それは“ライブ会場”のような電子書籍――「ぷよぷよ」米光氏らが作る「電書カプセル」とは(1/2 ページ)

「ぷよぷよ」などを生み出したゲームクリエイターとして知られ、近年は電子書籍関連の取り組みにも積極的な米光一成氏らが、iPhone向け電書アプリ「電書カプセル」を近く公開する。阿佐ヶ谷ロフトAで行われたお披露目イベントの様子を紹介しよう。

» 2012年12月13日 11時19分 公開
[山田祐介,ITmedia]
photo ゲームクリエイターの米光一成氏。執筆活動も盛んに行い、ライターの育成にも力を入れるなど、幅広い分野で活躍している

 大ヒットゲーム「ぷよぷよ」を作ったゲームクリエイターとして知られる、立命館大学映像学部教授の米光一成氏。対面で電子書籍を販売する「電書フリマ」を開催したり、「電書雑誌よねみつ」をサイト上で実験的に販売したりと、近年は電子書籍関連のプロジェクトを積極的に手がけている。

 そんな同氏が監督を務めるiPhone向け電子書籍アプリ「電書カプセル」が、App Storeで近く公開される。同アプリの大きな特長は、販売したコンテンツを書き手がいつでも追加・修正できる点。「読むたびに中身が増えている魔法の本」(米光氏)を、アプリを通じて配信するというのだ。開発陣たちは「ライブ会場」のようなコンテンツ体験の創出を目指しており、コメント機能を使って作者と読者が交流できる仕組みもアプリ内に用意。読者とのコミュニケーションを通じて書き手が作品の内容を決めていくといったこともできるという。


photophoto 「電書カプセル」のアプリ画面イメージ。アプリで読みたい「カプセル」を入手し、コンテンツを内蔵ビューワで閲覧できる

 米光氏はかねてから「電子書籍」ではなく「電書」という言葉を使い、デジタルならではの手軽で柔軟な作品発信に思いを巡らせてきた。電書カプセルには、そんな同氏の考える“電書らしさ”が込められている。12月7日、阿佐ヶ谷ロフトAで米光氏が開催したイベント「電書カプセルNight!」の第1部で、アプリの運営を担当するカイユウの代表・武田俊氏、プログラミングを担当した八田モンキー氏、UIデザイン担当の畦地翔太氏が、電書カプセルのコンセプトなどを紹介した。


photo 左からカイユウの代表・武田俊氏、プログラミングを担当した八田モンキー氏、UIデザイン担当の畦地翔太氏

イベントに参加するような感覚でコンテンツを楽しむ

 電書カプセルは、「カプセル」と呼ばれる電書コンテンツを無料あるいは有料でダウンロードし、内蔵ビューワで閲覧できるアプリだ。運営側により選ばれた作者がカプセルを制作しており、漫画やエッセイなどの読み物がラインアップされている。


photophoto デジタルならではのコンテンツ体験の提供を目指す「電書カプセル」

photo コメント機能によりファンと書き手との交流も実現する

 これらのカプセルは、アップデートにより「成長する」(武田氏)のがポイントの1つ。書き手は作品の内容をWebのツールから簡単に更新でき、例えば漫画を1日1コマずつ増やす、あるいは1週間に1話ずつ更新していくといった具合に、コンテンツの内容を順次拡充できる。また、カプセルに対してユーザーがコメントできる掲示板のような機能もあり、ファンからの意見を作品に反映させることも可能だという。日々の生活の中で徐々に変化するコンテンツを読者が楽しむ、そして、作品の変化に読者自身が関与していく――そんな「ライブ会場」的な体験を、電書カプセルは提供しようとしている。

 カプセルは無料配信に加え、アプリ内課金の仕組みを使った有料販売に対応。最新の追加コンテンツ分を無料にし、過去配信分を有料にするといった課金方法も可能になる予定だ。つまりコンテンツによっては、連載を無料で体験しつつ、気に入ればアーカイブとともに購入できるというわけだ。

 スマートフォンで読むことを前提に、コンテンツの見せ方にもこだわった。カプセルには紙の書籍のような「ページ」や「見開き」の概念がなく、基本的にスクロールで作品を読み進める。縦スクロールだけでなく横スクロールのカプセルを作ることも可能だ。デジタルデバイスに合ったコンテンツの見せ方を採用することで、短いコンテンツも水増し感なく楽しめるという狙いもある。

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