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» 2011年03月31日 16時29分 UPDATE

用紙・インキなど印刷資材の調達に苦慮――印刷業界

東北関東大震災から間もなく3週間。新聞や雑誌などの印刷を行う現場では今なお混乱が見られる。特に、インキなど印刷資材の調達では原材料の供給が落ち込んでおり、全体として供給量が落ち込んでいる。印刷業界の状況をまとめた。

[西尾泰三,ITmedia]

 東北関東大震災から間もなく3週間。出版業界はコンテンツホルダーである出版社からPDFの無料配布などのアクションが見られるようになってきたが、印刷を行う現場では今なお混乱が見られる。

 用紙生産の被害状況についてはすでに「用紙生産工場にも被害――日本製紙など」で取り上げた。日本製紙では3月31日現在も、5つの主要工場のうち3工場が全停止状態にあり、用紙の供給量はしばらく厳しい状況が続くと思われる。

 ここでは、東北関東大震災に関する印刷業界の最新動向を紹介する。

印刷会社大手3社は復旧が進むが……

 3月31日時点の印刷会社大手3社の状況をまとめておこう。

 大日本印刷は3月17日に、宮城県仙台市にあるDNP東北などが被災し、一部操業を停止したと発表。翌18日には、当該地区のグループ社員全員の無事を確認したが、DNP東北のほか、福島県南相馬市にあるDNPファインケミカル福島が操業を停止していることを明らかにした。その後、状況は報告されていない。

 凸版印刷は3月16日に、宮城県仙台市泉区にある仙台工場のほか、宮城県石巻市にあるトッパンコンテナー宮城工場、茨城県水戸市城東にあるトッパンプロスプリント水戸工場が被災、操業を停止したと発表。3月29日には、当該地区のグループ社員全員の無事を確認した。被災した生産拠点も、宮城工場が操業を再開、仙台工場も一部の生産を再開したと報告している。ただし、水戸工場は依然停止したままだ。

 共同印刷は3月14日に、「当グループの一部工場において建物および製造設備が損傷するなどの被害を受けております」と発表、3月25日になって復旧状況を明らかにしており、人的被害について「大きな被害はなかったが、2名の軽傷者が出た」と報告している。生産拠点については、茨城県北茨城市にある常磐共同印刷の磯原工場で建物や製造設備に軽微な損傷があったと明かし、工業用水の復旧を待って操業再開の見込みとしている。それ以外の各事業所/工場は、既に復旧し操業を再開したという。

印刷資材の調達は上流から厳しい状況、代替原料の使用も

tnfigink1.gif 印刷インキ工業連合会が3月25日に出した「印刷インキの生産出荷に関する危機的状況について」は厳しい状況がつづられているが、3月31日現在、状況は幾分改善したという

 ここまで、印刷会社の状況を見てきた。生産設備などの復旧は進んでいるが、さらに深刻なのは、用紙・インキといった印刷資材の調達の滞りや計画停電の実施、ガソリン不足による物流の停滞などであるといえる。とりわけ、印刷に欠かせないインクの調達が困難な状況にあることが印刷インキ工業連合会から報告されている。

 印刷インキ工業連合会は、首都圏に事業所のあるインキ企業が設立した「印刷インキ工業会」と、関西圏に事業所のあるインキ企業が設立した「印刷インキワニス工業会」で結成された連合会。同連合会は3月25日付けで「印刷インキの生産出荷に関する危機的状況について」というプレスリリースを出している。

 同リリースによると、「連合会がコントロールできる範囲を超えた悪環境が重なり、生産体制のみならず、原料調達、製品出荷にわたるサプライチェーンすべてに不測の事態が発生している」と危機感をあらわにしている。

 オフセットインキや新聞インキの主要原料であるロジン変性フェノール樹脂、グラビアインキの原料となる有機顔料や酸化チタン、メチルエチルケトンなどを扱う化学関連企業が東北関東大震災でプラント火災や製品倉庫の荷崩れなどの被害を受けており、原材料の調達は厳しい状況下にあるという。

 例えば、ロジン変性フェノール樹脂の生産を手掛ける荒川化学工業は、福島県いわき市にある小名浜工場が操業を停止している。さらに、東日本大震災でコスモ石油千葉製油所(千葉県市原市)のLPGタンクが被災したのに伴い、隣接する丸善石油化学の千葉工場も大きな影響を受けている。

 コスモ石油千葉製油所は、コスモ石油が有する最大の原油精製処理能力を持つ設備。ここで精製してできたナフサは、丸善石油化学の千葉工場でエチレンなどに加工し、合成樹脂をつくる石油化学メーカーに販売しているが、千葉工場の一部のエチレン製造装置が稼働を停止しており、インキの原材料は上流から供給が途絶えている状態が続いている。

 プレスリリースでは、「かつて経験したことのない業界環境の渦中にあるという、まさに”非常事態”」と表現されている。特に、新聞インキの資材調達の環境は日々悪化しており、この状況が続くなら、数週間から1カ月後には製品及び原料在庫が途切れる可能性があるとし、印刷物製作の現場に対し、色数やサイズ(頁数)、インキ使用量に「特段の」配慮を求めている。

 3月31日に印刷インキ工業連合会に確認したところ、代替原料などを用いながら供給最優先で生産しており、予断を許さない状況ではあるが、生産状況はプレスリリースを出した3月25日時点から幾分か好転している感触があるという。代替原料を使うことによるコスト高などがじわじわと影響を及ぼしそうな予感もあるが、まずは供給最優先で望む姿勢であるとしている。

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