「さようならT-Time、こんにちはHTML5」――ボイジャーが新ビューワを披露国際電子出版EXPO Report

ボイジャーが国際電子出版EXPOで新ビューワを披露。T-Timeの表示機能をWebKitに対応させることで、Webブラウザベースのビューワとした。

» 2011年07月09日 00時00分 公開
[西尾泰三,ITmedia]
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 ボイジャーといえば、出版業界で知らぬものはいないのでないかとさえ思えるほどよく知られた存在だ。特に、同社が手掛ける「ドットブック(.book)」という電子書籍のファイルフォーマットは、講談社、角川書店、新潮社、文藝春秋など、大手版元が採用しており、国内の電子書籍を語る上で欠かすことのできないフォーマットである。

 そんなボイジャーが、7月9日まで東京ビッグサイトで開催中の「第15回国際電子出版EXPO」で、まったく新しい電子書籍ビューワを参考展示している。

読書はブラウザにシフトする

HTML5に対応するブラウザがあれば、PCやスマートフォン、タブレットを問わず簡単に利用できる

 同社はこれまで、Windows、Macintosh向けに電子書籍ビューワ「T-Time」を提供するだけでなく、T-Time Plugin、T-Time CrochetといったWebブラウザ用プラグインも提供し、多様な読書環境を提供してきた。今回の発表は、T-Timeの表示機能をWebKitに対応させたというもの。これにより、HTML5に対応しているWebブラウザであれば、プラグインなどを追加でインストールすることなく、そのままビューワとなる。同社は、Webブラウザを用いたこの新たな読書システムの総称として「Books in Browsers」と名付けている。

クリック長押しなどで設定メニューなどを簡単に呼び出せる。ページ送りはページ端でマウスクリックが基本だが、キーボードでの操作も可能になるとみられる
縦書きや横書きの切り替えも容易。右の写真では、図版部分が動画であることが分かる

 コンテンツを表示した状態でソースをみても、文字要素などは確認できなかった。説明員によると、これは基本的にはイメージ型の表示形態だが、文字属性は別に持っているため、全文検索なども行えるという。

システム構成図。どの電子書籍ストアが最初に採用するのだろうか

 Books in Browsersでは、ソースとなるコンテンツとして、ボイジャーの.bookだけでなく、EPUB 3.0、PDF、TXTに対応するという。EPUB 3.0脅威論など、ボイジャーにはどこ吹く風だ。会場では、動画を埋め込んだコンテンツのサンプルも展示されており、それぞれのフォーマットの特徴を生かせるようにする姿勢が見て取れる。

 同社はこの新たなビューワのβ版を2011年秋にリリース予定だという。これまで.book形式の電子書籍を読むには、例えばPCであればビューワやその関連プラグインなどをインストールする必要があった。そうしたいわばレガシーな環境を捨て、HTML5ベースにかじを切ったというのは非常に興味深いといえる。

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