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» 2011年06月28日 10時30分 公開

うめ・小沢高広×一色登希彦×藤井あや:電子書籍における漫画インタフェースを大いに語る(後編) (2/5)

[山口真弘,ITmedia]

「外回りのシステムは食べログで、それにPOSをリンクさせればできる」(小沢)

うめ・小沢高広さん うめ・小沢高広さん

── ある作家さんの本をもっと読みたいと思ったときに、紙か電子かに関係なく網羅的にその作家さんの著書を検索する方法が、現状あまりないんですよね。著作リストは作家さんの公式サイトやWikipediaに行くと見つけることはできますけど、紙だったらここに在庫があって、電子書籍ならこのサイトで買えるといった情報は得られない。もったいない話だと思います。

小沢 かといって版元もそこまでフォローできないですしね。ネットショップについて言えば、特定のネットショップだけをプッシュするわけにもいかなくて、かといって全部にリンクを張るわけにもいかないから、結果的にどこにも張れないというしがらみがありますし。

── となると、一色さんの案のように、住所なり現在地から近接する書店の在庫状況や、オンラインショップの在庫、電子書籍の販売状況などを横断的にリストアップできるのなら、それは合理的な気はします。

一色 これから家に帰ろうというときに、帰り道に幾つか書店があると想像してみてください。よっぽど根性と熱意がなければ、在庫を探すためだけに書店のハシゴはしませんよね。でもそれが検索できて、この書店には何冊、あっちには何冊あるらしいと分かれば、行って買えるじゃないですか。多くの書店はPOSシステムで在庫をコントロールしているわけだから、検索を全部つなげてしまえば不可能じゃない。

小沢 サービスのアーキテキチャとしては、食べログと同じでいいんですよ。後はそれにPOSをちゃんとリンクさせればできますよね。アプリ化しなくても、Webサービスで提供するような方法もあるでしょうし。

食べログのスクリーンショット。POSのデータと結びついたナビゲーションアプリは登場するだろうか

藤井 食べログって、どんなジャンルの料理を食べたいとか細かな条件で検索できるじゃないですか。本でも、例えばキュンキュン来るやつとか、泣けるやつとか、検索できると面白い(笑)。

小沢 そうしたものをソーシャルリーディング的に付与していける可能性はありそうですよね。人によってキュンキュンのツボは違うけど(笑)。そういう属性を指定して、後は自分の年令と性別のパラメータをつけて、例えば20代女子がキュンキュンする作品、みたいな検索クエリができると、ブックナビゲーター的な面白いサービスができそうですね。

一色 後、みんなの感想も読めたりもする。Amazonのレビューよりはもうちょっと気の利いたやつ。著者が自演したりとかそういうのはやめて、Twitter連動で、面白かったとか、これはイマイチだとか。それが作品に対してなのか、本屋さんに対してかなどで軸は幾つかできますね。

藤井 この店はミステリーがそろってるよとか書ければ、ミステリーが好きな人が集まったりするかもしれないと。

小沢 技術的にはPOSのデータをどうやって開放させるかが鍵になりそうですね。まぁ、昔ながらのレジでチーンと打ってるような書店まで含めるのは難しそうですけど。

── 在庫があるということで店に行ってみると、立ち読みで手垢がつきまくったヨレヨレの表紙のやつが出てくる可能性もあるわけですが、それは仕方ない。

一色 それはあるかもしれないし、万引きされちゃって、在庫データがあるのに実在庫がないこともあるかもしれない。でもそれは仕方がないですよね。

「街の本屋さんをスマートグリッドの考え方でもう一回活性化させたい」(一色)

藤井あやさん ウェブリオグラフィ構想を聞いて議論はヒートアップ

小沢 GPSの情報と地図サービス、POSデータを含めたそして本屋の情報をマッシュアップできれば、作成可能なサービスですよね。

藤井 書店さんも、評価が付いて客観視できることで、店の個性が出せるようになるかもしれない。わたしはGペンや丸ペンのペン先を置いているという理由で、しょっちゅう通っている書店がありましたからね。本以外のものを置いているところだって、ここにあると分かれば、来てくれる人がいるかもしれない。いまはラノベがそろってますといった、ざっくりした振り分けしかできてないですけど。

小沢 ただ、これを出版業界が音頭をとってやるのは、いろいろなしがらみがあって、恐らく難しい。だから外部のIT系のWebサービスをやってるような会社が、ぱーんとやってほしいところです。

一色 もちろんそれができればいいですけど、それは既存の版元や取次が喜ばないんですよね。何だか分からないのが来た、そういうのに門戸を広げるわけにはいかん、本屋を潰す気か、みたいな方向に話が流れてしまう。出版があって取次があって、末端の書店がきちんとしていて、ようやく人の手に本が届くネットワークだったはずなのに。街の本屋さんをスマートグリッドの考え方でもう1回活性化させて、そこにちゃんとユーザーが参加できるようにすることが重要だと思います。

小沢 ローカル性を出している本屋さんって実はたくさんありますからね。「南国トムソーヤ」の取材で石垣島に行ったんですが、沖縄でしか流通してない本がたくさんありましたし、武蔵美(注:武蔵野美術大学)に行く途中、鷹の台から降りてまっすぐ行った左側にある小さい本屋さんには、大友克洋の昔の漫画が全部そろっていたりしました。あ、これは美大生向けだなという。

一色 実際に足を運ぶ人だけが知っている面白い本屋というのは意外に多いですね。そういうところにキュレーターに近い書店員がいるとしたら、いろいろ教えてもらうこともできる。さらに、Amazonと同じくらいの迅速さで、どんな本でも翌日届くようになったら、街の本屋さんはもう一回ちゃんと成立するんじゃないでしょうか。

小沢 Amazonのプレミアムに入っていると、朝頼むとだいたい夜には届いて非常に助かるんですけど、お昼ごはんを食べに行ったついでにその近所でそれが売ってたら、そっちで買っちゃうと思う。

一色 近所の本屋に在庫がないことが分かっているからAmazonに頼ってしまうのであって、行きがけの本屋さんにあるとか、明日届くのであれば、利用すると思うんですよね。

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