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» 2013年01月07日 14時35分 UPDATE

「バラエティーがいじめ助長」に水道橋博士が反論

お笑いとは? という根本的な”お笑いへの哲学”にまでふみ込んだ水道橋博士著『藝人春秋』をレビュー。

[新刊JP]
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 学校や職場での“いじめ”が取りざたされるようになって久しい。今年夏に滋賀県・大津市で起きた中学二年生のいじめ自殺によって、この問題が再度クローズアップされたのは多くの人にとって記憶に新しいところだろう。

 ところで、メディアで「いじめ」が取り上げられるときに必ずといっていいほど出てくるのが、「人をいじめて、それを嘲笑するようなバラエティー番組がいじめを助長している」という論調で語られる“お笑い芸人たたき”だ。

 こういった意見が的を射ているかどうかはさておき、バラエティー番組に出演している当のお笑い芸人たちにほとんど反論の場が与えられていないのは、いささか不公平なのではないかと思える。

fhfigsj039.jpg 「バラエティーがいじめ助長」に水道橋博士が反論

 浅草キッド・水道橋博士は著書『藝人春秋』(文藝春秋/刊)の中で、この問題に真っ向から切り込んでおり、それは前記のような意見に対する芸人側からの反論だと読み取れる。

 お笑いは、本来、社会にむき出しに表出している“悪意”や“差別”を大人のように見て見ぬふりをせず、あえてあぶり出し、目の前で再現するもの“(本書257〜258ページより引用)

 つまり、“悪意”や“差別”といった、メディアによって、古くからその存在すら隠されてきたものを暴き、一種の風刺として演じることこそがお笑いなのであって、「バラエティーでの芸人がいじめを助長する」というのは彼らの芸の表面しか見ていないことになる。

 これは、同氏の師匠であるビートたけしの「最近のお笑いはいじめギャグばかりで、子どもがまねするからよくないっていうけど、お笑いは昔から予定調和のいじめギャグで笑わせてきたんでさ。そういう言い方ならオイラなんか全部いじめギャグで食ってきたんでね」(本文より引用)という意見と根を同じくするのではないか。

 しかし、こういった風刺は、テレビの中での“お笑い”のヒエラルキーが低かった昔の話であり、“お笑い”が単なるサブカルチャーの一種からメインカルチャーの位置に登りつめた今、その影響力を考えると彼らのお笑いへの哲学を素通しすることはできないのも事実。

 博士は本書の中で「たけしさんがやったことは逆説なんだってことに気づかないといけない」とする太田光(爆笑問題)の意見を引用し「バラエティー番組はいじめを助長するのか」という議論とともに、芸人たちはお笑いのありかたを考える時期に来ていることを示唆している。

 本書は、古舘伊知郎(フリーアナウンサー)、堀江貴文(実業家)、甲本ヒロト(ミュージシャン)ら、水道橋博士が長い芸歴の中で出会った人々の人物伝。華やかな一面だけでなく、ふと垣間見える彼らの陰の部分にまで切り込んだ同氏の話術や、それを見事に表現する筆力は、読む者を大いに笑わせ、泣かせ、最後には感動させずにはいられないはずだ。

(新刊JP編集部)

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