすいツールを出版社のペースやスキルを考慮して開発、電子出版の全分野で、限りない創造をサポートしていきたいと説明。

 販売店とのパートナーシップについてはWin-Winになるよう、Koboはデバイスの開発、コンテンツの販売促進を提供。またレベニューシェアモデルを開始し、販売店との間で端末販売のマージンだけではなく、コンテンツ購入による売上の分配も行なっていくと説明(具体的な分配ロジックの説明はなかった)。販売店には電子書籍コーナーを設置したり、販売員を育成するなどして、デバイスの販売、koboブランドの認知促進をしてもらうようお願いしたいと締めくくった。

 続いてサビニス氏が登壇し、3年前から現在までのKoboの歩みを振り返り、現在のKoboでの購入者は190カ国以上におり、電子書籍販売ネットワークとして世界最大級だが、今後も拡大し続け、年間成長率100%を維持していきたいと抱負を述べた。

Kobo マイク・サビニス CEO
マイケル・タンブリ CCO

 タブリン氏は、著者との関係について、これまで出版社を介して著者にコンタクトを取ってきたが、これからは直接著者に訴えかけていく方針であることを明かした。その取り組みの一つが、昨年Koboが始めた個人出版サービス「kobo Writing Life」。日本ではまだ始まっていないが、現在112カ国で同サービスを使って個人出版している著者が存在しており、59の言語184カ国で作品が販売され、グローバルで売上高の10%が個人出版タイトルを占めているという。

今後は、小説などテキスト主体のコンテンツだけではなく、子供向けコンテンツや漫画にも注力し、リッチコンテンツ製作用の新ツールを用意して制作側にアピールしていきたい。
コンテンツのみならず、これまでになかったストア体験を得られるよう、この夏、電子書店も新しくする。すべては読者がより良い読書体験してくれるように(タブリン氏)

 タブリン氏の後、再び登壇したサビニス氏は、読書愛好家たちが最高の読書体験を得られるように、彼らの声を聞いて開発された端末が「kobo aura」であると説明(ただし、日本では未発売)。電子書籍リーダーとしては最高水準の高解像度を誇り、内蔵メモリも4Gバイトで大量のコンテンツを手軽に持ち出すことができる。同端末を投入した市場ではどこも成功を収めており、今後はカラー端末の投入も考えていると説明した。

 今後は、紙の書籍を購入するインフラが整備されていないインドの10億人という潜在的な読者層に働きかけていきたいとさらなる市場拡大に意欲を見せた。

WHsmith フィル・マクネリー氏

 最後に、WHSmithのマクネリー氏が登壇。同社のこれまでの歴史を振り返りつつ、Koboとのパートナーを組んでからkobo Shopブランドを2年前に立ち上げ、販売員を教育。店内にはWi-Fiが完備され、その場で端末だけではなく、電子書籍も購入できるため、好評を博している。8月までにはさらに150店舗を追加し、100万点の端末を売り上げる目標を立てていると説明した。


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