しりあがり寿など有名漫画家15人が「ブラよろ」を2次創作――愛の大炎上パロディー祭り始まる

佐藤秀峰の『ブラックジャックによろしく』2次利用フリー化にともなって、しりあがり寿、西原理恵子、ダ・ヴィンチ・恐山など有名漫画家15人による創作作品の公開が始まった。

» 2012年10月12日 13時00分 公開
[西尾泰三,ITmedia]
ブラックジャックによろしく 佐藤秀峰

 しりあがり寿、辛酸なめ子、西原理恵子、ダ・ヴィンチ・恐山など有名漫画家など15人が2次創作を手掛けたらこうなった――漫画家の佐藤秀峰さんが8月に発表した『ブラックジャックによろしく』(ブラよろ)の2次利用フリー化が、今大きな動きになりつつある。

 電子書店「BookLive!」で10月12日から始まった「『ブラックジャックによろしく』にヨロシク! 愛の大炎上パロディー祭り!」。ブラよろの本編から作家が自由にコマを利用し、吹き出しの書き換えやコマの並び替えだけでなく、新しいキャラクターを書き加えるなど、さまざまな方法でパロディ作品を創作するこの祭り。毎週5名、合計15作品が無料配信される。ユーザーからの人気投票で「ベストパロディー賞」も選出する。参加作家と各週の配信予定は以下の通り。

10月12日配信

error403、しりあがり寿、辛酸なめ子、花くまゆうさく、マン臭キツ子

10月19日配信

和田ラヂヲ、カラスヤサトシ、平井太朗、西原理恵子、林雄司

10月19日配信

ヨシナガ、上野顕太郎、田中圭一、犬山紙子、ダ・ヴィンチ・恐山


 出版業界の慣習、あるいは構造そのものに、ずっと孤独な戦いを続けてきた佐藤氏。はた目にはドン・キホーテのように映ることすらあった。その軌跡は同氏の『漫画貧乏』などに詳細に描かれている。

 その間にも世の中では創作のあり方も変容を続け、例えば初音ミクに代表されるボーカロイドキャラクターの改変・二次創作を原則的に許可する「ピアプロ・キャラクター・ライセンス(PCL)」の登場により、ニコニコ動画などで二次創作の連鎖が起こったことはよく知られている。

 「ブラックジャックによろしく」はいわゆる商業出版物でなくなったことも今回の動きを可能にした背景にあるが、出版の世界でもそうした動きが起こってきたこと、そしてその動きに多くの有名漫画家が協力を惜しまず、二次創作でそれぞれの腕をみせていることは非常に注目される。この動きが出版業界で広範に定着するかはまだ分からないが、いずれにせよ今回、「ブラックジャックによろしく」が2次利用フリーとなったことは、出版業界に大きなインパクトを与えることになるだろう。

 ユーザーがそうした動きを支持する分かりやすい方法は、そうした作品を読む、ということになるだろうか。とはいえ、そう難しく考えなくとも、今回無料配信される作品は、どれも作家の個性が全開で、一読をお勧めできるものばかり(一足先にすべての作品を読む機会を得た筆者はダ・ヴィンチ・恐山さんの力の入れように特に驚嘆した)。この祭りは秋風に吹かれてよく燃え上がりそうだ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.