出版業界ニュースフラッシュ 2013年5月第3週

出版業界で先週起こった出来事をまとめてお届けする週刊連載。5月第2週は、著作権を議論する文化庁の文化審議会では、現行出版権の拡張を支持する動きが起こっています。

» 2013年05月20日 10時40分 公開
[新文化通信社]
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東野圭吾『真夏の方程式』(文藝春秋)がミリオン

 5月17日、4刷・10万部の重版を決め、累計100万部に達した。文春文庫『真夏の方程式』は同10日、初版30万部で刊行。直後から予想以上の動きで注文が殺到していたという。

 同社が刊行する東野作品の累計部数は1139万6000部。同書のほか、これまで文庫『予知夢』、同『容疑者Xの献身』、同『ガリレオの苦悩』がミリオンセラーとなっている。

明文図書、自主廃業へ

 5月13日、取引出版社およそ400社に対し、文書「自主廃業のお知らせ」を送付して、「この数年取扱高が大きく減少していることから、7月末日をめどに廃業する」旨を伝えた。資本金1000万円、社員30人弱。

 昨夏から業界内の他企業との提携や事業譲渡について水面下で交渉していた。しかし、話合いは不調に終わり、昨年11月に単独資本での事業継続が本紙に発表された。今年2月には東京・江戸川橋から再び神保町に移転。同社物流センターはOKCの2階を間借りしていた。1918年、三進堂として創業。法律・経済・経営・ビジネス書の専門取次として中核を担ってきた。

出版関連小委員会、5月13日に初会合

 文化審議会著作権分科会に設置された3小委員会のうち、「出版者への権利付与」を中心議題に討議する場として行われた。

 出版界からは金原優(書協副理事長)、堀内丸恵(同デジタル化対応特別委員会)、野間省伸(講談社)の3氏が委員会メンバーとして参加。事務局は出版者の権利に関し、(1)著作隣接権の創設、(2)電子書籍に対応した出版権の整備、(3)訴権の付与、(4)契約による対応の4案を提示。経団連の電子出版権の創設や明治大学知的財産法政策研究所(中山信弘代表)がまとめ、印刷文化・電子文化の基盤整備に関する勉強会(中川勉強会)が承認した現行出版権の拡張・再構成の提言(中山提言)などが説明された。堀内委員は「中山提言を支持」と発言。

 書協では出版者の権利に関し、出版界が目指してきた著作隣接権から出版権の拡大に舵を切った。

 出版者の権利は出版権の拡大の声が高い。8月までに7回の小委員会を開き、一定の結論を得て、来年の通常国会に提出する見込み。

日本出版学会、「雑誌ジャーナリズム」テーマに緊急シンポ

 5月11日、東京・千代田区の日本大学法学部三崎町校舎で開いた。ノンフィクション作家・佐野眞一氏が「週刊朝日」に寄稿した橋下徹大阪市長の出自をめぐる報道に端を発し、雑誌ジャーナリズムが現在抱えている問題について多角的な議論をしようと開催した。

 講談社「週刊現代」の藤田康雄編集長、文藝春秋「文藝春秋」の島田真編集長、新潮社「新潮45」の三重博一編集長、ネットニュース「NEWSポストセブン」の中川淳一郎氏が出席した。

 各氏は「雑誌ジャーナリズム」の言葉の使われ方に疑問を提出。島田氏は「(その)言葉は嫌い。使命感が先立ちすぎて(紙面の方向性が)悪者づくりになってる。一回捨てたほうがいい」とばっさり否定。中川氏は、ある週刊誌の記者バッシングを例に挙げ、「今は『雑誌ジャーナリズム(笑)』になっている。ちょっとでも悪いことを書くとすぐクレームがくる。ジャーナリズム界にはめんどくさい時代」と話した。

月刊誌「WiNK UP」(ワニブックス)、初の重版

 5月7日に発売した「WiNK UP」6月号が創刊以来初めて重版を決めた。創刊25周年、通算300号を記念した同号の表紙に人気アイドル・嵐を2年半ぶりに起用、品切れ店が続出した。通常号は14〜15万部を発行するが、今回は初版20万部。重版は3万部は同18日に取次搬入される。特別定価650円。

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