さて、肝心の電子書籍リーダーとしての使い方、簡単に言うなら文書などをイメージとして扱う方法を見ていこう。ちなみに、DPF-A8WM10にも「電子ブック」機能はあるが、これはテキストファイルしか扱えないオマケ的なものだ。もともと電子書籍リーダーではないのだから、テキストしか読めないのはよいとしても、書体のクセにはやや興ざめである。
せっかくの高解像度液晶なのだから、文書をイメージとして読ませてみよう。ワープロ(ワード)で縦書きにして印刷プレビューと、PDFに出力したものを画面キャプチャの方法でイメージ化したものをDPF-A8WM10に読み込ませてみた。
ここまでのイメージ化処理は手動で行なったが、テキストデータをダイレクトにJPEGに変換する方法は、携帯ゲーム機(PSP)で文書を読みたいというニーズからいろいろ研究されており、以下のようにユーティリティも幾つか配布されている。
今回は、1)で配布されている「Text to JPEG files for PSP Ver2.1.1」を利用させていただいた。イメージサイズをDPF-A8WM10の1280×768ドットに合わせ、縦長表示にしたのが右の写真である。
どうだろうか? 筆者的には、これで十分に電子書籍リーダーとしての必要条件を満たしている気がする。レイアウトや書体の種類、横書き、縦書きも自由自在だ。
イメージといえば、コミックを自炊(スキャン)したものはどうだろうか、以前にデータ化していたものを試してみた。
画面の縦横比と、一般的なコミックの縦横比が異なるため、オリジナル比では上下に黒帯が出るが、DPF-A8WM10の表示はストレッチ(強制的に1280×768ドットに合わせる)、あるいは切り取り(長辺がいっぱいになるように拡大し、短辺側をカット)なども選べる。本体を上下に持つため操作ボタンに指をかけにくいのがネックだが、数秒間隔の自動ページ送りにしておけば操作しなくても勝手にページをめくってくれる。何より、8型ワイド液晶の画面サイズが、コミックを読むのにちょうどよいサイズなのだ。
さすがに8型ワイド液晶に、コミックとはいえ見開き2ページ分を展開するには無理がある。そんなときは大画面テレビに映し出してもよいだろう。DPF-A8WM10の出力は、コンポーネントビデオという国内ではあまり見かけない方式だが、一般的なコンポジットビデオより画質が良好で、最近のデジタルテレビなどへの装備が進んでいる。その際のページめくりは、付属リモコンを使ってもよい。好きなコミックを大画面で見ながら、BGM機能で好きな音楽を聴く。なんと贅沢な時間だろうか? しかも、これら魅力的なハードウェアが1万円前後で購入できるのだ。
読書のスタイルは人それぞれだ。しかし、メーカーが提示してくる使い方はお仕着せになってしまっている。最大公約数的な自由は得られるが、本来、読書はもっと自由だったはずだ。面倒な作業の「テキスト→JPEG化」にしても、ユーザーの自由裁量が入り込める余地を残してくれていると前向きに考えたい。
フォトフレームDPF-A8WM10にはできないこともあるが、そこは創意工夫で乗り越えられる。そこには、プラモデルを組み立てるのと同じような楽しさがあるのだ。
画面 | 8型ワイドTFTカラー液晶(LEDバックライト)、1280×768ドット |
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内蔵メモリ | 4Gバイト |
インタフェース | USB 2.0 |
対応メディア | SD/SDHC、MMC、USBメモリ |
ビデオ出力 | YPbPr(コンポーネントビデオ)、720P・1080i |
オーディオ出力 | ステレオ |
対応ファイル形式 | JPEG、BMP、PNG、MPEG-1、MPEG-4 AVC/H.264、MotionJPEG、MP3、AAC、PCM、TXTなど |
バッテリー | 内蔵リチウムイオン充電池(2800mAh)、約3時間 |
サイズ、質量 | 213×134×14mm、380グラム |
付属品 | 赤外線リモコン、ACアダプタ、ケーブル(USB×2、ビデオ) |
1963年生まれ。IT系雑誌・Web媒体への企画および執筆、天文・生物など科学分野の取材記事などを手がけるフリーランスライター。デジイチ散歩で空・月・猫を撮る日常。理科好き大人向け雑誌「RikaTan」編集委員。主な著書に『失敗の科学』、『光る生き物』(技術評論社)、『〜科学を遊ぶ達人が選んだ〜科学実験キット&グッズ大研究』(東京書籍)、『やっぱり安心水道水―正しい水のお話』(水道産業新聞社)などがある。
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