小沢 この仕事を始めて分かったんですけど、書店員さんというのはすごく面白い。書店員さんが棚を作るという作業は、いわば編集なわけです。しばらく見ていると、このお店の棚は好みだとか、自分とは合わないだとか、だんだん見えてきて。
藤井 分かる分かる。
小沢 棚を見ると書店員さんの年齢とか性別も分かるようになりますよ。でもまだまだ一般の人には、書店員さんの面白さは伝わっていない。そういう魅力も伝わりそうな気はしますよね。
── この座談会では編集というキーワードがあちこちで登場しますが、一色さんはブログで、編集経験のある人を起用して、作品を選別したり、関連性のある作品を引っ張ってくることができれば面白いとおっしゃっていましたよね。同じ作家の作品であれば検索すれば済みますけど、テーマで結びつけたり、あるいは作家の元アシスタントの作品だったりといった有機的なチョイスは、編集の仕事になる。そこにレコメンド機能で、この本を買った人はこの本も買っている、が加わればさらに深くなる。
一色 そのヒントになったのはTwitterなんですよね。Twitterでいろいろな方をフォローしている中で、お勧めされる本に興味を持ち始めるわけですよ。実際に何冊も買ったりするし。
小沢 僕もそれで1日1冊くらい買っています。
一色 信頼できる人が面白いと言っていて、しかもきちっとした感想がついているというのは、重要な情報ですよね。食べログもそうじゃないですか。
小沢 食べログで自分と感覚が合うレビュアーさんを見つけると重宝しますよね。
一色 そうそう。そういうこととちゃんとリンクすれば、面白い本を探すことができるだろうと。書店員さんがこだわって作った本棚って、見てて面白いので。
藤井 版元さんの枠を超えますからね。
一色 でも電子書籍はまだそれがないんですよ。一生懸命探し出して、はい面白かったです、でもそれがどこにつながるわけでもない。
藤井 ボーイズラブでは辛うじてありますね。メガネ萌えとか属性があるから(笑)。ほんとすごいですよ、BLの電子書籍の検索は。メガネ、白衣、年上、ってやるとちゃんと書籍が出てくる(笑)。
小沢 それ見たい(笑)
一色 ビデオ屋のアダルトコーナーのジャンルですよね。熟女モノとか。
藤井 30代、40代、50代みたいな(笑)。でも、リアルな書店さんでもできると思います。書店員さんは本当に本をよく知っているから。
一色 例えばブクログだと特定の人の本棚などが見られたりしますが、それを束ねていけば面白いだろうなとは思います。紙の本に足りないのは、そういう相互のネットワークが構築可能であるはずなのにできてないことと、後は速配性ですかね。いずれも実現できないわけではないと思いますけど。
小沢 ただ、そのシステムができれば、速配性はむしろなくてもいいかもしれませんよ。昔の本でも、うちはこの手の本なら全部そろえてますといった、専門書店的な機能がどんどん増えていけば、古い本の発掘にもなるじゃないですか。別に新しい本が必ず面白いわけではなくて、その人に価値がある本であればかまわないわけで。
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