コラム
» 2013年03月12日 13時30分 UPDATE

HTML5ベースの電子書籍は電子出版領域を破壊する

HTML5ベースで制作することでプラットフォーム非依存とした電子書籍は果たして人気を博すだろうか。

[Michael Kozlowski,Good e-Reader Blog]
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 多くの電子出版企業は自社の電子書籍あるいはデジタルコンテンツ向けのスタンドアロンアプリを制作しようとiOSおよびAndroidといった特定プラットフォームにますます目を向けるようになっている。Amazon、Barnes & Noble、Koboといったオンライン小売企業で入手できる昔ながらの電子書籍フォーマットにも対応している。電子出版企業とオンライン小売企業は利益を稼ぎ出し、エンドユーザーへの売り上げを押し上げる流通システムを提供すべく一様にアプリを開発しているが、HTML5は電子出版業界に横行する現在のモデルを破壊しようとしている。

 昨年、Googleはブラウザベースの電子書籍として過去に公開した『20 Things I Learned about Browsers and the Web』のソースコードを公開した。アニメーション付きの本で、ページ送りアニメーションもすばらしい。ほとんどのコンテンツは高度なインタラクティブ性を備え、出版社は本の中で画像がドラッグされた場所に自動的に合わせて画像とテキストを簡単に挿入できる。電子書籍がさまざまなWebブラウザからアクセス可能となったのは革新的だ。専用アプリ開発を行う代わりに、Googleはタブレット、iPhone、コンピュータやそのほかのモバイルデバイスの既存プラットフォーム上で読書できる電子書籍フォーマットを入手可能にした。

 AmazonとKoboはすでにKindle Cloud ReaderKobo Cloud Readerを提供し、ここでHTML5を活用している。これらはまずiOS端末上で書籍購入と読書を可能にするために開発されたものだ。

 過去、Appleはすべてのアプリ内購買はiTunesを経由するよう求めるポリシーを導入した。それにより両企業はアプリ内でコンテンツを購入させる機能を外したが、より根本的な回避策として、アプリと同等に機能するフル機能のHTML5ベースのストアアプリを開発した。このソリューションが優れているのはアクセス性がiOS利用者を超えて高まったことで、それまでサポートしていなかったBlackberry Playbook、あるいはWindows 8など、さまざまなプラットフォームに対して完全な読書体験を提供できるようになった。

 正直にいうと、KoboとAmazonはCloud Readerアプリへの注目を集めようとしなかったので、それらの主流のプログラムにはなっていない。既存の専用アプリを利用する人の注意を強く喚起しなければ、多数のユーザーベースを獲得するのは難しい。

 電子出版業界全体は現在、急速に成長している。Penguinは前年の第3四半期と比較して35%売り上げが伸びたことを明らかにしているし、さらに言えば同社はRandom Houseと合併し巨大出版社を形成する考えだ。これは明らかに、経営資源の統合を図るものだが、Amazonといったオンライン流通企業相手の価格交渉力を手にするのも目的といえるだろう。この新巨大会社はより大きな支配力を得て、自社でHTML5ベースの書籍を開発し、自社Webサイトで販売を行うかもしれない。デジタル透かしを含めることで電子書籍の海賊版作成がより難しくなるだけでなく、ユーザーはどのプラットフォームでもWebブラウザを利用して購入した書籍を読めるようになるだろう。

 最近、最も対立する議論が展開されているのはDRMで暗号化された書籍と自由に共有できる書籍についてだ。AZW、EPUB、PRC、PDF、TXT、RTF、CBR、CBZなどさまざまな電子書籍フォーマットも目にする。これはKindleストアで本を購入して、後にNOOKや自分のPCでそれを読みたい一般的ユーザーをいら立たせている。現状では、Amazonで購入した書籍はほかの企業のデバイスで読むことはできない(アプリが用意されているなら別だが)。Barnes & Nobleから本を買って、Koboの端末で読みたければ、Adobe Digital Editionsといった複雑なソフトウェアを利用する必要がある。HTML5ベースの書籍を販売し、電子書籍リーダー、タブレットPCのWebブラウザを利用することで、より完全な読書体験を提供し、顧客がただ本を楽しむためだけに必要なマニュアルワークを削減するだろう。これはユーザーがさまざまな電子書籍フォーマットを利用するための従来の方法を完全に変えてしまう。

 HTML5書籍は広いプラットフォームに対して専用アプリをそれぞれ開発するために法外な金額を支払うよりもよほど意味がある。Blackberry、Meego、LinuxなどのOSで書籍購入、読書に利用している人にも魅力的なのではないか。間違ってほしくないのだが、HTML5ベースの書籍では出版社が自社コンテンツをより自由に管理でき、著者は自分のサイトに本を埋め込んで販売できるようになるだろう。1つのプラットフォーム、Web向けに開発を行うのは複数プラットフォーム向けに開発するよりも筋が通っている。

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