Amazonと契約合意? 渦中の出版社に聞いてみた

Kindleの国内展開に当たって、学研ホールディングス、主婦の友社、PHP研究所がAmazonと契約に合意したとする報道。果たして真実は? 出版社に問い合わせた。

» 2012年04月17日 18時00分 公開
[西尾泰三,ITmedia]

 つい数日前、米Amazon.comのジェフ・ベゾスCEOが日本での電子書籍事業について年内に発表すると語った報道が話題となったが、それに関連する形で、朝日新聞社がAmazonと国内出版社がコンテンツの配信契約で合意したと伝えている。

 報道を要約すると、学研ホールディングス、主婦の友社、PHP研究所がAmazonとKindleの日本展開でコンテンツの配信に合意、また、合意した出版社は40社以上に上るというもの。「契約合意が明らかになったのは初めて」ともある。

 しかし、これらの報道を読むとすぐに気付くのは、「合意した・明らかになった」といった断定調の文体とは裏腹に、情報ソースに一切言及がない点だ。また、PHP研究所については昨年10月にも契約締結間近と報じたメディアもあった。しかしこうして再び名前が挙がっていることから、情報が錯綜している感がある。

 果たしてこれらの報道は事実なのか、今回名前が挙がった学研ホールディングス、主婦の友社、PHP研究所に電話取材の形で事実確認を行った。

 まずは学研ホールディングス広報。「本件に関する朝日新聞社からの取材は受けておらず、何に基づいた報道か不明。Amazonとの話し合いは行っているが、合意の事実はない。契約が成立していないから“合意”という表現にしたのかもしれないが、いずれにせよ事実と異なる」。

 次に主婦の友社。広報ではなく雑誌編集部の担当によると、「本件に関してお答えできることはない。事実かどうかについてもノーコメント」。

 最後にPHP研究所広報。「電子書籍は避けて通れないものという認識で前々から社として取り組んでおり、Amazonに限らず交渉を行っているが、合意の事実はない」。

 ノーコメントとした主婦の友社を除けば、学研もPHP研究所も契約締結または合意に至った事実はないという回答を得た。とはいえこうした交渉が継続しているのは間違いないようだ。Amazonのジェフ・ベゾスCEOが年内に何らかの発表を行うと明言したのも、それまでに一定の存在感を出せるコンテンツ数はそろえられるという見通しがあるからにほかならない。なお、米国でKindleがサービスインしたとき、コンテンツのラインアップは約9万タイトルだった。

修正履歴:ジェフ・ベゾスCEOの発言について、「年内にサービスイン」ではなく「年内に発表」と修正しました。


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