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電子書籍は元年から“熟成”へ:ジャーナリスト神尾寿×幻冬舎が電子書籍の現状と期待を語る (1/2)

2010年を「電子書籍元年」と位置づける国内電子書籍市場。そこには、シャープがこれまで培ってきた技術をベースに、電子書籍という接点で“読書の楽しさ”を感じてもらいたいという出版業界の思いも込められている。ジャーナリストの神尾寿氏が、出版社およびメディアの観点を踏まえ、今後の電子書籍市場を一望する。

[神尾寿,PR/ITmedia]
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tnfigtu10.jpg  昨年12月に発売されたシャープのメディアタブレット「GALAPAGOS」などが電子書籍市場をけん引している

 2010年に話題となった「電子書籍」。瞬く間に市場が立ち上がった背景には、相次いで市場に登場した電子書籍端末だけでなく、プラットフォームの整備、そしてコンテンツホルダーである出版社のコンテンツ供給が素早く行われたことが影響している。

 2010年末にメディアタブレット「GALAPAGOS」を発売したシャープは、国内電子書籍市場のキープレーヤーだ。GALAPAGOSとセットで電子書籍ストア「TSUTAYA GALAPAGOS」を立ち上げた同社だが、さらに踏み込んで考えれば、同社が日本の電子書籍フォーマットの1つとして推進してきた「XMDF(ever-eXtending Mobile Document Format)」が素早いコンテンツ展開を可能にしたという側面がある。

 本稿では、電子書籍のポータルサイト「ITmedia eBook USER」編集長の田中宏昌氏、そして出版業界から「GALAPAGOS」にもコンテンツ提供している幻冬舎編集出版本部デジタルコンテンツ室の設楽悠介室長とともに、国内の電子書籍市場がどのように立ち上がり、そして今後どのような方向に進むのか、出版社の期待はどこにあるのかを、シャープの取り組みと合わせて考える。

電子書籍という接点で“読書の楽しさ”

神尾寿氏  ジャーナリストの神尾寿氏

神尾 昨年は電子書籍が少し過熱気味と思えるほど注目されました。しかし、もともと日本では電子書籍市場は以前から存在していました。昨年が「電子書籍元年」と注目された理由は、何だったのでしょうか。

設楽 やはりiPadの登場が大きかったですね。おっしゃる通り、10年以上前から日本ではシャープがけん引する形で電子書籍市場が立ち上がっていましたが、昨年はエンドポイントデバイスとしてPCに変わるスマートフォンやタブレットが複数登場し、そこに多くの電子書籍ストアのサービスが発表されて一気に注目されたと感じています。

神尾 海外ではAmazon.comの「Kindle」が代表的ですが、電子書籍にフォーカスした端末が出てきたことも注目されるきっかけの1つでしたね。端末の登場が電子書籍市場そのものへの認知度・注目度を向上させたわけですが、「出版社の期待感」というのは、実際どのようなものがあるのでしょうか。

設楽 期待と不安が入り交じっている。これが正直なところです。出版市場が縮小する中で、今後の成長モデルをどう描くか。そこでの(電子書籍への)期待は、いままで本を読まなかった人が、電子書籍という接点で“読書の楽しさ”を感じてもらうことだと考えています。

 この期待感を裏付ける傾向も出てきています。幻冬舎ではすでに複数の電子書籍リーダー/ストア向けに電子書籍を販売していますが、そこでは“紙の本と売れ方が違ったり”します。紙ではもう売れなかったような本がちょこちょこと売れ出したりとか、そういうことがあるのです。電子書籍ならではの販売傾向から、エンドユーザーの拡大ができないか、そこに期待しているのです。

神尾 「活字離れで減ってしまった市場を回復する」という代替需要の創出と、「新たなジャンルや新たな読者層を作る」という新規市場の創出の2つがあると思います。今の出版業界で期待しているのはどちらですか。

設楽 今これだけ電子書籍が話題になっていますので、どちらかというと後者の方が期待度としては大きいですが、両方意識していかないといけませんね。

神尾 田中さんにお聞きしたいのですが、eBook USERが昨年立ち上がったわけですが、電子書籍に対するエンドユーザーの関心など、注目度の変化をどのように感じていますか。

田中 年末にシャープとソニーが電子書籍専用端末を発売したのを1つのスタートラインとすれば、そこからさらに注目度が上がりましたね。きっかけはハードウェアでしたが、最近の傾向としては、Androidタブレットなど汎用的な端末は注目度が下がっていますが、シャープのGALAPAGOSのようにハードウェアとコンテンツストアが垂直統合された端末は依然として注目度が高いという傾向があります。

神尾 ハードウェアからコンテンツへ、という流れは、電子書籍市場が黎明(れいめい)期を超えた証かもしれませんね。電子書籍市場に参加する出版社も増えましたし。

設楽 出版業界でも電子書籍市場への参入という流れは一気に加速しました。もちろん電子書籍への取り組みは各出版社が以前から続けていましたが、特に情報交換も含めて活発になったのは昨年からです。主要な出版社が参加する「電子書籍出版社協会」も立ち上がりましたし、そういう意味では情報交換がいま活発になっています。

