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» 2011年07月22日 09時00分 UPDATE

ベスト「ドットブック」ビューアを目指すBookLiveの野望

文字ものの電子書籍で採用されている主要なフォーマットはXMDFとドットブック。しかし、同じフォーマットのビューアでも、その機能性、操作性は電子書籍販売サービスによって異なる可能性がある。先日の電子出版EXPOでは、ビューアの機能拡張に対して大きな野望を抱くサービスが目に止まった。BookLiveである。

[風穴 江,ITmedia]

ビューアの乱立をユーザーは望んでいない

 現在の日本において、文字が中心の電子書籍(いわゆる『文字もの』)で採用されている主要なフォーマットは、XMDFとドットブック(.book)である。理論的にはどのデバイスでも、この2つのフォーマットに対応するビューアさえあれば「文字もの」として流通しているほとんどのタイトルを読むことができる――はずである。しかし、現実にはそうはなっていない。iOSにおいてもAndroidにおいても、実際には、電子書籍販売サービス(のアプリ)ごとにXMDFビューア、ドットブックビューアを持っていて、結果、同じフォーマットを表示するプログラムが、1つの端末に複数インストールされることになる。

 電子書籍販売サービスごとにビューアが必要なのは、それぞれが独自のDRMを設定しているためである。同じXMDF形式の電子書籍でも、サービスAで購入したものをサービスBのビューアで表示することができないのは、サービスBのビューアが、サービスAのDRMに対応していないためだ。逆に言えば、サービスを限定するようなDRMが設定されていない書籍であれば、「サービスCで購入したものを、サービスDのビューアで読む*」ことは可能ではある。しかし、このやり方が可能なサービスの組み合わせは、それほど多くない。

 ビューアが電子書籍販売サービスごとに提供される一方で、そのビューアを開発している大本(おおもと)は、事実上2社しかない。すなわち、XMDFビューアはシャープが、ドットブックビューアはボイジャーが、それぞれベースとなるものを開発し、各電子書籍販売サービスに提供する形となっている。大本が同じなのだから、各サービスから提供されるビューアの機能も同じだろうと思いたいところだが、これまた、そうは問屋が卸さない。実際は電子書籍販売サービスごとにビューアがカスタマイズされているので、操作性や読みやすさに差が出てしまうことになる。

 ちなみに、大本から提供されている機能でいえば、ドットブックビューアよりもXMDFビューアのほうが、読みやすさのために表示をカスタマイズできる自由度が高い。同じタイトルでもXMDF形式で購入すれば、フォントを変更したり行間や余白を調整したりと、見た目を細かく設定することができるのに、ドットブック形式ではそれができない、ということがよくある。実はこれは、ビューアの機能の問題だけでなく、そもそもドットブックというフォーマットのコンセプトとして、コンテンツプロバイダー側で表示に関する設定を固定化できるようになっており、それが多くのコンテンツで積極的に利用されていることも影響している。

 このためドットブック形式の場合、コンテンツプロバイダー側で縦横表示や表示フォントなどを固定してしまうと、たとえビューアにそれを切り替える機能がついていても、ユーザーがその設定を変更する(縦書きを横書きにして読む、自分で読みやすいフォントに変更する)ことができない。紙の書籍と同じように、出版社側で最適な表示設定を作り込んで読者に提供する(=読者には表示を変更させない)と考えれば一理あるとも言えるが、紙の書籍にはない利点――例えば、老眼のユーザーが文字を大きくしたり、線が太いフォントに変更して読みやすくするなど――を電子書籍に期待している場合は、ドットブック形式の書籍では残念な思いをすることが多い。

 私自身、この10年で400冊以上の電子書籍を購入して読んできたが、こうした事情から、同じタイトルでフォーマットを選べる場合は必ずXMDF形式で購入するようにしてきた。私の購買行動がそのまま一般化できるとはもちろん思わないが、文字ものの書籍に関して、現状、XMDF形式のタイトルのほうがドットブック形式よりも圧倒的に多いという事実に、このことが多少は影響していると考えることはそれほど無謀ではないのではないか。

BookLiveの野望

 さて、同じフォーマットのビューアでも、その機能性、操作性は電子書籍販売サービスによって異なる可能性がある、という視点に立って今回の電子出版EXPOで話を聞いて歩いたところ、ビューアに関して大きな野望を抱くサービスが目に止まった。BookLiveである。

 現状、BookLiveが提供しているドットブックビューアは、誰もがすぐに気づく1つの問題を抱えている。それは、文字の大きさを3段階(大中小)に切り替える機能が、高解像度ディスプレイを有するデバイスでは有効に機能していない、という点である。

