出版社が倒産すると著者はどうなるのか

契約にサインするなら、出版社が破産申請した場合に備えて、著作権の保護と返還が確実に行われるようにしておくことが必須だ。

» 2013年05月08日 13時30分 公開
[Michael Kozlowski,Good e-Reader Blog]
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 大手出版社から紙または電子書籍を出版する従来の著者はさまざまな特典にあずかることが多い。書籍の販促活動を行い、ブックツアーを企画する専門の広報担当や、作品内容を洗練し全体をまとめ上げる専門の編集者もつく。著者として成功していれば本の前金を受け取れるかもしれないし、出版社にお金を払って本を売り込んでもらったり、著作権料を集金してもらったりできるかもしれない。

 しかし、出版社がつぶれたら、どうするだろうか。著作権取得から売掛金回収まで、これらは多くの人が時に直面する問題だ。

 Amazon、Kobo、Barnes & Nobleなど電子書籍再販者の存在によりブティック系出版社、自費出版社、大手出版社の経営状態は悪化しているし、中小書店と取引する古いやり方は危機に瀕している。著者は結果的に出版した作品が破産した出版社に所属していることを知る立場に置かれる可能性もあり、自分の権利がどこに所在するのか分からない。会社が清算されたり買収されたりした場合、どうすればよいだろうか。

 本質的には、著者は頒布権として知られる知的財産販売に従事する。ここで浮上する最適な疑問は、出版社が破産申請を行う場合、著作者の書籍に対する権利は返還されるのかどうかだ。

 会社規模によっては、出版社が破産申請してそれが承認されるまで4カ月ほどで済むこともあるが、ほとんどのケースではかなり長く掛かる。会社がどれだけ現金を所持しているか、何により大きな支払いが必要かをつかむために、収入源、支出、未払いの負債、財務諸表、税金還付など破産した出版社が申請しなければならない項目はとても多い。未払いの著作権料があれば、著者はある一定期間、自分の名前を債権者リストに連ねることになる。

 債権者になると決めたら、すべての利害関係者が集まる裁判所に出頭する必要がある。通常、破産管財人が出版社と債権者の間を取り持つために任命され、一次連絡先になる。大きな出版社になると、自分の分け前が欲しい債権者が多く存在するかもしれない。全員が宣誓を行い、未払いの負債と何が補償される必要があるのかについて説明する。

 その後、破産管財人はすべての資産を集め、清算し、債務履行計画を決定する。債務履行計画は担保権に基づいて債権者への返済を行うものだ。担保権が設定されている債権者に最初に支払いが行われ、担保権が設定されていない債権者がそれに続く。著者として、未払いの著作権料の支払いを受けられるのは最後の方で、返済額はもともとの金額のごく一部にすぎない。債権者として自分自身を保証するのに250ドルの手数料を支払わなければならないこともある。手続きの時間は短く、締め切りは早い。

 カナダ人の文筆家、スティーブン・ブラウン氏は『The Last Viking』という本を執筆した。これは評判の高い本で、The Glove and Mail、Kirkus Reviews、San Francisco Book Reviewで2012年最高の1冊に選ばれている。これで出版社が破産管財申請を行なっていなければ、夢がかなったと思うかもしれない。彼の広報担当者は解雇され、本は現在印刷されていない。幸運なことに、最終刷までの著作権料の小切手は受け取っていたが、本を求める人がいても、届けることができない。カナダ国内で現在入手できるのは2部だけで、重刷の見込みはない。このような場合、解決までに1年以上を要し、ひとまず電子書籍を作成したり、本をさらに印刷することはできない。ブラウン氏の人気は急上昇しているが、現金化できないのだ。

 通常、何らかの成功を収めている文筆家は著作権を再取得し、自主出版で自分の本を発行するか、ほかの出版社に鞍替えできるよう弁護士を雇うこともある。そのほかのほとんどの著者は裁判所職員を呼んでアドバイスを求めるか、インターネット上で情報を探すしかない。過去、法廷での争いを無視して、本を自主出版したり、その本の権利をほかの出版社へ売却した著者もいた。これは大規模な訴訟に発展したり、著者が業界のブラックリスト入りすることにつながる。

 究極的に、すべては法的契約・フレームワークに落ち着く。中小出版社と自費出版社はまともな法的書類を準備していないかもしれない。契約にサインするなら、出版社が破産申請した場合に備えて、著作権の保護と返還が確実に行われるようにしておくことが必須だ。これらの文書は複雑な裁判所手続きで容易に無効化されることもあるので、自分の弁護士に契約を締結させることが重要だ。

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