GALAPAGOSのAndroid 2.3化はお得感のあるアップデートだった

シャープは電子書籍端末のメディアタブレット「GALAPAGOS」のシステムソフトウェアアップデートを8月11日に開始した。OSがAndroid 2.3へと変わる“進化”の過程で、GALAPAGOSはどう変わるのだろうか。

» 2011年08月12日 11時00分 公開
[本田雅一,ITmedia]

 シャープは電子書籍端末のメディアタブレット「GALAPAGOS」のシステムソフトウェアアップデートを8月11日に開始した。さっそく、手持ちの5.5型モデル「EB-W51GJ-R」にアップデートを施してみたので、簡単にインプレッションやアップデートに伴う注意点についてリポートすることにしたい。なお、同様のアップデートは10型モデルにも用意されている。

アップデートでなかなか魅力的な端末に変身

 結論から言うと、幾つかの制限はあるものの、GALAPAGOSの持つ高解像度液晶による表示、5.5型というサイズ感など、Wi-Fi専用端末としてはなかなか魅力的な端末に変身してくれた。その一方、電子書籍端末としては失う面もあるため、ユーザーは更新時に慎重に選択をしていただきたい。Android 2.3へのアップデート後は、元のバージョンへと戻すことはできなくなってしまうからだ。

 GALAPAGOSはもともと、Android 2.2のOSカーネルを採用した電子書籍専用端末として発売されていた。これはGALAPAGOSがGoogleが定めている「Android Compatibility Test Suite(CTS)」という互換性基準を満たさないためだ。もともとスマートフォンを対象にしていたAndroidでは、それ以外の機器でAndroid マーケットやGmail、Google Talk、Google Mapsといったアプリケーションの利用には制限があったためだ。

 GALAPAGOSは電子書籍端末としての機能性を優先し、コンパクトなシステムとするため不要なデバイス(マイク、GPS、Bluetoothなど)は搭載していない。バックグラウンドの処理も極力減らすなどの工夫で、省電力モード時に7時間(5.5型版)という長時間バッテリー駆動を実現していた。開発者たちにはCTSが通る端末として必要要件を満たすデバイスを載せる方がいいのでは? という葛藤もあったようだが、電子書籍としての使いやすさ(特にバッテリー持続時間)を重視して専用端末にしたいきさつがある。

 しかし、GoogleはAndroidをスマートフォン以外に製品を展開するため、バージョンが2.3となるタイミングでCTSの条件を緩和した。これに伴い、すでに発売済みの製品に対してCTS認証を取り直すという交渉をシャープは続け、今回のアップデート実施となった。

これはユーザーにとってお得感のあるアップデート

 アップデートを行うと、汎用Android端末でおなじみのロック画面が表示され、Android 2.3端末となったことが分かる。GALAPAGOSにはMENUボタンがないが、本体のホームボタン(右側の四角い印)を長押しすることで代替できる。

 「GALAPAGOS App for Mediatablet」のウィジェットがオリジナルでAndroidのホーム画面に追加されており、おすすめ書籍や定期購読アイテムの新着情報などが表示される。このほか、内蔵辞書が単体の辞書ソフトとして利用可能になるほか、Yahoo!のサービスにアクセスするための専用アプリケーションやマカフィーのAndroid向けウイルス対策ソフト「VirusScan Mobile」もプリインストールされている。

 電子書籍端末として使うためのGALAPAGOSアプリケーションはスマートフォン向けと同様、単体で動作する「GALAPAGOS App for Mediatablet」に衣替えとなったが、これをホーム画面に設定することも可能だ。

Android 2.3化後は、「GALAPAGOS App for Mediatablet」のウィジェット付きでAndroidのホーム画面が現れるが、GALAPAGOS App for Mediatabletをホーム画面に設定することで、従来の操作感で使うことができる

 EB-W51GJのプロセッサは非公開となっているが、さまざまな情報からするとFreescale i.MX51の800MHzと推察される。ローエンドのAndroid端末よりは高速だが、昨今主流となっている1GHz以上のスマートフォンには絶対的なパフォーマンスではかなわない。もともと、汎用端末としては開発されていないため、この辺りは致し方ないところだ。

