武雄市の新・図書館構想について日本図書館協会が見解を発表

佐賀県武雄市が公立図書館の運営をカルチュア・コンビニエンス・クラブに委託しようとしている動きについて、日本図書館協会が見解を発表した。

» 2012年05月30日 18時30分 公開
[西尾泰三,ITmedia]

 5月上旬、佐賀県武雄(たけお)市が公立図書館の運営をTSUTAYAなどを手掛けるカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)に委託、来年4月にオープンさせると発表したことは記憶に新しい。

 雑誌や文具の販売コーナーを設け、従来の図書利用カードの代わりにTカードで貸し出しを受けられ、さらにTポイントも貯まるなど、「重要な手段として展開する付属事業」によって市民価値の高い施設を作っていこうとする志の高い取り組みといえるこの動き。しかしその一方で、貸し出し履歴など図書館利用の情報が本来の目的以外に利用されることにつながらないかといった個人情報保護の観点からの懸念など、公共サービスである公立図書館のあり方として問題はないのかといった指摘も少なくない。

 現在武雄市では協議が進められており、6月中にCCCとの協定を締結・公表する予定だが、5月30日、日本図書館協会(JLA)がこの動きに対する見解を発表した。

 日本図書館協会は今回の動きを「図書館の運営上重要な課題」としているが、その中で大きく6点「解明されるべき」項目を挙げている。この中では、CCCを指定管理者とする根拠、そしてその選定プロセスに十分な説明責任が果たされていないと指摘。さらに、指定管理者の自主事業と委託事業(ここでは図書館事業)を混同しないよう求める総務省の指摘を支持しており、雑誌販売や文具販売、あるいはTカード、Tポイントの導入といった付属事業とされているものが本当に図書館サービスの改善に役立つのか、そしてそれはCCCの自主事業と混同されてはいないかを問うものとなっている。

 また、争点の1つとなっている図書館利用の情報については5番目に言及がある。利用者の個人情報(貸出履歴)は指定管理者であるCCCに提供される可能性があると指摘。図書館の管理・運営上の集積される個人情報は、本来の目的以外に利用されること自体を想定しておらず、「利用者の秘密を守る」ことを公に市民に対して約束している公共図書館の立場からは肯定しがたいとした。図書館運営と無関係に、指定管理者の企業の自主事業に活用するために提供できることか、慎重な検討が必要だと促している。

 厳しい見解が並んでいるが、協会ではこれらの解明を通じてよりよい図書館づくりとなることを期待し、そのための支援、協力を行う表明であると結んでいる。

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