全国の書店で「この1巻がキテる!」――漫画「俺物語!!」って何だ?

今、全国の書店で漫画「俺物語!!」がプッシュされているのをご存知だろうか。少女漫画にもかかわらず、主人公はゴリラのような大男で、ただならぬオーラを放っている。「男性も読んで」と書店員が推薦する作品の魅力とは。

» 2012年06月13日 10時30分 公開
[山田祐介,ITmedia]
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photo 「俺物語!!」第1巻。表紙からすでに普通の少女漫画と違うオーラを放っている

 ヒットの可能性を秘めた作品をいち早く見つけ、全国の書店でプッシュをかける――そんな日本出版販売(日販)の「この1巻がキテる!フェア」が始まった。記念すべき第1回の対象作品は、集英社別冊マーガレットで連載している漫画「俺物語!!」だ。フェアは全国約1000店の書店で実施され、オリジナルPOPや配布用の描きおろし特典ペーパーが各書店で提供されている。

 この作品、少女漫画雑誌の連載ながら表紙に描かれているのはゴリラのような大男……そして帯には「絶対ホレるよ」の文字。普段あまり少女漫画を読まない筆者(♂)だが、得体の知れない雰囲気に引かれて作品を買ってみると……「これ、男が読んでも面白い」。というか、男性が持つ少女漫画のイメージにそぐわない“醤油っぽい男らしさ”満載の作品なのである。


photo 書店のPOPには「男性にも読んで欲しい」の文字

読んでみたら元気が出た

photo こんなにゴツイのに少女漫画の主人公です (C)アルコ・河原和音/集英社 マーガレットコミックス

 「俺物語!!」の原作は「先生!」「高校デビュー」などの人気作を手がけた河原和音さん、作画はドラマ化もされた「ヤスコとケンジ」などで知られるアルコさん。人気作家がタッグで贈る痛快ラブコメで、読み切りを掲載したところ好評を博したために連載になったという。

 表紙の大男の名は剛田猛男。寿司屋の板前か大工の棟梁(とうりょう)かという貫禄なのに、高校1年生らしい。しかも、身長はなんと推定2メートルで、「ゴリ(赤木)よりデケェのかよ!」と突っ込まざるを得ない。体のパーツの大体がデカイか濃いかゴツゴツしてる、いわゆるブサメンだ。力んだり何か口にほおばったりすると、すごい顔になる。特に1巻ラストは「こんな顔が少女漫画誌に載っていいのか」というレベルだ。うん、そりゃモテないよ猛男。

 と、思いつつ読んでみるとどうも違う。猛男はブサメンと言い切れないのだ。ジャニーズには入れないかもしれないけど、猛男には猛男のフェロモンがあるらしい。しかもこいつ、すげーいいやつ。不器用で、「僕」でも「俺様」でもない「俺!!」の道を突き進んでいて、女心は全然読めない。そんなもんだから、「猛男かわいいよ猛男」という気持ちがいつの間にか芽生えてしまう。

photophoto 初めてマカロンを食す猛男、絵文字にびっくりする猛男。いちいち面白い (C)アルコ・河原和音/集英社 マーガレットコミックス

 さらに、腹立たしいことに幼なじみのイケメン・砂川がこれまたいいやつだ。一見冷め切った俺様系のようで、実は猛男を暖かく見守っている。なんなんだこの2人の友情。「坂道のアポロン」もそうだけど、最近男の友情輝きすぎだろ。そして、彼同様に猛男の良さを理解する女性も現れて、ドタバタ純情コメディーが開幕する。

 猛男はどうすれば女性が喜ぶかをあまり分かっていない一方で、あざとさのかけらもない“俺”行動で女性をキュンとさせる。そう、猛男が女性の心をつかむのにはいちいちちゃんと理由があるのだ。「ブサイクがモテた」というシンデレラストーリーではなく、「一見ブサイクなんだけどモテる要素をきちんと備えている」というのが、この作品の真骨頂。アニメによくある“さえないのになぜかモテる主人公”を羨望(せんぼう)の眼差しで見つめていた筆者に、猛男は真正面から猛烈なタックルをしかけてくる。

 う、うじうじしててもモテないよね。そうだった! 分かってた!――笑いに笑って、元気がもらえる。「俺物語!!」はそんな漫画だった。

漫画好き書店員の間でも話題に

photo togetterにまとめられているTwitter座談会の様子

 日販のニュースリリースによると、「この1巻がキテる!フェア」の作品は「販売直後の売上率推移」や「特定の店舗・エリアでの局地的な販売数の伸び」など、さまざまな要素から作品の伸びしろをかんがみて選定するとのこと。「俺物語!!」については、「発売当初から書店員を中心とするマンガ好きの間で話題になり、積極的な店頭展開を行っていた一部書店で売れ行き良好だった注目銘柄」なのだという。

 こうした盛り上がりの一旦は、例えば4月に三省堂新横浜店が旗振り役となって「俺物語!!」のTwitter座談会を開催したことからもうかがえる。togetterのまとめを見ると、「俺物語!!」に対するさまざまな読者・書店員の思い入れが伝わってきて面白い。

 「どんな作品なのか気になる」――そんな人のために現在、別冊マーガレットの公式Webサイト上では「俺物語!!」の試し読みができるコーナーを設置中だ。興味がある読者は一度読んでみてほしい。

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