電子書籍の未来――独立系電子書店の死

日本の電子書籍市場ではまだ合併などの目立った動きは起こっていないが、今あるすべての電子書店がずっと存続すると考えるのは難しい。海外での市場動向からは何か参考になるものがあるだろうか。

» 2013年05月16日 08時00分 公開
[Michael Kozlowski,Good e-Reader Blog]
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 独立系の電子書店は経営的にギリギリで、現在のグローバル市場ではKobo、Barnes & Noble、Amazonに太刀打ちできない。2012年を振り返ってみると、Books on Board、The Book Depository、Bookland、Fictionwise、BeWrite Books、jMangaなど多くの電子書店が撤退に追い込まれた。これらの企業が立ち行かなくなったのはイノベーションの不足、ビジネスセンスの欠如、大手ストアが仕掛けた競争が原因だ。これから数年で、業界では合併が進み、大企業のみが生き残るだろう。

 独立系電子書店が倒産する主な理由はイノベーションの不足にある。ここ数年で倒産した企業のWebサイトを見ると、ある傾向に気づくだろう。全体的なサイトデザインはオープンからほとんど変化がなく、ユーザーインタフェースは貧弱。検索機能はお粗末で、求める作品を直感的に探しだすのは不可能だ。

 これらの企業はサイトの更新をせず、適切なサーチアルゴリズムへの投資を行わず、今日の目が肥えた顧客に訴求する新技術の採用も行わない。2013年に電子書籍を販売することに関して、時代遅れの現状維持を続けるのは、すぐにでも倒産に追い込まれることを意味する。

 独立系電子書店であり大手自主出版企業のSmashwordsは、古めのテンプレートとデザインが実際には有効だと認識している。数千人規模の個人出版著者を抱えるSmashwordsだが、同社は自社プラットフォーム上での独占販売といったクローズドなものではないスマートなビジネスを展開していて、例えばAppleは彼らの持つIndie Breakout Booksレーベルの書籍を多くの海外市場で販売できる契約を結んでいる。倒産した電子書店の多くは自社Webサイトを通じてのみ書籍の販売を行なっていた。

 ほとんどの独立系電子書店は、顧客に書籍を配信していないので、倒産しかけている。本が好きな人の大多数はPC Webからコンテンツを購入しているのではなく、iOSやAndroidに依存している。専用アプリへの投資は必須だが、いずれのストアもその足取りは鈍い。今年末までにタブレットの売り上げ台数はPCを上回り、電子書籍の売り上げは紙書籍を上回る。電子書籍に金を使いたい人は引きも切らないが、ターゲットとなる顧客にリーチできていないなら、それは電子書店側の問題が多分にある。

 独立系電子書店のWebサイトは従来の意味の書籍販売というよりも、できるだけ大規模な顧客へのリーチを優先すべきだ。業界には中小企業がやっていけるだけの余地があるが、ビジネスの方法には精通している必要がある。Facebook上での展開やソーシャルメディアに対応するHTML 5ベースの読書アプリの開発など、業界でやっていくために求められることは多々ある。少なくとも、静的なWeb 1.0の技術を利用して開発されたWebサイトは書籍販売を行うのに十分ではない。

 電子書籍市場が大規模になったころはゴールドラッシュのようだった。Amazon、Barnes & Noble、Appleは大きな利益を手にし始めた。何百ものWebサイトが追随し、ほとんど事業活動を行なっていないにもかかわらず、ホットな新トレンドに乗じて利益を上げようした。大企業がイノベーションを継続する間に、中小企業は市場が巨大化したことをようやく認識し始めたのだ。

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