 しかし、OSが2.3となったためか、TSUTAYA GALAPAGOSの電子書籍アプリケーションは、アップデート後の方がレスポンスが良くなったように感じる。もちろん、バックグラウンドで別アプリケーションのプロセスを走らせていれば遅くなるケースもあるだろうが、アップデートによりOSの動作が重くなることはない。

 5.5型1024×600ピクセルの解像度、推定800MHzのFreescale i.MX51からイメージするとおり、1つ1つのアプリケーション動作は高速とはいえないが、作業に困るようなことはない。インストール直後の起動では各種プロセスが初期処理を行っているのか、しばらくはレスポンスが悪い状態が続いた。しかし、一通り動きが落ち着いてくると、メールやカレンダー、SNSクライアント(今回はSeesmic for Androidをインストールしてみた)といったアプリケーションは大きな支障なく動いてくれた。YouTubeへのアクセスも軽快で、画質を「HQ」モードにすると、美しい映像を再生してくれる。

 ブラウザや地図ソフト、それにカレンダーなどは、コンパクトな割に解像度が高いディスプレイの好印象と相まってなかなか悪くない。メール端末としても、ソフトウェアキーボードのサイズがちょうど使いやすく、個人的には良い印象を持った。

 本機をAndroid 2.3搭載のタブレット端末だと思えばやや不満の声も挙がるかもしれない。しかし、本来は電子書籍端末として販売されていたハードウェアに情報端末としての機能が追加されたといういきさつを考えると、なかなかお得感のあるアップデートだと思う。発売後に、ここまで端末の性格を変えるアップデートを施すののは異例のことだ。

 ただし、汎用のAndroid搭載情報端末となったことで失われてしまったものもある。それはバッテリー持続時間だ。オリジナルのGALAPAGOSは上述したように、本を読むために必要なプロセス以外は動かさないようにすることで、最長7時間の動作時間を実現した。5.5インチで220グラムという軽量ながら7時間というスペックは、GALAPAGOSの長所だったのだが、このアップデート後の連続動作時間は約4時間となる。

 一般的なスマートフォンを使い続ける場合よりは長いものの、本を読むための端末としては、もう一声欲しいところだろう。不要プロセスを殺して汎用端末としては一時的に機能しなくなる「読書モード」などを導入しては? と尋ねてみたが、各種プロセスが複雑に連動しており、未知のアプリケーション動作に与える影響が予測できないとのことで、電力管理で特殊な手法はできないとのことだ。

 また、マイク、GPS、Bluetooth、カメラに依存するアプリケーションが動かないことも頭に入れておかないと、使い始めてに思い通りに動かないアプリケーションに出会って戸惑うかもしれない。地図系のソフトや地域ナビゲーションなど、Skypeなどのインターネット通話系アプリケーション、それにカメラを用いるアプリケーションが影響を受ける(Google Mapは動作するがGPSが利用できず、GPSが内蔵されていないとWi-Fiロケーション検出機能も動作しないようで、現在位置検出は行えない)。

 こうしたハードウェアによる制限も残る中で、Android 2.3へのアップデートへの決断には悩みもあったようだが、最終的にはユーザーの多くが汎用の情報端末にすることを望んでいると判断してアップデートに踏み切ったようだ。バッテリー持続時間が短くなることをよく考慮した上で、納得した上でアップデートするようにしたい。以下は、Android用ベンチマークアプリ「Quadrant Standard Edition」によるシステム情報とベンチマーク結果だ。

同アプリでのベンチマークは計測ごとのブレが大きく、あくまで参考値として考えてほしい。端末が解像度の高い5.5型モデルだったので、ピクセル処理のスループットが高く計測され、全体の数字を上ブレさせた可能性はある

 最後にわたし自身の個人的な意見を書き添えておきたい。

 電子書籍端末として5.5型モデルを使ってきたが、アップデートしたことに後悔はまったくない。特にWiMAXなどのモバイルルータを使っている読者にはオススメしたいぐらいだ。5.5型という画面サイズは、都市部で電車移動する場合とても使いやすいサイズである。

 小型タブレット型端末の主流は7型だが、今回のアップデートで5.5型端末の使いやすさを再認識した。このサイズを維持した上で、今回のアップデートによる経験を糧にした端末が今後も続いていくことを期待したい。

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