タッチスクリーン採用新型「NOOK」ファーストインプレッションKindle 3を上回ると評される1台

6月上旬に米書店チェーンBarnes & Nobleが発売したタッチスクリーン採用電子書籍端末「NOOK」を店頭で購入して試してみた。Kindle 3の最も有力なライバルの実力やいかに。

» 2011年06月25日 22時00分 公開
[佐々木千之,ITmedia]

 米書店チェーン最大手Barnes & Nobleが5月24日に発表し、6月上旬に販売開始した新型「NOOK」(NOOK 2nd Edition、以下NOOK 2)を実際に店頭で購入して試してみた。タッチスクリーンを採用したNOOK 2はKindle 3を上回る評価を得るなど米国電子書籍ユーザーの注目度も高い製品だ。本記事ではそのファーストインプレッションをお送りする。

 NOOK 2はBarnes & Nobleの各店舗だけでなく電気製品小売りチェーンBestBuyなどでも販売されているが、今回はニューヨーク市内のBarnes & Nobleの5番街店で購入した。筆者はこれまで5店ほどBarnes & Nobleを訪れているが、いずれも入り口近くにNOOKコーナーが設置されていて、専門の販売員もついてNOOK各バージョンの実機とカバーなどのアクセサリーが売られている。NOOK 2の価格は139ドル(税別)、現在は1ドル80円台の円高ということもあり、日本円では1万2000円弱となる。

スペックで見る「NOOK 2nd Edition」

価格 139ドル
OS Androidベース
サイズ 165.4×126.6×12.0ミリ
重さ 212グラム
画面サイズ 6インチ
解像度 600×800、モノクロ16階調
ディスプレイ E Ink Pearl/タッチスクリーン
通信方式 802.11 b/g/n
内蔵メモリ 2Gバイト
メモリカードスロット microSD(最大32Gバイト)
バッテリー持続時間 3週間(Wi-Fiオン)/2カ月(Wi-Fiオフ)
対応フォーマット EPUB、PDF、JPG、GIF、PNG、BMP

シンプルなパッケージ構成とセットアップ

 NOOK 2のパッケージはカラー印刷で小さくて軽い。KindleがAmazonの(製品サイズにしては大きめの)段ボール製パッケージなのとは対照的だ。中にはNOOK 2本体とACアダプター、USBケーブル、9ページほどのクイックスタートガイドが入っていた。なお、クイックスタートガイドと詳しい説明書(ユーザーガイド)は、電子書籍コンテンツとして本体内にインストールされている。

NOOK 2のパッケージと本体 NOOK 2のパッケージと本体、ACアダプター、USBケーブル

 まずはガイドに従ってバッテリーを充電した。本体下部に充電とPCとの接続用のマイクロUSBポートがあり、充電時にはその横にある小さなLEDが点灯する。残量0からフル充電まで3時間ということだが、1時間ほどで完了した。仕様ではWi-Fiオンで3週間、Wi-Fiオフで2カ月持つという。初代NOOKではユーザー自身がバッテリーを交換できたが、NOOK 2では内蔵となりユーザーレベルでは交換できなくなった。

 背面上部にある電源ボタンを2秒ほど押して離すとシステムが起動し、1〜2分ほどでウェルカムスクリーンが表示される。この後、1)利用規約への同意画面、2)Time Zoneの設定(米国内の8つのTime Zoneしか選択できない)、3)Wi-Fi接続設定(Wi-Fi環境がなければセットアップできない)、4)ユーザーアカウントへのログインまたは作成(米国内の住所が必要。あらかじめBarnes & NobleのWebサイトでアカウントを作っておくこともできる)、と進む。ログインが終了すればセットアップは終了、あとは使うだけだ。

