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» 2013年01月24日 14時00分 UPDATE

電子出版の難問――HTML5かEPUB 3か?

EPUB 3とHTML5、そのどちらが電子コンテンツを配信するフォーマットとしてふさわしいのか。

[Michael Kozlowski,Good e-Reader Blog]
Good E-Reader
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 2013年最初の大規模な出版関連イベントとなったDigital Book Worldが終わったばかりだが、同イベントに参加した多くの参加者とスピーカーが話題にしていたのは、EPUB 3とHTML5、そのどちらが電子コンテンツを配信するフォーマットとしてふさわしいかというものだった。業界の将来がどちらに掛かっているのかについての見解の一致は見られず、多くの独立系企業がそのどちらかのみにフォーカスしている。2013年、電子出版で主流となるのはEPUB 3だろうか、HTML5だろうか。

 ここ数週間で、KoboとBarnes & Nobleは2013年内にEPUB 3のフルサポート提供を開始すると発表している。これが意味するのは、両企業の電子書籍リーダー、タブレット、アプリが、音声・動画・ナレーション・インタラクティブ機能などマルチメディアに対応した電子書籍もサポートするということだ。ただし、出版社がコンテンツをEPUB 3で制作しなければ、その目的は達成できない。

 現在、米国市場でEPUB 3のサポートを表明している大手出版社はHachetteのみ。同社のケン・マイケルズCOOは最近、「Hachette Book Groupのゴールはデバイスやプラットフォームに関係なく最も魅力的な体験を、高品質な美学とエンターテインメントとともに読者にもたらしつつ、著者の作品をできるだけ幅広い消費者に届けることです。技術的な変化が目まぐるしい世界でこのゴールを実現するために、複雑なレイアウト、リッチメディア、インタラクティブ機能に対応する際にEPUB 3のような標準を業界は必要としています。EPUB 3はわれわれの出版プログラムにおいて刺激的な前進で、業界は完全にその潜在性を認識した上でこの重要な標準を採用しているので、読者にとっては大きな利益になるでしょう」と語った。

 タブレットで読書するユーザーが増えつつあるる傾向を考えると、EPUBは消滅すると主張するSPI Globalなどの企業がいる。一方、Book Industry Study GroupとIDPFはEPUB 3の華々しい未来について広告しているが、すべての企業の制作現場にEPUB 3の導入を働きかける以外のことは行なっていない。

 現在のEPUB 3の大きな問題の1つは、すべてのオンラインリーダーがそれをサポートしているわけではないことだ。Amazon、Kobo、ソニーといった大手企業は現在iOS、AndroidアプリケーションでEPUB 3を幅広く採用しているわけではない。iBooksでEPUB 3を最大限サポートしているAppleも、その広報活動は行なっていない。この問題の核心は、出版社がEPUB 3でコンテンツを配信する場合、コンテンツを読むためにアプリを利用するユーザー数を制限することになることだ。結果的にEPUB 2をベースにし、(EPUB 3が実現する)純粋なマルチメディア体験を台なしにしてしまう。

 そうした中、CSS3とHTML5はEPUB 3の正当な代替手段となる。専用のリーダーアプリを利用する代わりに、PC、Mac、Android、iOS上でメジャーなWebブラウザで読書できる。AmazonとKoboはすでにKindle Cloud ReaderとKobo Cloud Readerを開設し、既にHTML5を利用している。AmazonとKoboがこれらを開発した大きな理由は、Appleが昨年すべてのアプリ内課金をiTunesを通して行うように要求したためで、その制限を回避するためにiOS・Androidアプリと同等のフル機能を持つHTML5ベースのストアアプリを開発した。これにより、ほとんどのタブレットやスマートフォンで両企業の電子書籍プラットフォームが利用可能になった。

 HTML5ベースのリーダーアプリの中で現在最も利用されているのはKoboとAmazonのアプリだが、HTML5とCSS3を使ったコンテンツ制作環境が出版社側で十分に整っているわけではない。ただし、業界で標準的に使われているAdobe製品のうち、Adobe Publishing Suiteでは過去6カ月で数々のCSS3、HTML5プラグインが提供され、既存データからの変換を容易にしている。

 HTML5ベースのリーダーが持つ最大の利点は、EPUB 3/HTML5形式の電子書籍を両方表示できることだ。プラットフォームにとらわれないHTML5ベースのリーダーを開発する独立系スタートアップであれ大手企業であれ、長期で見れば投資するのにより容易なシステムといえる。専用アプリに完全に依存することに未来はないが、Blackberry、iOS、Android、Windows、Mac、LinuxなどそれぞれのOS向けにアプリを更新するのも単純にコストメリットがない。特定のOS向けアプリを開発しないことで、顧客を遠ざけることになり大きな隔たりを作ってしまうことにもなる。

 出版業界の将来について明確な回答は存在しないようだ。われわれは専用電子書籍アプリの大きな後退、より多くの企業がHTML5ベースのリーダーアプリに投資しているのを目の当たりにしている。大金を投じて複数プラットフォームのアプリそれぞれに新機能を追加する選択肢と、HTML5プラットフォームを1つ更新する選択肢が用意されていれば、どちらを選ぶだろうか。

 どのプラットフォームに投資すべきか業界の足並みはそろっておらず、選択すべきファイルフォーマットについては不確実さの気配が漂っている。このことが、機能拡張された電子書籍に取り組んでいるのがBarnes & NobleとScholastic Storiaなど数社に限定され、それぞれが独自路線を採用する主な理由だ。

 流動的な業界のニーズに応えるために、Good e-Readerは現在プラットフォームにとらわれないHTML5、EPUB 3のどちらにも対応するクラウドリーダーと電子書籍クラウドストレージロッカーを開発中だ。電子書籍小売企業のすべての購入済み電子書籍を保存でき、フル機能のHTML5アプリを利用して読書できる。こちらでこのプロジェクトについてより詳細に説明しており、開発に資金面で協力することもできる。

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(翻訳責任について)
この記事はGood E-Readerとの合意の下でアイティメディアが翻訳したものです。翻訳責任はアイティメディアにあります。記事内容に関するお問い合わせは、アイティメディアまでお願いいたします。

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