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» 2012年01月18日 14時30分 UPDATE

都知事閣下と都民各位のために、もらっといてやる――芥川賞の田中慎弥さん

第146回芥川賞・直木賞の受賞者が決定した。5度目のノミネートで芥川賞作家となった田中慎弥さんは、会見の場で独特の存在感を示した。

[前島梓,ITmedia]
tnfigan1.jpg 芥川賞を受賞した田中慎弥さん(出典:日本文学振興会)

 1月17日、日本文学振興会が主催する第146回芥川賞・直木賞の選考会が開催され、芥川賞に、円城塔さんの「道化師の蝶」(『群像』2011年7月号)、田中慎弥さんの「共喰い」(『すばる』2011年10月号)が、直木賞に葉室麟さんの「蜩ノ記」(祥伝社)が選ばれた。

 同日夜に開催された会見で話題を呼んだのは、5度目のノミネートで受賞となった田中慎弥さん。山口県下関市で執筆活動に携わる同氏は、4歳で父親を亡くし、今も母親と2人で暮らしている。アルバイトも含め一度も職に就いたことがなく、20歳のころから小説を書き続けているという。

 その表情に笑みはなく、けだるげに報道陣からの質問に答える田中氏。以下では田中氏への質疑応答をお届けしよう。なお、予備知識として、芥川賞の選考委員に東京都の石原慎太郎知事が名を連ねていること、今回芥川賞にノミネートされた作品について石原氏が「バカみたいな作品ばっかりだ」と発言したことなどを踏まえておくと以下の田中氏の発言の意図も少なからず理解できるだろう。

―― まず今のお気持ちを一言。

田中 確か、(米女優の)シャーリー・マクレーンだったと思いますが、何度もアカデミー賞の候補になって、最後に(賞を)もらったときに、『私がもらって当然だと思う』って言ってたそうですが、まぁだいたいそういう感じです」

 4回も落っことされた後ですから、ここらで断ってやるのが礼儀といえば礼儀ですが、私は礼儀を知らないので。もし断ったって聞いて、気の小さい選考委員が倒れたりなんかしたら都政が混乱しますんで、都知事閣下と都民各位のために、もらっといてやる、です。とっとと終わりましょうよ。

―― 今回は受賞された方は地方在住の作家の受賞が目立つが。

田中 そのことに関しては、感想はありません。

―― ほかの受賞作については?

田中 ちょっと読んでないので分かりません。

―― 5度目のノミネートで受賞したことについて。

田中 1回目で受賞するのが一番いいんで。5回目っていうのはまぬけです。もうやめましょうよ。

―― 田中さんは「自分は働いたことがない、働いたら負けだ」と以前話していましたが、いま仕事の見つからないニートの方に一言あれば。

田中 人によって状況が違うので私が言えることはありません。私は本を読んで小説を書いて、作家になったというだけです。

―― 田中さんは携帯をお持ちでなかったと思うのですが、今日はどちらでどのような形で受賞の報を受けたのでしょうか。

田中 都内の飲み屋で待っていました。プリぺイド方式の携帯? みたいなのを編集者が持ってきて、(受賞の報を)受けました。

―― どなたかに受賞を知らせましたか

田中 母です。

―― お母さまは何と?

田中 『良かったね、おめでとう』というだけです。

―― 文学振興会から受賞の報を受けたとき、どのように返事したのですか?

田中 ちょうだいします、と言うだけです。

―― 受賞を受けて、心境の変化はありますか。

田中 気持ちの変化はありません。私は意欲はありません。

―― 下関という生まれ育った街への思いを教えてください。

田中 非常に乾いた街です。

―― 受賞によって下関を離れるとか、書くスタイルは変わりませんか。

田中 今までどおりです。

―― 第一声でシャーリー・マクレーンと同じく受賞は「当然だ」ということですが、当然とは?

田中 いや、思いはなくて当然だから当然。

―― 選考委員の石原慎太郎氏に一言。

田中 だから、今なんか、おじいちゃん新党作ろうとしてるんでしょ。新党結成に向けていそしんでいただければと思います。

―― 地元の恩師の方からもお祝いの声が寄せられています。

田中 それは嘘ですね、私は教師に嫌われてましたから。それは本当の嘘です。

―― 昨日より不機嫌なのはなぜ?

田中 とにかくやめましょうよ。(同じく芥川賞を受賞した)円城さんがものすごく丁寧に答えてらっしゃったんで、自分はそういう風にはできないなと思ってただ不機嫌にやってるだけです。

―― 今日はお酒は飲んできたんですか?

田中 ワイン2杯くらいです。

―― 機嫌が悪いとすれば何が。

田中 (報道陣に手を広げて)だから、これが。

―― 機嫌が悪いというのは、たくさんの人の前で話すのは苦手だとかそういうことでしょうか。

田中 こういう場が好きな人間はいないでしょう。政治家じゃないんだから。

―― 最近講演をなさる機会も増えてらっしゃるそうですが。

田中 それは、ギャラが出るんで。


 終始不機嫌なままだった田中さん。歯に衣着せぬ言動で報道陣からは笑いが起こる場面もあった。なお、石原慎太郎東京都知事は、「自分の人生にとって意味合いもない」として、今回で選考委員を退く意向を示している。

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