Jコミが、DRMフリーの電子書籍と複数の特典を付けたものを限定的に販売するモデルを採った「JコミFANディング」のβテストを開始する。
漫画家であり絶版コミックの無料配信サイト「Jコミ」を運営する赤松健氏は9月14日、自らのブログで、Jコミの新たなビジネスモデル「JコミFANディング」のβテストを9月15日12時から開始すると発表した。DRMフリーの電子書籍と複数の特典を付けたものを限定的に販売するモデルとなっている。
赤松氏はブログで、これまでのJコミでは多くの読者の「小さな善意」を集めるモデルで作者の利益(金銭や感想など)を最大化してきたと幾つかの取り組みを紹介。その上で、現状の一般的な電子書籍について、「ユーザーに所有感がない」「購買意欲が沸かない」などと指摘、それらを満たすモデルとして「JコミFANディング」をβテストするとした。
JコミFANディングという販売モデルのベースになっているのは、クラウドファンディングと呼ばれるシステム。海外では、Kickstarter.comなどが有名だが、何かプロジェクトを立ち上げる際、それに賛同する複数のファンなどから設定した目標額に達するまで出資を募り、まとまった費用を得るシステムだ。海外ではWebコミック作家が12年分の作品を電子書籍化するために出資を募り170万円以上を調達したり、手塚治虫の『ばるぼら』英語版の刊行資金を調達したなどのニュースも珍しくない。
JコミFANディングの場合は、いわゆる限定版の予約、という形態でクラウドファンディングを利用している。今回のβテストでは2作品について、定価2000円で50名募集をかけるが、そのうちの1つ、『ラブひな』パーフェクトPDFセットの内容は以下のようなものだ。
入手できるコンテンツは一般的な電子書店で販売されるようなDRMの縛りが強いものではなく、電子透かしを入れることで一定のセキュリティを担保したもの。これはハリーポッターシリーズの著者で、自らWebサイト「Pottermore」を立ち上げているJ.K.ローリング氏がPottermoreで取り入れているのと同じアプローチだ。また、PDFはJコミが無料で公開している広告入りではなく、広告が入らないものが用意される(解像度は縦1170×横827ピクセル)。目標額に達しない場合も、その商品は普通に全員に配布される。
Jコミで無料で読むことができるものも含まれるが、そこに付加価値となる特典――「コミックス未収録の読み切り作品」「記念サイン色紙」「下書き」など――を付けて、人数限定で売り出すというこのモデル。一度世に出たコンテンツを下敷きに、特典を付けた限定版としてコアなファンに届けようとする、作家と読者の距離が非常に近い取り組みだ。企画によっては、新作の出資を募る、といった流れも考えられるだろう。このβテストは9月15日12時から開始される。
「親しい友達にあげても良いし、広告が入っているわけでもない。まさに完全保存版」(赤松氏のブログより)
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