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» 2012年04月13日 13時00分 UPDATE

eReading Maniacs――「電読」の楽しみ(3):「電子書籍」サービスを選ぶときに考えること (1/2)

百聞は一“読”にしかず、論ずるより“読”むが易し。「電子書籍」の未来は、その読者によってこそ語られるべき――。売る側の論理ではなく、読み手の論理で「電子書籍」を考える本連載。今回は、「電子書籍」というコンテンツの永続性について考えます。

[風穴 江(Ko Kazaana),ITmedia]

 「電子書籍」を始めようとするとき、読者が選ぶことになるものが3つある。それは、

  • サービス
  • 端末
  • コンテンツ

である。

tnfigem1.jpg 「スティーブ・ジョブズ」の公式ページで案内されている販売サイト一覧

 サービスは、いわゆる電子書籍ストア、電子書店などと呼ばれるもの。つまり「電子書籍」を売っているところだ。紙の書籍だと、どこの書店で購入しても同じように読めるものを手にできたが、現状の「電子書籍」では、そういうわけにはいかない。一部例外もあるが基本的には、Aという「電子書籍」サービスで購入したものは、Aが提供するビューワでしか読むことができない。たとえフォーマットが同じでも、それを、Bというサービスのビューワでは読めないようになっている。そして、ビューワの機能や対応端末は、「電子書籍」サービスごとに微妙に異なるので、自分に合ったサービスを選び、そこからコンテンツを買う必要がある。

 昨年発売され話題になった「スティーブ・ジョブズ I・II」(講談社)は、22もの「電子書籍」サービスで販売されているが(2012年4月13日現在。以下、特に断らないものはこれに準ずる)、ここまでくると、一体どこから買えばいいのか途方に暮れた人もいるのではないだろうか。

 端末は、「電子書籍」を読むために必ず必要となる。専用端末やスマートフォン、タブレットだけでなく、PC(ほとんどの場合Windowsだが、Macでも読める場合もある)や、従来型の携帯電話(いわゆるフィーチャーフォン)でも読めるものがある。

 コンテンツの選択、すなわちどの本を読むのかは、それこそ好きなものを選べばいいわけだが、現状の日本の「電子書籍」の場合、その品ぞろえは決して多いとは言えないので、その中で自分が読みたいものを見つけられるかどうかが鍵になる。

あちらを立てれば、こちらが立たず

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 やっかいなのは、サービス、端末、コンテンツの3つは、それぞれをまったく独立に選べるということはなく、どれかを先に決めれば、残り2つに対して取り得る選択肢が限定される場合が多いということ。

 例えば、端末としてiPhoneやiPadを前提にすれば、GALAPAGOS STOREなどは利用できないし、そこでしか販売されていないコンテンツは諦めなければならない。また、サービスとしては利用できるが、コンテンツによってはiOS端末には対応していないという場合もある。紀伊國屋書店BookWeb Plusは、いろいろな種類の端末から利用できる「マルチデバイス対応」を標榜し、実際、ほとんどのコンテンツはiOSでも読めるのだが、そこで販売されている「路上スナップのススメ」(森山大道)はiOSに対応していない(Android端末にも対応しておらず、Windows版ビューワである『Kinoppy for PC』のみに対応。KinoppyのFAQによると『技術的な問題』だという)。これはBookWeb Plusに限った話ではなく、他のサービスでもあり得る問題だ。

 あるいは、読みたいコンテンツが先に決まっている場合。「スティーブ・ジョブズ」のように、主要な「電子書籍」サービスのほとんどで入手できるものであれば、サービスも端末も比較的自由に選ぶことができる。iPhoneでもiPadでも、Androidスマートフォンでも、従来型携帯電話でも、どれでも好きなもので読めばいい。しかし、アルクの英語雑誌「ENGLISH JOURNAL」を電子版で読みたいと思ったら、今のところiPhoneかiPadしか選択肢はない。AndroidやPCなどでは読むことができないのである。

永続性に対する考え方

 もし、端末は自分が今持っているものを使い、コンテンツはそこで使えるサービスで入手できるものだけ、それも今さえ読めればそれでいい、という割り切りができるのなら話は簡単だ。特に深く考えることなく、好きなものを好きなように読めばいい。

 しかし、少し先のことを心配するなら、いろいろ考えるべきことがある。

 まず重要なのが「読み終わったコンテンツを残しておきたいかどうか」。読んだら終わりでいいのなら、それほど悩むべきことはないが、一度購入したコンテンツを将来に渡って繰り返し読み続けたいと考えるなら、コンテンツの永続性を注意深く検討する必要がある。

 例えば3年後。今使っているのと同じ種類の端末を使っていると断言できるだろうか? 今はAndroidスマートフォンを使っていても、いずれiPhoneに機種変更するかもしれないし、キャリアを乗り換えることだってあるかもしれない。そのとき、Androidでしか利用できない、あるいは特定キャリアでしか利用できない「電子書籍」サービスを使っていると、それまで購入したコンテンツをすべて捨ててしまうことになってしまう。

 そうした事態を避けるための1つの方法は、AndroidもiOSも(あるいはそれ以外も)サポートした「電子書籍」サービスを選ぶことだ。独自のビューワを提供しているサービスでは、Android、iOS、Windowsという3大プラットフォームに対応するところが増えてきているが、紀伊國屋書店BookWebのように、独自端末であるソニーの「Reader」やMac OS X(予定)も含めマルチデバイス対応を積極的に進めているところもある。

 これでもまだ安心できない人もいるだろう。果たして5年後、10年後でも、そのサービスが続いているのかどうか、と。いくらマルチデバイス対応していても、そのサービス自身が終了してしまえば、やはり同じように、それまで購入してきた書籍が読めなくなってしまう可能性がある。

 たとえサービスが終了してしまったとしても、購入して手元にダウンロードさえしてしまえば、あとはいつまでも読み続けられる……と思っている人も多いようだが、必ずしもそうとは限らない。例えば、iOSで提供されている「BIG COMICS」は、購入して読むときにダウンロードが行われるが、これはビューワ内にキャッシュされるだけで、何冊か続けて読んでいると古いものから削除されるようになっている。キャッシュから削除されたものを再び読むときには、販売元サーバから再ダウンロードする必要があるので(再ダウンロードに期限はない)、サービスが終了してしまうと(その時点でキャッシュに残っているもの以外は)読めなくなってしまう。

 また、コンテンツのファイルがすべてローカルに保存される場合でもリスクはある。コンテンツを表示するのに販売元が提供する専用ビューワが必要なら、そのビューワの動作がいつまで保証されるかに掛かっている。「電子書籍」サービスが終了してしまうと、当然、そこで提供されていたビューワの開発もストップすることになり、スマートフォンやPCのOSがバージョンアップした際にビューワが動作しなくなる可能性があるからだ。

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