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» 2011年02月23日 10時31分 UPDATE

大人のためのbiblio Leaf SP02講座:biblio Leaf SP02――それは、本好きに対する挑戦?

KDDIが2010年12月末に発表した電子書籍専用端末「biblio Leaf SP02」。ときには編集者として、ときにはミステリー・SF好きとして紙の文化にどっぷりと漬かってきたミドル層の筆者が、実際に触れて確かめてみた。

[池田圭一,ITmedia]
biblio Leaf SP02

 KDDIが2010年12月末に発表した電子書籍専用端末「biblio Leaf SP02」(以下、ビブリオリーフ)。ソニー、KDDI、凸版印刷、朝日新聞社の4社が連合して立ち上げた、電子書籍配信事業会社「ブックリスタ」に関係するキャリア発の電子書籍専用端末だ。それぞれの分野で蓄積したノウハウをうまく生かしてくれているとよいのだが……と、ミステリー・SF好きの筆者は期待しながら、eBook USER編集部から送られてきた同端末を試用することにした。以下では、その様子をお届けする。


「本を愛する人に最適な……」とあるが

 biblio Leaf ブランドサイトに行くと、「ビブリオリーフが本を愛する人に最適な3つの理由」とあり、

  1. 視認性の高い電子ペーパーを採用すること
  2. auの3G携帯通信網または無線LAN網を利用してどこでも・いつでも本が購入できること
  3. 2Gバイトの内蔵メモリに3000冊の本を入れて持ち歩けること、

が挙げられている。紙の書籍の愛好者にも言いたいことはあるが、なるほどこれらはもっともな理由だ、などと思いながら実機に触ってみた。

 ビブリオリーフの本体サイズは新書版といったところだろうか、実際のサイズは約129(幅)×198(奥行き)×9.8(厚さ)ミリで、付属する合皮製の専用カバーを含めるとA5版のハードカバー単行本ぐらいの手軽さだ。専用カバーを装着したままでも使え、全体的に上品なデザインながら紙の本より少々乱暴に扱えるのがいい。

tnfigbib2.jpgtnfigbib3.jpg biblio Leaf SP02には、合皮製の手帳風専用カバーが付属(写真=左)/本体の大きさは、ほぼ新書版サイズ。付属カバーを含めるとA5版の単行本程度だ(写真=右)

 電源ボタンが本体左上、ページめくりなどの操作ボタンが電子ペーパーの下に並び、その右下にソーラーパネル、右側面にはフォントサイズの変更ボタン、下部側面に充電および通信用のmicroUSB端子、microSDスロット、ヘッドフォン端子がある。

tnfigbib4.jpgtnfigbib5.jpgtnfigbib6.jpgtnfigbib7.jpg (画面左から)電源ボタンはスリープモードからの復帰にも使うのだが、小さく操作しにくいのが残念/操作ボタンとソーラーパネル。ページボタンの刻印が[∧][∨]なのがやや不自然な印象を受ける/フォントサイズは6段階で調整可能。トグル式にするならボタンは1つでもよかった?/本体底面にはヘッドフォン端子、microSDスロット、充電・通信用のmicroUSB端子を装備

 読書スタイルとしては、補助充電用のソーラーパネル横にある空きスペースを左手あるいは右手の親指で押さえて持ち、そのまま親指でページめくりボタンを操作するといった感じとなる。読書中のページめくり操作は基本的に[∧][∨]ボタンで行うため、ハンドリングは固定される。

tnfigbib8.jpgtnfigbib9.jpg 直射日光下でも電子ペーパーの表示は見やすくていい。ソーラーパネルを覆わずにボタンを操作しようと思えば持ち方は自然とこの形になるため、読書スタイルが限定されてしまう(写真=左)/表示スペースは文庫本のそれと同等。書体が明りょうなため暗い照明でも十分に読める(写真=右)

 電子ペーパーのディスプレイサイズは6型、これは文庫本の印刷面とほぼ同じサイズだ。表示解像度は600×800ドットだが、電子ペーパーの特性として文字輪郭が滑らかなため、表示は紙に黒インクで印刷したものと変わりなく見える。むしろ、印刷の裏写りがない分、紙面より快適に感じるほどだ。バッテリーの駆動時間も液晶を採用している電子書籍端末と比べればはるかに長く、この辺りはさすが電子ペーパーである。

 視認性も良好で、直射日光の下でも、室内のそう明るくない照明の下でも十分に文字が読める。なお、画面表示は縦位置のみ。紙の本でも紙を縦方向に使うのが一般的なのだから不思議ではないが、自由度が高い電子書籍なのにもったいないと感じるところはある。

読書好きは、ささいな条件にこだわる!

