3万冊を扱う“本屋”になった「ニコニコ静画(電子書籍)」を使ってみたコメント数で本を探すのも一興(2/2 ページ)

» 2012年10月26日 14時37分 公開
[山田祐介,ITmedia]
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様変わりしたiOSアプリ

 iOSアプリは、単なるビューワアプリからストアアプリに生まれ変わった。まず、アプリを起動すると売り場の顔ともいえる「今週のおすすめ」画面が表示される。同画面には「ジャンプコミックス」「無料(新着順)」などテーマごとにコーナーが設けられ、それぞれ書影が並んでる。作品がたくさんあるコーナーは、書影エリアをスワイプすることで表示している書影一覧を切り替えられる。画面左上のアイコンをタップすると、操作メニューが出現。検索機能や購入した本の一覧などに、ここからアクセスできる。

 操作メニューの中には、公式ストア「ジャンプコミックス」の項目があり、ここでは集英社の新着作品や話題作のピックアップ、今後の入荷情報、作品リスト一覧などがある。ドワンゴはこうした公式ストアをさらに増やしていく方針だ。作品数の多い出版社がこうしたストアを展開してくれれば、作品を調べる際に便利そうだ。


photophotophoto 最初に表示されるのは「今週のおすすめ」画面(写真=左)。左上のアイコンをタップすると操作メニューが表示される(写真=中央)。アプリ内に出版社自身が展開する公式ストアの第1弾、集英社の「ジャンプコミックス」(写真=右)

 さて、同アプリの大きな特長が課金スタイルだ。大手電子書籍ストアのiOSアプリは、Appleの課金システムの制約を避けるためにストア機能を内包しないものが多い。一方、ニコニコ静画(電子書籍)では、Appleが提供するアプリ内課金の仕組みを使い、アプリから簡単に作品を購入できる。

 ただ、作品をアプリ内課金で直接購入できるわけではない。専用の仮想通貨「ニコ書券」を先に購入し、それで買い物をするのだ。アプリ内課金は1円単位の細かい価格設定ができず、本の価格を正確に反映できないため、こうした仕組みとなっている。ニコ書券は500円分から購入可能だ。ちなみに、このニコ書券はPCでの買い物には利用できず、またiOSアプリではニコニコポイントでの買い物ができない。PCとiOSでそれぞれポイントをチャージしなければいけないのは少々まどろっこしいが、それを差し引いてもアプリ内課金の利便性は高いと感じる。


photophoto メニューの「ニコ書券購入」で、自分にあった金額の書券を買おう

 本を検索したいときは、操作メニューにある「ジャンル検索」「キーワード検索」を使う。ジャンル検索では「少年コミック」といったジャンルを選んだ上で、新着作品を見たり検索キーワードを指定して作品を絞り込める。ちなみに、「すべて」というジャンルもあるので、全検索も可能だ。並び順は、「新着/コメント数が多い順/視聴数が多い順/マイリスト登録数が多い順」の4要素で変更できる。Web版にあった「コメントが新しい順」などは用意されていなかった。


photophoto ジャンルを指定した上でキーワード検索ができる「ジャンル検索」。コメント数の多い順などの並び替えが可能だ

 キーワード検索はインクリメンタルサーチに対応しており、キーワードを途中まで入力すると候補がリアルタイムに表示される。また、キーワード入力時には検索範囲を「コミック/書籍/雑誌/その他」の中から複数選べる。検索結果は「タイトル/著者名/シリーズ/レーベル」に分かれて表示されるので、例えば「あの著者/出版社の作品はラインアップにあるのかな?」といった時などは、キーワード検索を使うといいだろう。一方、キーワード検索には並び順の切り替え機能がないので、コメントの勢いなどを知りたい場合はジャンル検索を使ったほうがよい。


photophoto 「キーワード検索」はインクリメンタルサーチに対応(写真=左)。タイトルや著者名といった項目ごとに検索結果が出る(写真=右)

 作品ページでは、作品概要や著者などの基本的な情報に加え、作品の視聴者数やコメント数、マイリスト数などが確認できる。価格や販売形態がこの画面で分からないのは不便と感じた。また、イラストPOPの表示機能は今のところないようだ。作品ページ下部には関連書籍のコーナーがあるが、シリーズ物の続きが並んでいる場合もあれば、同じ著者の他作品があったりと結果はさまざま。せっかく著者や出版社やレーベルといった基本データが紹介ページに並んでいるので、そこをタップすると検索結果に飛ぶ、といった機能があると便利と感じる。


photophoto 作品ページの購入ボタンを押さないと価格や販売形式が分からない(写真=左)。関連書籍のコーナーはあるが、作者や出版社といった書籍データから作品検索に飛べるとさらに便利そうだ

 作品は購入する前に試し読みができ、「すぐに読む」ボタンを押せばビューワが立ち上がり、ストリーミングで作品の一部が読める。購入するとダウンロードが始まるのだが、この場合はダウンロードが完了してからでないと作品は読めない。ただし、バックグラウンドでのダウンロードが可能で、その間に他の作品を読んだりできる。ダウンロードした作品はオフラインでも読めるが、コメントはオンライン時にのみ表示されるようだ。「購入した、試し読みした作品をもう一度読みたい」といった時は、画面左上の操作メニューにある「ブックリスト」からアクセスできる。

 ビューワはスワイプでページがめくれ、画面を一度タップするとメニューが現れる。コメントが投稿可能な作品なら、メニューにある「コメント投稿」で流れるコメントや位置指定コメントが投稿できる。コメントが投稿されている場面では、画面を長押しすることでコメントが流れるので試してみよう。また、小説などのテキスト作品は、メニューの「設定」で文字の大きさや縦組み/横組みなどを変更できる。

photophotophoto ビューワでは画面の長押しでコメントが流れる(写真=左)。ビューワのメニューから「コメント投稿」を選択すると、投稿用の画面が現れる(写真=中央/右)

 使ってみた印象としては、Webは決済手段が充実しているし、iOSアプリはアプリ内課金で楽チンに作品が買えて、なかなか使いやすいストアだと感じた。ただ、価格情報がさっと分からなかったりと、改良を期待したい部分もある。

 また、ニコニコらしさの1つであるコメントがどれくらい盛り上がるのか、ニコニコ動画のように職人的なコメント投稿者が現れたりするのかは、まだよく分からなかった。有料作品では、やはり無料の場合に比べて“参加者”は減る傾向にある。ニコニコ的なコメントを電子書籍で手っ取り早く楽しみたいときは、まず人気の無料作品を見てみるのがいいだろう。今後の“ニコニコ的付加価値”の進化にも、期待したい。

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