BookLiveのビューアでドットブック形式の書籍を表示したところ(端末にepubデモ用とあるがここでは無関係)。文字を最大サイズにしたところだが、設定で文字サイズを小さくしても見た目はほとんど変わらない

,BookLiveのビューアでドットブック形式の書籍を表示したところ(端末にepubデモ用とあるがここでは無関係)。文字を最大サイズにしたところだが、設定で文字サイズを小さくしても見た目はほとんど変わらない

 つまり、高解像度ディスプレイを搭載した機種でBookLiveのドットブック形式書籍を読む場合、文字のサイズを変更しても、3段階のサイズの違いが非常に分かりにくいものとなっている。これは、3段階の文字サイズが、同社がサポートする最低解像度の機種(480ドット×320ドット)に合わせて選択されていることに起因する「仕様」なのだが、本来、切り替える大中小のサイズはデバイスの解像度に合わせて決定されるべきだ。同社でもこの問題は認識していて、今後のバージョンアップで修正される予定となっている。

 これを機に少し踏み込んで話を聞いたところ「将来的には、XMDFビューアとドットブックビューアの違いをユーザーに意識しなくてもいいように」したいという「野望」を抱いていることが分かった。これはすなわち、ビューアとしての機能を、XMDFとドットブックとで同等にするということだ。もちろんそれは、ユーザーにとっての選択肢が少ないドットブックビューアに合わせるというやり方ではない。XMDFビューアと同等の機能をドットブックビューアに盛り込む形で行われることになる。

 さらに、ドットブックビューアでゴシック系フォントを選べるようにもする計画があるという。表示フォントを増やすのは造作ないと思われそうだが、実はそうでもない。ドットブックビューアはデフォルトで明朝系フォントを内蔵しているが、これは、これまでのドットブック形式による電子書籍化の歩みの中で、その都度必要となった「外字」が数多く追加されているのだという。したがって、これと同等の役割を果たすものとしてフォントを追加するには、同じようにそれらの「外字」を作成し、追加しておく必要がある。BookLiveでは、凸版印刷グループで持っているゴシック系フォントにそうした「外字」を追加する作業を行い、ドットブックビューアで利用できるようにするのだという。

統合ビューアアプリケーション「BookLive!Reader」の機能拡張計画 統合ビューアアプリケーション「BookLive!Reader」の機能拡張計画

 そして将来的には、機能だけでなく、ユーザーインタフェースも両フォーマットで同じになることを目指す。現状、XMDFビューアとドットブックビューアとでは、設定メニューを表示させるための操作方法がまるっきり違っているため、ユーザーは今読んでいる書籍がどちらのフォーマットなのか意識する必要がある。ほかのサービスでも同様だが、ユーザーはBookLive!Readerという1つのアプリケーションを「入り口」にして電子書籍へアクセスしているのに、いざ本のページを開いたらそれが何のフォーマットなのか意識しなくていけないのは、やり方として甚だ美しくない。しかしBookLiveに限らず、これが今の電子書籍の現状なのである。

 BookLiveがドットブックビューアの機能拡張に成功し、ユーザーにとって真に使いやすいビューアが実現されるならば、それだけでBookLiveを選択する大きな理由になるだろう。今のところ、幾つもの電子書籍販売サービスが林立している状況だが、販売タイトル数の違いは時間とともに平均化していくので、それによる差別化は一定の限界がある。どのサービスを使っても読みたい本が読めるのであれば、次には、それをどう読めるかにユーザーの関心は移ることになる。そう考えれば、ビューアの機能拡張に対してBookLiveが抱く大きな「野望」も、それほど的外れなものではないと思える。

 なおBookLiveでは、これ以外にも、今年の夏から秋にかけて、EPUBやPDFのサポート、iOSへの対応などを予定している。

 電子書籍といえば、ハードウェアであるデバイスに目が向けられがちだが、実際に読書するユーザーの立場からすればソフトウェアであるビューアの重要性は決して小さくない。どんな素晴らしいディスプレイデバイスを使っても、フォントや文字の大きさ、行間といった「読みやすさ」に直結する設定がユーザーの好みに合致しないと非常に苦痛だし、読むことに付随する行為の操作性がしっくりこないと疲れるだけだ。電子ペーパーだ自発光ディスプレイだとディスプレイデバイスにこだわるのであれば、サービスごとに異なるビューアの機能性、操作性にも注目してしかるべきだろう。

※なお、「XMDFビューアであればすべて、サービス限定DRMが設定されていない書籍を読める」というわけではない。「サービスCで購入した書籍」を読むためには、サービスDのXMDFビューアが「外部ファイルを読み込む」機能を有している必要がある。

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