著者に無断で電子書籍化――三一書房の旧経営者

三一書房の旧経営者が、著者の許諾を得ずに230点以上の作品を電子書籍化して販売していた。

» 2011年10月03日 17時00分 公開
[西尾泰三,ITmedia]

 国内の出版社20社が電子出版ビジネスの市場拡大をサポートするための新会社「出版デジタル機構」の設立に合意するなど、電子書籍に関する出版社の取り組みが進む中、業界に冷や水を欠けるような事件が起こった。

 この問題は、中堅の出版社である三一書房の旧経営者が、著者の許諾を得ずに230点以上の作品を電子書籍の取次会社「デジブックジャパン」に提供、複数の電子書籍ストアで販売され、売り上げも立っていたというもの。

 出版業界では、昨年辺りから電子書籍化に関する項目を新たに盛り込む形で著者と契約書を交わすようになってきているが、同社の場合は古参の著者も多く、そうした項目が存在しない契約のまま更新されていたようだ。取次のデジブックジャパンも権利関係の確認で甘い部分があったと言わざるを得ないが、権利関係をクリアにすることなく電子書籍販売を勝手に委託した旧経営者の行為は良識を疑うものだ。

 三一書房は1945年創業の出版社。近年では、外部からの経営介入となった旧経営者の下で賃金の未払いなどが起こっており、2011年5月には従業員への事業譲渡が締結され、新たなスタートを切った矢先だが、旧経営者によって再び辛酸をなめさせられることになった。なお、三一書房は電子書籍の売り上げを受け取っておらず、各著者に返還できるようデジブックジャパンと協議していくという。

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