Amazon Kindle Fireの実機レビュー(2/2 ページ)

» 2011年11月29日 11時56分 公開
[Michael Kozlowski,Good e-Reader Blog]
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電子読書体験

 Kindle Fireはマルチメディアありきで、電子書籍の読書は二の次として扱われているように思える部分もあるのだが、大手6大出版社の作品をはじめ、ほとんどの人々の興味に合致する何十万冊もの書籍を見つけることができるAmazonのエコシステムはやはり広大だ。Amazonは独立系出版社が自社の書籍を販売する出版プラットフォームにも力を入れており、中には人気が出て米国外で名声を獲得するケースもある。

 Kindle Storeは新聞、雑誌、電子書籍といったセクションで構成されている。「雑誌」セクションでは、Time、Conde Nast、Hearstといった多くの大手出版社の雑誌が並び、単号でも定期購読でも好きなように購入できる。価格は1.99ドルから3.99ドルの範囲に集中しており、試読や一定期間のトライアルも用意されている。また、「新聞」セクションではNew York TimesやUSA Todayといった米国を拠点とする新聞も入手でき、印刷版をすでに購読契約しているユーザーなら、電子版は無料で読むことができる。

 ただ、この2つのセクションは少し飾り気がないように思う。コンテンツは豊富な方だが、雑誌と新聞について言えばNOOK Tabletにまったく及ばない。Amazonはようやくカラーコンテンツの提供に着手し始めたが、Barnes & Nobleはこの点において2年ほど先行している印象だ。

 しかし、「書籍」セクションは成熟している。Kindle Fireの購入特典として用意されているAmazon Primeの1カ月間無料メンバーシップの利点の一部は、期間内にAmazonから本を1冊借りることができることだ。ユーザーは好きなだけ本を読むことができ、本は1カ月経過すると自動的に返却される。大手6大出版社はいずれもこのプログラムから離脱したが、スザンヌ・コリンズ氏のHunger Gamesシリーズをはじめかなりの数のベストセラーも入手できる。

 書籍セクションはTop 100 Paid、Kids Books、New and Noteworthyといった多くのジャンルで構成されており、デフォルトでは本の表紙と最新の5冊を表示する。サイドバーからはKindle Singles、Lending Library、Newsstand、New York Times Bestsellers、Editors Picksにアクセスできる。書籍の表示は、PCやKindle電子書籍リーダーでAmazon.comを利用する際のそれとは違うということを心にとどめておきたい。Kindle Fireの場合はユニークで、フルカラースクリーンとタッチしやすい大きめのアイコンを利用している。

 読書体験をカスタマイズする機能も、行間、余白、フォント、レイアウト調整など豊富に用意されている。内蔵フォントはTimes New Roman、Arielなど12種類用意されており、フォントサイズは8段階で変更できる。また、背景変更機能もほかのKindle製品にはない特徴といえる。背景を黒、文字を白とするいわゆる反転本の表示も可能だし、背景をミルキーホワイトにしてコントラストを低減する「Butter」なども選択可能だ。

 読書中は、メモを取ったり、単語をタップすることで簡単にハイライトしたりできる。ハイライトしているときは、大きめのフォントでハイライトしている部分を表示するのに小さなズームエリアが出現し、間違いを減らすことができる。ハイライトやノートは保存したり、FacebookやTwitterに送信することもできる。

 素晴らしいのは、特定の単語をハイライトするとスクリーンの下部に即座に辞書が表示される点だ。通常、特定の単語を辞書引きするのに余計なキーを押すことを強いられるが、Kindle Fireではそれらは自動的に表示される。辞書引きだけでなく、GoogleやWikipediaに単語の文字列を渡すこともできる。これはSILKブラウザ経由で行われ、即座に表示されるような快適さがある。

 次に、複雑なレイアウトを持つ新聞やコミックなどのPDFファイルを本体に転送して読んでみたが、PDF上でピンチイン/ピンチアウトが高速に機能した。ただ、ダブルタップでスクリーンサイズにフィットするようなことはなく、リフローなどが行われるわけでもない。PDFビューワという観点で言えば、Kindle FireよりもiPadの方が優れているというのが結論だ。

 とはいえ、全体的にはKindle Fireでの電子書籍体験には満足感がある。Kindle Fire以前にAmazonが世に送り出した電子書籍リーダーと比べれば、読書体験をカスタマイズするオプションは群を抜いている。MOBI形式の電子書籍を本体にロードするのもシンプルだ。なお、現時点でKindle FireはAdobe Digital EditionsやCalibreをサポートしていない。

われわれの考え

 Kindle FireはAmazonが電子書籍で築き上げてきたものがどの程度のものなのかをよく表している。通常新たなデバイスは最善の状態で出荷をせず、ファームの更新を行なってはじめて完全に機能するようになるものだが、Kindle Fireは電源を入れて触り始めた瞬間から洗練されたハードウェアを触っている気分に浸ることができる。これまで触ってきた中でも、クラッシュはおろか、特に問題も生じなかった。

 ただし、繰り返しになるが、Kindle Fireを最大限に利用しようと思えば米国内に居住している必要があるのは最大の問題だ。書籍、新聞、雑誌の購入や、Kindle Lending Library経由で本を借りることは米国外からも可能だが、アプリや動画、ほかのメディアは米国外のIPアドレスではダウンロードできない。米国外でこのデバイスを購入する多くの人を失望させないように、Amazonがほかの市場への開放を決定することを望みたい。

 もう1つの問題は、子ども向け書籍および雑誌のエコシステムが未成熟な点だ。Amazonはこの領域にやっと本腰を入れて取り組み始めたばかりで、コンテンツはまだ少ない。コンテンツプロバイダーがKindle Fire向けに独占的なコンテンツを開発し始めるにはあと1年は掛かると思う。

 こうした課題はあれど、Kindle Fireは筆者が2011年にレビューした中で最高のタブレットの1つだといえる。コストパフォーマンスが高く、箱から出した瞬間から機能性の高さを示すこのデバイスにPandigital、Aluratek、Skytexなど競合他社がどのように立ち向かうのか正直分からない。

 メディアをストリーミングしたり、オーディオブックを聞いたり、雑誌や新聞を読んだり、夜に子どもを寝かしつけながら本を読んであげたり、(もちろん)自分で本を読むことができるマルチメディアデバイスが欲しければ、Kindle Fire以外のデバイスを検討する必要はない。このデバイスですべて実現できる。

評価:9.5/10



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