コミック最新刊は電子書籍ストアで買える? 各ストアをチェック

電子書籍ストアがたくさん立ち上がっているのだから、自分の欲しい作品の最新巻も電子コミックで買えるはず……実際に試したところ、予想外の結果となった。

» 2011年06月02日 18時40分 公開
[eBook USER特別取材班,ITmedia]

人気コミックの最新巻は電子コミックで提供されているか

デッドマン・ワンダーランド デッドマン・ワンダーランドの最新巻を電子コミックで読みたい……最初はそんな軽い気持ちだった

 角川書店の「月刊少年エース」で連載中の「デッドマン・ワンダーランド」という作品をご存じだろうか。4月からテレビアニメ化された同作品は、漫画版「交響詩篇エウレカセブン」の2人による最新作でもある。

 不覚にもテレビアニメによってその存在を知った私は、早速原作となった漫画を読んでみようと思い立つ。調べてみると、コミックは10巻まで発売されており、9巻は3月26日に、10巻は5月26日に発売されている。

 近くの書店に買いに行くか、あるいはAmazonで注文してもよいのだが、世の中でこれだけ電子書籍が騒がれているのだから、ここは電子版を選択してみようと考えた。幸いにして昨年から電子書籍ストアがたくさん立ち上がっているし、電子版であれば部屋のスペースも圧迫することもない――早速、電子コミックを扱っている幾つかの電子書籍ストアをピックアップした。中でも、BOOK☆WALKERは角川グループが運営しているのだから、当然角川書店から刊行されているデッドマン・ワンダーランドも電子化されたものが販売されているだろう。そんな風に考えていた。

 しかし、現実はそうではなかった。以下が主要な電子書籍ストアにおけるデッドマン・ワンダーランド(電子版)の販売状況だ。

電子書籍ストア デッドマン・ワンダーランド(電子版)販売状況
BOOK☆WALKER 9巻まで販売
eBook Japan 8巻まで販売
パピレス 取り扱いなし
BookLive! 取り扱いなし
honto 取り扱いなし
TSUTAYA GALAPAGOS 取り扱いなし
Reader Store 取り扱いなし
LISMO Book STORE 取り扱いなし

 以上から、「デッドマン・ワンダーランド」の電子版は限られた電子書籍ストアでのみ購入できるのだということが分かった。上述した電子書籍ストアの中には、現時点で活字ものをメインで扱っているところも含まれているので、コミックに特化したストアとラインアップに違いがあるのはまだ納得できるが、電子書籍ストアはどれも同じというわけではないというのはある種の驚きだった。

 しかしさらに驚いたのは、同作品の版元である角川書店ですら、最新刊は電子コミックで提供していなかったということだ。ユーザーとしては、最新刊の電子版もできるだけ早く――可能であれば紙と同時に――発売してほしいというのが率直な感想だが、出版社としては紙を購入してほしい、ということだろうか。

 ここから、ある仮説を立てることができる。つまり、「現在連載中の人気コミックタイトルの最新刊は電子版が提供されていない」という仮説だ。これは言い換えれば、売れている――出版社の力が強い――作品は、さまざまな事情から電子化がさほど進んでいないという新たな仮説でもある。

GANTZは? ISは? 人気作品の電子コミックは販売されているか

これらの作品の電子コミックは販売されているか?

 これを検証するために、もう2作品ほど追加で検証してみよう。1つは、月刊コミックアライブで連載中の「インフィニット・ストラトス」(コミック最新巻は3月発売の2巻)、もう1つは、週刊ヤングジャンプで連載中の「GANTZ」(最新巻は4月発売の31巻)を適当に選択してみた。前者はメディアファクトリー、後者は集英社からコミックが販売されている。いずれもテレビアニメ化または映画化されており、よく知られた作品といえる。

 以下が各電子書籍ストアにおける両作品(電子版)の販売状況だ。

電子書籍ストア IS販売状況 GANTZ販売状況
BOOK☆WALKER 取り扱いなし 取り扱いなし
eBook Japan 取り扱いなし 取り扱いなし
パピレス 1巻のみ販売 取り扱いなし
BookLive! 取り扱いなし 取り扱いなし
honto 取り扱いなし 取り扱いなし
TSUTAYA GALAPAGOS 取り扱いなし 取り扱いなし
Reader Store 取り扱いなし 取り扱いなし
LISMO Book STORE 取り扱いなし 取り扱いなし
「インフィニット・ストラトス」「GANTZ」の電子版販売状況

 ここに至って、鈍感なわたしもようやく理解することができた。ことコミックについて言えば、電子書籍はまだまだこれからなのだと。

 こうした結果となった理由は幾つも考えられる。現時点では、スマートフォンやタブレットを利用しているユーザーの絶対数がビジネスとして採算に合うものではない可能性、それ故に出版社が売れ筋のタイトルを電子化することに意義を見いだしていない可能性などだ。GANTZの例で言えば、集英社はフィーチャーフォン向けには「集英社マンガカプセル」といったサイトを用意し、ここでケータイコミックとして配信している。将来的にはこうしたサービスがスマートフォンやタブレット向けにも展開されるのかもしれないが、それはまだ少し先の話のようだ。

 次回は、各出版社や電子書籍ストアを運営する企業にこの辺りの意向を尋ねてみたい。

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