仕様をオープンにする「超本棚」構想を明かす大日本印刷国際電子出版EXPO Report

大日本印刷とインプレスR&Dは、電子書籍ストアとビューワが乱立する状況を改善するため、「オープン本棚(仮称)」を共同開発した。仕様をオープンにすることで、他社の参加を呼び掛けていく。

» 2011年07月07日 20時30分 公開
[西尾泰三,ITmedia]

 大日本印刷とインプレスR&Dは7月7日、読者の利便性を最大化するための電子書籍用ソフトウエア「オープン本棚(仮称)」を共同開発したことを明らかにした。7月7日から東京ビッグサイトで開催中の「第15回国際電子出版EXPO」の大日本印刷ブースでAndroid向けの試作版が参考展示されている。

 この「オープン本棚」は、現在の電子書籍が抱える多くの問題――電子書籍ストアごとにファイルフォーマットやビューワが異なるため、一元的に管理できないという問題――を解消しようとするもの。

「オープン本棚(仮称)」の概要

 この構想を端的に表現すると、各電子書籍ストアアプリまたは各ビューワアプリのハブとして振る舞うインタフェース(参考展示されていたものは“超本棚インタフェース”と命名されていた)を提供するということになる。ジャンルや著者名での並び替え、仕切り板の追加/削除、背表紙を画面上でドラッグすることで好きな場所に移動させることができる機能などが超本棚インタフェースの基本機能で、ビューワについてはアプリ間連携によってファイルフォーマットに合わせたものを呼ぶ仕様が想定されている。

 各電子書籍ストアと各ビューワのハブとなるためには、それぞれのインタフェースを定義し、それに賛同してもらう必要がある。そしてこれこそが、この構想の鍵だといえる。両社はインタフェース部分の仕様を定義するとともに、それをオープンソースで公開、連携が容易に行えるようにする予定。また、アノテーション部分の仕様なども定義することで、しおりやアンダーラインなどの情報の統合も視野に入れているほか、プリントオンドマンドなどのサービスと連携する機能の実装も計画しているという。

第15回国際電子出版EXPOの大日本印刷ブースで参考展示されている「超本棚インタフェース」

 大日本印刷のブースで参考展示されていた「超本棚インタフェース」を見ると、本の背表紙データが使われていることが分かる。これは、実際の本棚のような外観イメージに近づける意図と、スマートフォンなどの画面サイズで一覧性を高める意図があると思われるが、一般にこうした背表紙のデータは標準的なものが存在しない。大日本印刷とインプレスR&Dの取り組みでは、こうした部分の定義も進められているようだ。なお、現時点ではAndroid版のみだが、iOSやWindowsなどもサポートしていく意向だという。

 9月にはAndroid向けにβ版をリリース予定としており、この時点で少なくともトゥ・ディファクトの電子書籍ストア「honto」がこれに対応すると考えられる。また、大日本印刷と連携している富士通の電子書籍ストア「BooksV」などもこの輪にいち早く加わる可能性があるだろう。

 6月には、紀伊國屋書店、ソニー、パナソニック、楽天が、電子書籍の利便性向上に向けた取り組みを共同で検討していくことで合意しているが、オープン本棚構想は仕様をオープンにすることで、より広範な取り組みとなりそうだ。そのほかの電子書籍ストアがどのように反応するかが注目される。

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