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» 2011年02月16日 22時30分 UPDATE

大人の社会科見学:TSUTAYAみなとみらい店で「BOOK ON DEMAND」を試してみた

裁断機とスキャナーを1冊当たり300円で利用できるサービスが、TSUTAYA 横浜みなとみらい店で試験的に提供が開始された。早速足を運んで試してみた。

[西尾泰三,ITmedia]

 「TSUTAYAが自炊サービスに参入」――カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)からプレスリリースなどは出ていないが、同社は、神奈川県横浜市にある「TSUTAYA 横浜みなとみらい店」で、店頭に設置した裁断機とスキャナーを1冊当たり300円で利用できるサービスを2月10日から開始した。枚方市駅前店ゲーム館では2010年10月から同サービスが提供されていたが、関東圏でのサービスインはこれが初となる。

 さっそくTSUTAYA 横浜みなとみらい店に足を運んでみると、確かに立て看板でサービスが告知されていた。残念ながらCCCから撮影許可が下りなかったため、文字でのみの説明となるが、どのようなサービスなのかを紹介しよう。

TSUTAYAで自炊

 関東圏ではTSUTAYA 横浜みなとみらい店でのみのサービス提供となるが、同店舗が選ばれた理由は店員に尋ねてもはっきりとした回答は得られなかった。ただ、CCCは2010年9月に新古書チェーン店「ecobooks」を立ち上げ、中古本事業への進出を発表しており、その1号店がTSUTAYA 横浜みなとみらい店であることも少なからず関係しているのかもしれない。つまり、実験的な取り組みを行う役割が同店舗には与えられているのではないかということだ。

 今回、TSUTAYA 横浜みなとみらい店の1階で、検証に使うための「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」(もしドラ)を購入し、レジにてこれをスキャンしたい旨を告げると、2階にその設備が用意されていると案内された。

 エスカレーターで2階に上がると、PCとスキャナーが置かれているスペースがすぐに目に飛び込んでくる。そこには「BOOK ON DEMAND」という同サービスを紹介するPOPが張られ、スタンドアローンのノートPC(LENOVO G565)とScanSnap S1500が置かれているだけのシンプルなスペースが用意されていた。

 本の裁断は、レジ奥に置かれた裁断機で行える。店員に依頼すれば無料で裁断してもらえるが、利用者が自分で裁断を行うことはできない。また、裁断済みの本を持ち込んでスキャナーだけ利用することもできる。この場合も料金は300円だ。

 スキャンできるのはA4サイズ以下で、ただし書きには文庫やコミック、ハードカバーやペーパーバックはOKだが、写真集などの大型本、雑誌は受け付けられないとある。また、表紙カバーの裁断は行われない。

 基本的に裁断以後の作業は利用者に委ねられており、店員が横でアドバイスしてくれるわけでもない。必要であれば、自分でスキャン設定を変えることもできた。簡単なマニュアルが用意されており、分からないことがあれば店員に尋ねれば丁寧に教えてくれるが、スキャン開始のボタンを押すのは利用者であり、店員がそれを代行することはなかった。

 ページ数にもよるが、基本的には十数分あればスキャンは完了する。スキャンされたデータを持ち帰るためには、USBメモリまたはSDメモリーカードを用意しておく必要がある。LENOVO G565には5in1マルチカードリーダーが搭載されているので、これ以外の記録媒体を利用することも実際には可能なはずだが、ただし書きには「SDメモリーカード・USBメモリなど」と表記されているだけだった。ちなみにこれらは店頭でも販売されている。

 また、裁断済みの書籍については、「裁断済みの本はお売り頂けません」と注意書きにあるが、持ち帰ることもできるし、処分を依頼することもできる。処分には特別なコストは発生しないという説明があった。

 今回残念だったのは、うまく裁断されていない個所があり、スキャナーで取り込む際に詰まってページが折れてしまったことだ。しかもそれがカラーのイラストページだったものだから悲しさはひとしおだったのだが、そうした事故についても特に保証はなかった。あくまで裁断機とスキャナーが利用できるサービスであると考えておくとよいだろう。

tnfigccc1.jpgtnfigccc2.jpg 今回PDF化した「もしドラ」。裁断されたものをよく確認しなかったこともあって、裁断漏れを見逃してしまい、スキャン時に詰まって折れ目がついてしまった。そのほかは特に問題なかった

著作権法的には?

 こうしたサービスが登場するといつも話題になるのが、著作権法的に問題はないのかという点だろう。

 著作権法第30条1項では、著作物の私的使用を目的とする場合は、その使用する者が複製することができると定められている。また、それに続く30条1項1号では、「公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器を用いて複製する場合」は除くとある。いわゆるスキャン代行業者が提供しているサービスは、「使用する者」ではない業者が主体となっており、かつ1号の自動複製機器に該当するため、業者には可罰的違法性があり、それを依頼した者も違法(ただし不可罰)であるというのが一般的な見解となっている。

 では、今回TSUTAYA 横浜みなとみらい店で提供が開始されたサービスはどうか。CCC広報の説明によると、複製の主体は利用者である点、また、著作権法の附則5条の2で「当分の間、30条1項1号の『自動複製機器』には、『文書又は図画の複製に供するもの』は含まないものとする」と規定されており、書籍のスキャンはこれに該当するため複製権の侵害には当たらず、問題はないという見解だ。


 以上を踏まえると、法的懸念は少なく、裁断機とスキャナーが利用できる自炊サービスをTSUTAYAが試験的に導入したのだといえる。まだ開始されて日がさほどたっていないこともあってか、店員によって説明が異なる部分などもあったが、これらは時間が解決するたぐいの問題だろう。

 なお、今回の検証に掛かったお金は、「もしドラ」が1680円、サービス利用料が300円の合計1980円。ecobooksで中古本を購入すれば、もう少しコストは下げられただろうが、掛かった手間と仕上がりを考えれば、例えばiPhone/iPad向けの電子書籍アプリとして提供されているもの(800円)を購入した方がよかったと感じる部分もある。ただ、DRMなどで縛られていないPDFが得られたことには一定の意味があるのかもしれない。

 スキャナーと裁断機を1冊当たり300円で利用できることに魅力を感じる方であればともかく、いわゆる自炊に慣れている方であれば、同サービスを利用する積極的な理由は見当たらない。強いて挙げれば、スキャン代行業者への法的懸念や納期の長さがネックだと感じていて、かつスキャナーや裁断機を自分で所有していないライトユーザーが利用するサービスといえるが、TSUTAYAが試験的ながらこうしたサービスを関東圏でも開始したことは興味深い。

 ちなみに、同店舗でこのサービスが始まって7日目となるが、特に告知していないこともあってか、これまでの利用者は記者を含めて3人だという。

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