 ビブリオリーフが読み込める電子書籍フォーマットは、XMDF、PDF、EPUBの3種類。microSDカードを利用すれば自分でスキャンしたPDFファイルなども表示できる。とはいうものの、内蔵する3G(WIN Rev.A)通信網あるいはWi-Fi(IEEE802.11b/n/g)経由で接続できるのは、XMDF形式の電子書籍を販売する「LISMO Book Store」のみ。PDFもイメージ形式だけの対応なので、実際にはLISMO Book Storeで購入した電子書籍(XMDF)の閲覧が中心となるだろう。

 では、LISMO Book Storeの品ぞろえは? というと、本好きからすると少々物足りないというのが正直なところだ。新作であればともかく、例えば筆者が大好きな往年の海外ミステリー、海外SFがまったくといってよいほどそろっていないのが悲しい。東京創元社のラブクラフトとコナンドイル、そしてレンズマンの一部など偏りがあるな、という印象を受ける。

 シャープのGALAPAGOSとTSUTAYA GALAPAGOS、ソニーのReaderとReader Storeのように、日本国内でハードウェアと電子書籍ストアを展開しているプレイヤーは、いずれもコンテンツの絶対数が不足気味で、電子書籍市場の覇者はまだまだ混とんとした状態にある。2010年12月に開かれたビブリオリーフの発表会では、検討中とされたLISMO Book Store内での定期購読サービス、コンテンツのマルチユース・マルチネットワーク対応などをはじめ、キャリアであるKDDIの立場を生かした、独自サービスの登場にも期待したいところである。ここは、同社の次の一手に期待したい

Readerと比較 ブックリスタ陣営のキャリア発電子書籍専用端末がbiblio Leaf SP02とすれば、ベンダー発はソニーの「Reader」となる。ということでReader(PRS-350)と比較してみた。電子ペーパーは一世代前のもののようだが、階調を出せない分biblio Leaf SP02の方がコントラストは高い

 では、肝心の読みやすさはどうだろうか? 今回は本体にプリインストールされている青空文庫100コンテンツ(XMDF)を試すにとどまったのだが、XMDF化されているといっても、元のテキストデータをフォーマット変換しただけのもので、一部のコンテンツはルビなども反映されず、XMDFが持つ日本語表現の強みが実感できるというほどのものではなかった。LISMO Book Storeで販売されるコンテンツではそうしたことはないだろうが、プリインストールされた青空文庫のコンテンツだから仕方ないと考えることもできるが、名作ぞろいの青空文庫だからこそ、XMDFの特徴を生かした読み方ができればなおよいと感じる。

 ビブリオリーフは明朝体(リュウミン)と丸ゴシック体(新ゴR)の2書体を内蔵し、縦書き/横書き表示が可能。コンテンツ側で特に指定がなければ切り替えて使える。確かに明朝体・縦書きで読みなれた書籍を、ゴシック体・横書きで読めばイメージも変わって……ということもある。しかし、プリインストールされた青空文庫ではコンテンツごとに好き勝手に指定できるわけでもなく操作も煩雑だ。

tnfigbib11.jpgtnfigbib12.jpgtnfigbib13.jpg
tnfigbib14.jpgtnfigbib15.jpgtnfigbib16.jpg ここで書体変更を疑似体験してみよう。読書中にメニューボタンを押し、設定から文字設定を選択、さらに文字フォント設定、ゴシック体を選択すると反映される

 フォントサイズは6段階に変更できるものの、文字詰め、行間などは変えられない。筆者にとって、あるいは多くの本好きにとって、本の読みやすさを左右するのは、フォントサイズのみならず、文字の書体や文字詰めの微妙な空気感、そして行間スペースである。「行間を読む」という素敵な日本語もあるじゃないか! “紙”の文庫本では、同じ作品であっても出版社が変わると書体も変わり、印象を大きく左右することがある。ルビの打ち方、改行の位置、余白の挿入など、ベテランの編集者が介在したかどうかでもずいぶんと違うものだ。

tnfigbib17.jpgtnfigbib18.jpgtnfigbib19.jpg
tnfigbib20.jpgtnfigbib21.jpgtnfigbib22.jpg さすがに6型のディスプレイで最小文字だと読めない。黒白反転表示機能があるとよかった

 わがままな意見を言うならば、コンテンツごとに表示倍率や書体、行間などを調整できるようにし、再生(読書)時に個別に反映できればよいなと感じる。

設計者は本を愛しているか?