出版社のクオリティはこれまで以上に重要だ

設楽悠介氏  幻冬舎編集出版本部デジタルコンテンツ室の設楽悠介室長

神尾 出版業界内での電子書籍ビジネスへの関心で、特に注目度が高いのはどのような部分でしょうか。

設楽 フォーマットやオーサリングへの関心度は高いですね。後はプロモーション。例えば、「シャープのXMDFでクオリティの高いものを作ればいいのか」だとか、制作した電子書籍コンテンツを「どこで売ればもうかるのか」だとか。やはり“出版社のビジネス”としてやっていくので、そういった部分へのこだわりは強いです。

神尾 電子書籍ですと端末ごとに見え方が違いますから、いままで以上に「出版社のクオリティ」をしっかり担保する必要がありますね。出版社として、紙の書籍を電子化する場合、紙の読みやすさをできる限り再現しようとするのか、それとも電子ならではの新しい表現をしようとするのか、どちらが多いのでしょうか。

設楽 現状はやはり紙のレベルを再現するという考え方が中心ですね。しかし、これからはシャープがXMDFで追求しているものをどう活用するかを考える必要が出てくるでしょう。

神尾 XMDFは日本の出版業界向けに開発されたわけですが、出版サイドから見て、その「よさ」と「課題」をどのようにとらえていますか。

設楽 XMDFは、もともと携帯電話時代から10年近く多くの出版社がいろいろな要望を出して変えてきただけあって、縦書きをはじめとする日本語表現の完成度は高いですね。次世代XMDFソリューションで掲げられているように、さらに進化する余地もあります。しかし、既存の書籍を電子化するに当たって必要な機能・要素は、ひととおりそろっていますね。

 XMDFをサポートした端末が多いのも魅力です。すでに多くの出版社がXMDFコンテンツを大量に所有していますので、この資産をどう生かすかは重要なポイントです。実際のところ、XMDFがなかったら、昨年の国内電子書籍市場の盛り上がりがあったときに何万タイトルも電子書籍が集まらなかったでしょう。その功績は大きいと思います。

神尾 GALAPAGOSへの評価はいかがでしょうか。XMDFを推進してきたシャープにとって、この端末は電子書籍市場に対する重要な戦略機となっていますが。

設楽 当然ながらXMDFの扱いに熟練していますね。細かなところ、例えばページめくりのアクションなども、その必要性の議論からしっかりと行われて実装されている印象があります。ほかにも、ピンチインピンチアウトですぐ組み変わるスピードの速さとかもいいですね。フォントについても比較的読みやすいと思います。

神尾 今回のGALAPAGOSは、スクリーンサイズが5.5型と10.8型の2種類出てますよね、コンテンツ提供サイドとしてこの2つの特性の違いをどう見ていますか?

設楽 小さい方の端末は紙でいうと新書くらいのサイズで、かつ軽いので、移動中に読みやすく、常にカバンに入れておける。活字もののコンテンツを読むには一番よいサイズなのかなと思ってます。iPhoneなどのスマートフォンでも電子書籍は提供されていますが、やはり読ませづらいなという感覚がありましたので。

 逆に大きい方の端末に関しては、コンテンツが重要ですね。雑誌のように判型が大きいものが出てくると、すごくいいんじゃないかなと思っています。雑誌を見開きで読みたいというニーズにもこの大きさなら応えられます。

神尾 タブレットも含めて電子書籍端末をみてみると、現在、5インチ、7インチ、9〜10インチという3つのゾーンができてるというのが面白いですよね。それらはすみ分けていくものなのか、それともどこかのサイズに収れんしていくのか。この辺りは注目しています。田中さんはガジェットとしてみた時のGALAPAGOSをどう評価されていますか。

田中 わたしはGALAPAGOSの5.5インチで、新書や小説を読んでいます。そういった使い方には最適な端末ですね。一方、10.8インチのGALAPAGOSは解像度がワイドなこともあり、コンテンツ側がまだこのサイズを生かし切れていない印象です。こうしたものに最適化されたコンテンツ――それは映像なども含まれるのでしょうが――が出てきたときに本領発揮となるのではないでしょうか。

神尾 なるほど。お二人の評価はGALAPAGOSの5.5インチの方が高いようですが、わたしは10.8インチにも期待しています。コンテンツ次第で面白い電子書籍市場を作るのではないか、と。

 そのポイントは「可読性」です。特に、レイアウト重視の雑誌やマンガでは、拡大縮小はナンセンスです。大きなスクリーンで精緻(せいち)に表示し、可読性をしっかり確保する。そういった用途で考えると、10.8インチはいまだ存在しない電子書籍市場にアプローチできるのではないかと見ています。この大きさ向きのコンテンツを充実させつつ、ヴェールビューが搭載されることが、今後のGALAPAGOS 10.8インチの可能性を引き出す鍵になるのではないでしょうか。

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提供:シャープ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia eBook USER 編集部/掲載内容有効期限:2011年4月19日