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» 2012年06月14日 13時45分 UPDATE

Book Expo America 2012まとめ

先日開催されたBook Expo America 2012(BEA 2012)。世界の電子書籍市場ではいまどんな話題が注目されているのだろうか。Book Expo期間中に行った取材のエッセンスと最重要ニュースについてまとめた。

[Michael Kozlowski,Good e-Reader Blog]
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tnfig295.jpg 左からGoodEReaderのピーター、マイケル、マーシー

Book Expo America 2012(BEA 2012)が終了したが、今回のイベントにはGoodEReaderのMercy、Peter、そして筆者が現地入りし、IDPFとBEA全体を総力取材した。

 今年のイベントで明白だったのは、電子書籍とテクノロジーの扱いが非常に小さかったことだ。Scholastic、Harper Collins、Harlequinのレーベル Karina Pressや大手6大出版社の大半はそれらをまったく取り上げなかった。企業幹部の一部に取材をしても、電子書籍部門から担当者を帯同させることすらほとんどみられなかった。それらの企業は電子流通が未来を左右すると騒ぐ割に、それを実際に示そうとはしていないとうことがよく分かった。

 以下ではBook Expo期間中に行った取材のエッセンスと最重要ニュースについてまとめた。

Kobo

 われわれはBook Expo前日の朝食会に招待を受け、そこで同社は「Writing Life」を披露した。そこにはケビン・アンダーソン氏といった著名な作家が招かれており、β版での経験を出席者と共有した。

 BEA初日にWriting Lifeについて、コンテンツ・営業・企画担当副社長のマイケル・タンブリン氏に取材した。この新プログラムによりユーザーは基本的にKoboのプラットフォームで自主出版でき、同社がカバーするすべての国々で自分の本を販売できる。

 最大の利点はユーザーに提供されるリアルタイム販売・統計情報だ。大半の自主出版関連企業は月末か4半期末にしかデータを提供しない。Writing Lifeにより、ユーザーは価格、表紙絵、マーケティングなど本の販売にとって何が効果的なのか短時間で試行できる。例えば、サンフランシスコをブックツアーで訪問しながら本の販売結果への影響を把握していないようなケースでは、Writing Lifeの情報によって以降もブックツアーを行うことに果たして価値があるのかを判断できるようになる。

 Writng Lifeは今後、数週間以内に利用可能になり、その後間もなく北米以外にも展開される。

Amazon

 AmazonはBEAでより大きな存在感を見せるだろうと思っていたが、CreatespaceとKindle Direct Publishingの関係者しか出席していなかった。本当はAudible、Kindle Singlesの関係者と話したかったのだが、ほかには誰もいなかった。

 Amazonは会議を利用し、自主出版向けのCreatespaceを利用して制作された書籍をKindle Direct Publishingへ投稿するように図る新プログラムをアナウンスした。

Barnes & Noble

 Barnes & NobleはBEAで公式ブースを構えなかったが、会議には何人かの幹部社員を送り込みメディアおよび出版社対応を行った。われわれはAndroid開発の責任者であるビジネス開発部長、スティーブン・マクドネル氏と会談した。

 マクドネル氏はBarnes & Nobleがなぜ4月にロンドンでイベントを開催したか、そして同社のストアでどの分野のアプリがよく売れているかについて事実関係を明確にする幾つかのポイントを説明してくれた。ロンドンのイベントは英国の開発者との会合のためで、NOOKアプリストアにアプリを投稿するように促す趣旨だったようだ。Flick Golfのような有名なゲームが同社のアプリストアに間もなく登場することが期待できるようだ。マクドネル氏によると、子ども向けアプリとライフスタイルアプリがよく売れているとのことだ。

 次に、Barnes & Nobleの電子書籍担当副社長、ジム・ヒルト氏に取材を行った。ヒルト氏はNOOK Glowの成功について、NFCに期待できることは何かについて、また同社の小売事業およびデジタル関連事業間のさらなるシナジーについて語ってくれた。