NOOK 2のシステム起動時に表示される画面(写真=左)/初回起動時に表示されるウェルカムメッセージ。Nextをタップするとセットアップ開始(写真=中央)/利用規約への同意画面(写真=右)
NOOK 2は初期設定で利用可能なWi-FiをサーチしてSSIDを表示する。ユーザーは任意のSSIDを選択して必要ならパスワードを入力し、接続する(写真=左)/アカウント入力画面。Barnes & Nobleのアカウントを持っていればここでそのままログインする。なければCreate Accountを押して作成する(写真=中央)/正しくログインできると最初にこの画面が表示される(写真=右)

タッチスクリーンによる操作はとても快適

滑り止め加工されたボディは手になじむ感触。文庫本より一回り大きい 滑り止め加工されたボディは手になじむ感触。文庫本より一回り大きい

 NOOK 2の厚みは最大で12ミリ。Kindle 3(8.5ミリ)のように薄いとは感じないが、ボディ表面に施された滑り止め加工と背面の凹凸デザインによって、手に持ったときにしっくりとなじむ。ハードウェアボタンは電源スイッチのほかはページめくりボタン(Page Turn Bottons)と、スリープ状態から復帰させたりナビメニューを表示させたりするためのクイックナビボタン(Quick Nav Botton)だけだ。

 NOOK 2はディスプレイ部分に米E Inkの「Pearl」スクリーン(600×800ドット)を採用、タッチスクリーンと組み合わせている。タッチスクリーンではないPearlを採用しているKindle 3と比較してみたが、目視ではその表示品質に差はなく、タッチスクリーン機能の追加による表示への影響はないようだ。なお、どちらも画面サイズは6インチとしているが、実測したところKindle 3が122×90ミリに対し、NOOK 2は123×91ミリと若干大きかった。

NOOK 2をiPad、Kindle 3と並べてみた 大きさの比較のため、NOOK 2をiPad、Kindle 3と並べてみた

 タッチスクリーンによるNOOK 2の使い心地はとても快適だ。本体左右にはページ送りのためのボタンがあるが、誤動作を防ぐためか少し固めで、本のページをめくるにしては力がいる。スクリーンの左右の端を軽くタップしたり、左右になぞる(スワイプする)ことでもページめくりができるので、ページめくりボタンはすぐに使わなくなってしまった。

電子書籍コンテンツを読むときに利用できるジェスチャーNOOK 2のナビゲーションの基本となる「Home」画面 電子書籍コンテンツを読むときに利用できるジェスチャー(写真=左)/NOOK 2のナビゲーションの基本となる「Home」画面。いま読んでいる本や最近読んだ本、購買履歴によるおすすめなどが表示される(写真=右)

 筆者は日ごろiPhoneやiPadを使っているせいか、Kindle 3の操作でもつい画面を触ってしまって「あ、違った」とキーボードでやり直すことがある。しかし、NOOK 2は目次から目的の章にジャンプするときはそのまま目次をタップすれば良いし、文章中のメモや辞書を引くときもその場所をタップするだけで選択できるので操作はとても分かりやすい。検索時に表示されるソフトウェアキーボードも入力で困ることはない。ディスプレイ表面はノングレア処理されていて、指で触ってもさらさらしている感じで指の脂や指紋が目立つようなことはなかった。

 NOOK 2は、Kindleのように音楽再生機能はなくNOOK Colorのようにゲームなどのアプリケーションもサポートしないが、価格を抑えつつ電子書籍を読む機能に徹してよく作り込んだ製品という印象だ。米国内においてNOOKはこれまで以上にKindleの強力なライバルとなりそうだ。

 NOOKの特長である店舗でのサービスなどについては稿を改めてお届けする。

筆者紹介 佐々木千之

1966年生まれ。パソコン通信、インターネット、DOS/V雑誌などの編集を務めたのち、IT系Webニュースに記者・編集者として長く関わる。元ITmedia News編集長、前環境メディア編集長、1topiサイエンス キュレーター。現在はフリーランスでニューヨーク近郊に在住。


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