 日本のユーザーの品質に対する要求が世界的にも高いことはよくいわれるし、筆者が電子書籍端末に過剰な期待をしているのかもしれないが、どうも厳しいレビューになってしまっているように思う。以下は、改善につながることを願って幾つか気になる点を挙げておこう。

 まずハードウェアについて。電源ボタンはやや小さく、操作ボタンや拡大縮小ボタンの位置も考慮されているとは言い難い。補助電源としてのソーラーパネルも、ソーラー充電のみで満充電状態にはできないというからその必要性に疑問は残る。

 また、本体背面にあるスピーカーやヘッドホンコネクタで利用できるサウンド機能もオーディオブック用の再生機能であり、現時点ではあまり活躍する機会がない。日本語2書体を内蔵するのも、ユーザー向けというよりは、LISMO Book Storeで販売されるXMDFコンテンツ向けのものなのだろう。

 とはいえ、KindleやReader Touch Editionが日本国内で発売されていない現時点では、3G(WIN Rev.A)とWi-Fi(IEEE802.11b/n/g)という無線機能を両方備えたE Ink採用モデルはビブリオリーフだけであり、ライバル機にはないアドバンテージを持っていることは揺るぎようのない事実である。

tnfigbib23.jpgtnfigbib24.jpg 本体デザインを再確認、センス面で、どうしてもあか抜けない感じを受けてしまう(写真=左)/裏面カバーを開けた状態。製造は台湾に本社を置くHon Hai Precision Industry(鴻海精密工業)、同社はiPadやKindleの製造元としても知られる(写真=右)

 ソフトウェア面にも改善の余地がある。例えば、電子ペーパー表面はタッチセンサーになっているが、反応するのは専用のEMR(電磁誘導方式)スライタスのみ(指は不可)で、操作体系も本体ボタンとスライタスの操作が混在している点。設定メニューも洗練されておらず、設定を変更する度に最初から手繰らないと次の設定が行えない。選択位置を示すカーソルも認識しにくく、その表示もスピード感に欠けるところがある。

 こうした部分の作り込みに時間を掛ける見返りは十分にあったはずだが、電子書籍市場の高まりを受けて市場投入を急いだ結果といえるのかもしれない。成熟度という点ではまだまだ改善の余地を残している本機だが、2011年3月末までLISMO Book Storeのコンテンツが半額で買えるという、ほかの電子書籍ストアには見られないキャンペーンを展開しており、同社の意気込みは十分に感じられる。


 2010年末から活発化した国内産の電子書籍リーダー端末。ビブリオリーフは、いわゆる2年しばりの「誰でも割シングル(特定機器)適用」なら525円/月で利用できる。本体価格は、新規契約なら1万5000円前後、機種変更なら3万5000円前後というのが一般的だが、ショップによっては「新規+誰でも割シングル加入」の条件で、0円で端末を販売していることもあるという。2年使って端末代金+通信料が1万2600円なら割り切って使うこともできるし、ここで挙げた幾つかの問題はファームウェアの更新で改善される可能性がある。ぜひ、一貫した設計思想でソフトウェア面だけでも改善を進めるべきだろう。

 とはいえ、ビブリオリーフに触れて確信できたことが1つある。それは、本の世界に没頭さえできれば端末の使いにくさはさまつな問題であるということだ。著者、編集者は、電子書籍端末に最適化された新しいコンテンツを創出すべきであり、そちらにエネルギーを割くべきなのだ。

筆者紹介 池田圭一

1963年生まれ。IT系雑誌・Web媒体への企画および執筆、天文・生物など科学分野の取材記事などを手がけるフリーランスライター。デジイチ散歩で空・月・猫を撮る日常。理科好き大人向け雑誌「RikaTan」編集委員。主な著書に『失敗の科学』、『光る生き物』(技術評論社)、『〜科学を遊ぶ達人が選んだ〜科学実験キット&グッズ大研究』(東京書籍)、『やっぱり安心水道水―正しい水のお話』(水道産業新聞社)などがある。


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