連載
» 2011年03月07日 10時00分 UPDATE

eBook Forecast:2月後半の注目すべき電子書籍市場動向 (1/2)

「電子書籍ってどこを押さえておけばいいの?」――忙しくて電子書籍市場の最新動向をチェックできない方のためにお届けするまとめ記事「eBook Forecast」。今回は、いまだくすぶり続ける課金周りのお話やEPUB 3.0、そして国内で始まりつつある注目のトピックスを中心にお届けします。

[前島梓,ITmedia]

くすぶる課金問題、EPUB 3.0はパブリックドラフトが登場

 電子書籍市場における2月後半の大きなニュース、まずは海外の動向から紹介しましょう。

 1月下旬からくすぶり続けている電子書籍コンテンツの課金については、2月後半も今なお予断を許さぬ状況が続いています。前回の「2月前半の注目すべき電子書籍市場動向」でお知らせしたように、Appleが始めた新たな定期購読サービスについては幾つかの出版社などからネガティブな反応が寄せられています。詳しくは前回の記事や「Appleの定期購読ルールに高まるパブリッシャーの不満」を参照いただければと思います。

 Appleが始めた新たな定期購読サービスは、出版社にとっては一種の踏み絵です。新規の顧客を獲得できるかもしれませんが、顧客の個人情報はオプトイン方式で出版社に渡るようになっているため、あまり有用ではありません。しかも、このサービスを利用する見返りに30%もの手数料をAppleに支払う必要があり、App Store外でも購読販売を行う場合には、App Storeでの販売価格が最も有利になるようにする必要があります。

 音楽業界がたどってきたように、自分たちのデジタル戦略をAppleに委ねてしまいかねない危険性を出版社は憂慮しています。もちろん、Appleが悪いというわけではなく、エンドユーザーからすれば購買が楽になるという点において歓迎すべきところも多いのですが、それに出版社が乗るかどうかは別の話です。特定のプラットフォームに強く依存してしまう戦略を採りたくないのは当然の判断ですし、そうした間隙(かんげき)を突いてGoogleが発表したコンテンツ販売・決済サービス「Google One Pass」に魅力を感じるのも当然です。

 こうしたAppleの動きが米独禁法に触れるのではないかとして、米司法省と米連邦取引委員会は内々に調査を開始したと報じているメディアもあるほか(筆者は独禁法に引っかかる可能性は低いのではないかと考えます)、Financial Times紙などを手掛ける英PearsonグループのCEOは、Appleを痛烈に批判しており、「全面対決も辞さない」と意気揚々です。この事態はまだしばらく慎重に見守る必要があります。

EPUB 3.0のパブリックドラフト公開は、外資の国内参入ののろし?

 一方、ファイルフォーマットの領域では、電子書籍の事実上の世界標準フォーマットである「EPUB」の次世代版「EPUB 3.0」について、米国の電子書籍標準化団体の1つであるInternational Digital Publishing Forum(IDPF)からパブリックドラフト版が発表されました。

 HTML5やCSS3といった最新のWeb技術で構成され、2011年5月にも最終の仕様が発表される予定のEPUB 3.0。その目玉は縦書き/ルビ/禁則/傍点など日本語の組版仕様をサポートしている点です。事実上の世界標準フォーマットでありながら、これらの組版仕様がサポートされていなかったために、日本の出版社はコンテンツを世界にうまく供給できなかったという側面があります(もちろん単にフォーマットだけの問題ではありませんが)。それが、EPUB 3.0でサポートされるわけですから、出版社もEPUB 3.0の登場に期待を寄せています。逆に言えば、Googleの電子ブックストアサービス「Google eBookstore」など外資勢もこの辺りのタイミングで国内参入が予想されるわけで、本当の競争が始まろうとしています。

 アドビが2月上旬に開催した「Adobe Digital Publishingフォーラム2011」では、EPUB 3.0の規格策定にかかわる数少ない日本人である村田真氏(国際大学フェロー)がEPUB 3.0について講演を行っており、「国際的な普及のためには北米のIT企業のフォーラム標準と受け止められたくない。ISOなども認める国際規格化を目指したい」と力強く発言しています。EPUB 3.0に関する話題はこれから数多く登場してくるかと思いますが、村田氏の動きをチェックしておくことをお勧めします。なお、村田氏のTwitterアカウントはこちらです。

       1|2 次のページへ

Copyright© 2016 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ITmedia Book Club会員登録がまだの方はこちら

電子書籍/紙を問わず、読書を愛する皆さまに向け、特別な情報提供、書籍の献本、著者や業界関係者との懇親会、執筆活動を検討されている方へのサポートなどを順次提供し、皆さまの読書を強力にバックアップします。

コンテンツパートナー

新刊JP
ラノコミ.com
hon.jp
新文化通信社
Good E-Reader Blog
ぶくまる