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» 2011年06月27日 11時00分 UPDATE

うめ・小沢高広×一色登希彦×藤井あや:電子書籍における漫画インタフェースを大いに語る(中編) (1/4)

漫画が電子書籍として配信されるケースが増えている中、漫画家の意見はどこまで反映されているのだろうか。うめ・小沢高広氏、一色登希彦氏、藤井あや氏という電子書籍の出版経験を持つ現役漫画家が思いのたけを語り尽くす対談特集の第2弾をお届けする。

[山口真弘,ITmedia]

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「課金体系と本の品そろえがあればうまくスマホにスライドしてくれるのに、追いついていない」(藤井)

藤井あやさん 「桃色男子」「男巫女」などの作品で知られるボーイズラブ系漫画家の藤井あやさん

── 昨今では携帯電話の販売シェアでスマートフォンが5割を超えるなど、これまでのケータイ、俗にいうガラケーが減りつつあります。ケータイコミックを出されている立場として、藤井さんはこの状況をどのように感じていますか。

藤井 わたしのジャンル(注:ボーイズラブ系)に関しては、ガラケーからの移行はしばらく掛かるかもしれないという認識です。ただ、ガラケーでポイントや会員制といった形でお金を支払って読むのが定着している方は、スマートフォンに移行してもお金は払ってくださると思うんですね。

── ただ、スマホでうまい課金体系がないとも言われている。

藤井 そこですよね。課金体系と、本の品そろえがあればうまくスライドしてくれると思うんですけど、それが追いついていない。

小沢 グリーじゃないけど、スマホの中にガラケー的なシステムを誰か持っていけよという話ですよね。iPhoneじゃ難しいけどAndroidだったらできそうですし。それこそ「ガラケー」っていうアプリを最初に作ってしまえば(笑)。

藤井 そうそう。ただ、Androidの端末も、画面解像度がバラバラだったり、技術的なところでちょっと難しいのかもしれませんね。

── 藤井さんのお描きになっているジャンルがうめさんや一色さんと違うのは、こっそり隠れて読みたいというニーズが強いことですよね。みんながみんな、大画面の端末で読みたいわけではないという。

藤井 そう。ケータイコミックの市場をいま支えているのはそういう人たちで、それは男性向けでも多分同じ。

一色登希彦さん 「日本沈没」「モーティヴ ー原動機ー」「ダービージョッキー」などの作品で知られる一色登希彦さん

一色 こっそり読みたいものって、電車の中で読めるものなんですか。読んでたら周りに何を読んでいるかバレちゃうのではないかと思うんですけど。

藤井 いまの女子高生とかは読んでるんじゃないですかね。そこまでえげつないものは配信していませんし。むしろ問題は、女の子はとにかく持ち物が多いから、化粧道具を持ってほかにいろいろ持って、さらに電子書籍端末っていうのはハードルが高いのではないかということです。せめてこのサイズ(注:6インチ)ですかね。わたしもiPadは重いから持ち歩いてないですもん。

── そうなるともう、端末の価格以前の問題ですよね。

藤井 ちなみに、これ(注:GALAPAGOSのモバイルモデルを指して)ってお幾らですか?

── 3万9800円です。

藤井 若い女の子が、本を読むために4万円出すかといったら出さないですよね。

小沢 しかも本そのものではなく、本棚のためにってことですし。ガラケーで漫画が読める利点というのは、電話の「ついで」に読めるからですよね。

藤井 そう。すでに持っているケータイを使って、待ち時間などに読める。本を読むためだけに4万円近いお金を出して、これだけの大きさのものを持ち歩くのなら、いままでのガラケーでいいやってなりますよね。ましてやコンテンツがまだそろっていませんし。読みたいと思わせるものがそろっていれば読書好きの人は買うでしょうけど、器だけで中身がないんじゃどうしようもない。

── その結果として自分で紙書籍をスキャンしてデータ化する「自炊」がもてはやされているわけですからね。

一色 “自炊”すれば確かにこういうデバイスで読めるだろうけど、僕はわざわざやる価値を見いだせていないんですよね。

小沢 本棚が空きますよ。

一色 でも、そのためだけに熱心に“自炊”する人ってそんなにいるものなんですか。面倒だから僕はやらないかな。CDをインポートするみたいに、例えばある漫画の単行本をPCに放り込むと、それが自動的に裁断/スキャンされて電子化されるということになれば、それはやりたいですけどね。

小沢 CDのインポートに比べると“自炊”ははるかに面倒くさいですからね。いまの“自炊”を音楽に置き換えると、スピーカーの前にマイクを置いて音楽を録音しているようなものですし。

── 自炊したファイルがDRMフリーであることも大きいですよね。端末を買い替えたり、電子書籍サイトが潰れて購入したものが読めなくなるかも、という心配をしなくて済む。そこにメリットを感じる人は多いんじゃないでしょうか。僕もそうですけど。

小沢 僕がパブーを好きなのは、PDFでデータをローカルに保存できるところなんです。もちろんクラウド的なのものも流行り的にはいいと思うんですけど、手元で保存しておける気持ちよさ、安心感というのはありますね。

── 最初はPDFでの配布を大きくアピールしていた「Jコミ」も、今はWebのビューワがメインになってきていると。それはどちらかというと広告の関係で、今後も人気タイトルについてはPDF化を進めるそうなのですが、Twitterなどを見ている限りでは、PDFで手元に置いておきたいという読者の要望は多いですね。

一色 PDFだと、コレクションしている感じはありますよね。僕は逆に、ダウンロードしてデータを保管しておくのが面倒だから、オンラインで閲覧する形式の方がいいんじゃないかなと思ったりすることもあります。もちろん地下鉄に入ってネットワークが途切れると読めないといった問題があるので、悩むところですが。

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