Disney

 出席者が非常に限定されたDisneyのイベントにも招待された。Disneyの代表者は映画『Brave』をベースにした新iPadアプリとMarvelの幾つかのアプリを披露した。

 存在感を放ったDisneyの発表で最も重要だと感じたのは、同社がいかにして高品質アプリを生み出し続けているかということだ。Pixar、Marvel、Disneyは互いにアート関連人材を融通しあっている。アプリの開発を決断すると、開発者には公開予定の映画の映像、キャラクターアート、サウンドライブラリー、コンセプトアートなど限りないコンテンツへのアクセスが提供される。

 Disneyによると、高品質のアプリを開発するのに平均で5カ月ほど必要だという。同社は全部門の人材を共有しているので短期間で多くの成果を上げられる。

Overdrive

 OverdriveもBook Expoに参加しており、マーケティング本部長のデービッド・バーレイ氏とのインタビューにこぎ着けた。Booki.shの買収について、それから利便性という点でHTML5ベースのオンライン読書アプリが転換点となったことについて長時間の取材を行った。

 書籍の検索を行ない、QRコードを利用してかなり容易に自分のデバイスへ転送できる新型タッチスクリーン端末も話題に上がった。バーレイ氏はOverdriveが参入しているすべてのマーケットで電子書籍貸し出しがどのように行われているかについて非常に興味深い統計を共有してくれた。同社と書籍を共有したがらない出版社の態度についても語り合った。

3M

 3Mクラウドライブラリーの責任者、トム・マーサー氏に取材した。マーサー氏は差別化要因となる自社事業について共有し、同社の進化の歴史の一部とOverdriveに対していかに競合するかについて語った。

 3Mの取り組みで重要だと感じたのは、図書館が3Mと協業するために必要なハードウェア投資について。図書館は3Mのタッチスクリーン検索端末に3500ドルほど、図書館利用者への貸し出しに利用する自社製電子書籍リーダーにはさらなる投資が必要になる。Txtrは3Mの電子書籍リーダーを提供しておらず、代わりに同社のPocketbook 612が3M製品として提供されている。Txtrは3MのAndroidアプリ開発を担っている。

電子書籍とフォーマット断片化

 電子書籍にかかわるSmashwords、Karina Press、Disney、Kobo、Intelなどあらゆる大手企業に取材を行った。1つ明らかとなったのは電子書籍がまだ未開拓で、一定の国際標準への同意がなされていないことだろうか。

 コンテンツ配信にEPUB、EPUB3、EPUB4、Kindle Format 8、HTML5、PDFとスタンドアロンのアプリが利用されている。LULUやBookbabyといった、電子書籍フォーマット変換サービスをうたう企業が跳梁跋扈し、電子書籍の国際標準が存在しないのは絶望的だ。

 標準が存在しないことでフォーマットが乱立し、例えばコンテンツをAmazonに最適化すると、それをベースにAndroidアプリを開発するのは難しい。EPUBのバージョンごとの違いとそれぞれの利点について知る人はほとんどいない。業界全体の取り組みとして必要なのはテキストベースの書籍と映像、音声、マルチメディアコンテンツが埋め込まれた書籍の国際標準だ。企業はテクノロジーへの適応に時間を取られ、コンテンツそのものに集中できていない。

まとめ

 BEAはデジタルという点では物足りなかったが、出会った人々は本当に素晴らしかった。形式的なインタビューを行う前に、取材する人の顔と名前を一致させたり、仕事について話したりするのは非常に面白かった。Barnes & Noble、Kobo、3M、Overdrive、Disney、Smashwordsの各社と何時間にもわたって、われわれのインタビューに回答したり、仕事の話をしてくれた大勢の方々に感謝したい。電子出版関連の諸問題の現状と電子書籍および流通の将来について語る人々の目に曇りがないのを目の当たりにして興奮した。

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この記事はGood E-Readerとの合意の下でアイティメディアが翻訳したものです。翻訳責任はアイティメディアにあります。記事内容に関するお問い合わせは、アイティメディアまでお願いいたします。

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