電子書籍に期待される「コンテンツ面での支援」

東北地方太平洋沖地震の影響に伴う、3月14日現在の電子書籍関連の動きについてまとめた。

» 2011年03月14日 18時25分 公開
[西尾泰三,ITmedia]

 東北地方太平洋沖地震の影響に伴う、3月14日現在の電子書籍関連の動きについてまとめた。

App Storeに「災害対策アプリケーション」のコーナーを新設

 アップルは3月14日、App Storeに「災害対策アプリケーション」のコーナーを新設し、Twitter、FacebookといったSNS系アプリのほか、i緊急装置、Viver、災害用伝言板など、災害時に役立つアプリをまとめている。これらの中には無料化あるいは値下げを行っているものも少なくないので、iPhone/iPadユーザーは必要に応じて入手したい。

 電子書籍関連では、病気や怪我に対する応急処置の方法などを示したiPhoneアプリ「家庭の医学」が無料で提供されている。ファイルサイズの問題で、ダウンロードにはWi-Fi環境が必要。3G回線しか利用できないような状況下でダウンロードできるのは「家庭医学館Lite 応急手当編」となっている。

 このほか、産経デジタルは、iPhone向け「産経新聞」とiPad向け「産経新聞HD」に夕刊紙面(大阪本社発行最終版)を配信することを決定した。夕刊では、地震関連情報と、当日未明から昼にかけてのニュースをまとめて閲覧できる。

コンテンツ面での支援はこれから

 電子書籍関連は、上述した「家庭の医学」が無料化されたほかに、特筆すべき動きは現時点で確認できない。

 「TSUTAYA GALAPAGOS」「Reader STORE」「2Dfacto」「BookLive!」「LISMO Book Store」「BOOK☆WALKER」「eBookJapan」「パピレス」など比較的大型の電子書籍ストアは、いずれも通常どおりサービスは稼働しているが、東北地方太平洋沖地震に関する特別な動きは見られない。パピレスで「大震災生存の達人・改訂版 あなたは生き残れるのか?」が取り上げられ、試し読みできる程度だ。

 こうした災害時に電子書籍がどんな役割を果たせるのかは未知数だ。漫画家の赤松健氏は、以下のように災害時における紙の有用性をTwitter上で説いている

災害時、マガジンなどの紙のマンガ雑誌が、電子ブックリーダより優れている点を追加。燃料やクッションにも使える。あと、これは冗談ではなく、トイレの時に役に立ちます。iPadでは無理。


 一方、出版のプロである図書印刷がTwitter上でツイートした内容は、状況によっては電子書籍にも有用性があるというケースを示している。

こういうとき、紙の本は強い。電気がなくても昼間なら本が読める。逆に時限停電、計画停電の地域では、電子書籍が強い。充電していれば、交通が麻痺していても本が読める。本を読むことで少しでも勇気をもらったり、気持ちが和らいだりできればと。自分は自分の仕事をします。がんばりましょう。


 絶え間なく飛び込んでくる東北地方太平洋沖地震関連の最新ニュースは有用な情報だが、それは同時に、絶え間ないストレスにさらされているということでもある。東京FMでは被災地に向けて絵本の読み聞かせを配信予定だというが、こうしたコンテンツ面での支援というのはこれから始まるのだといってもよいかもしれない。有用と思われる電子書籍については引き続き取り上げていく予定だ。

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